学資保険の特長と注意点は何ですか?
掲載日:2017年1月20日
学資保険には「効率よく教育資金の準備ができる」という特長があります。一方、注意点としては、「イレギュラーな事態への対応が難しい」点などが考えられます。
学資保険に限らず何事も特長と注意点は表裏一体といえます。
そこで今回は、学資保険の特長と注意点を整理してみたいと思います。
「貯蓄性」「万一への対応」「維持管理のしやすさ」を兼ね備えた「効率のよさ」が学資保険の魅力
学資保険は、「貯蓄性」「万一への対応」「維持管理のしやすさ」、これらを一つのプランにまとめたところが最大の魅力ではないでしょうか。
- 貯蓄性
- 学資保険の貯蓄性をはかる物差しの一つに「返戻率」があります。
返戻率とは、支払った保険料総額に対し、受け取れる「祝い金」や「満期金(満期保険金)」の総額がどれだけ増えているか(あるいは減っているか)を表す割合です。
保険会社ごとの違いや、お子さまの年齢や契約者の方の年齢にもよりますが、現在の学資保険の返戻率は102%~108%程度のものが主流のようです。条件によっては110%を超える場合もあるようです。金利に換算すると年利で約0.2%~1%相当の水準となります。
身近な貯蓄方法としては金融機関での「預貯金」がありますが、今の日本の金利情勢では、期間が18年程度では学資保険ほどお金を増やすことは難しいといえます。
また、最近では個人でも気軽に投資ができるようになり、小口の資産形成商品も登場してきています。これらの金融商品のなかには、学資保険以上の利回りを確保できる可能性があるものもありますが、それらの多くは、社会や経済の動向や為替リスク等によっては元本割れのリスクがあります。
学資保険の場合は、手元にまとまった資金がなくてもそれなりの返戻率が確保でき、投資と比較すると、特別な専門知識がなくても利用できる貯蓄手法といえます。
また、学資保険は生命保険の一種で、支払った保険料は「生命保険料控除」の対象となります。銀行の定期預金では生命保険料控除は受けられませんので、学資保険の特長の一つとなります。 - 万一への対応
- 金融機関での預貯金や個人投資の場合、家計収入の柱である方に万一のことがあった場合には、その後の積み立てが難しくなり、当初予定していた教育資金の貯蓄が難しくなることが予想されます。
一方で学資保険の多くのプランには、「保険料の払込免除特則」が付加されています。
この保険料の払込免除特則とは、契約者の方が保険期間中に「死亡または所定の高度障害状態」に該当した場合、その後の保険料が免除された上、予定通りの祝い金や満期金(満期保険金)が受け取れるというものです。
契約者の方に万一のことがあり、収入が途絶えた場合でも、この特則により祝い金や満期金(満期保険金)は予定通り確保できることは、大きな安心といえます。 - 維持管理のしやすさ
- 学資保険は、加入した後、月々の保険料さえ滞らせなければ、特別な対応は不要です。
また、加入時に定められた祝い金や満期金(満期保険金)の受取時期は、多くの場合、一般的な進学手続きのタイミングに応じた設定になっていますので、保険会社から送付されてくる「給付案内」による必要書類を提出すれば、指定口座に振り込まれます。
この管理の手軽さが、学資保険の最大の特長かもしれません。
「イレギュラーな事態への対応が難しい」という弱点
学資保険はもともと進学する際の費用への備えを目的とした保険です。お子さまが小学校や中学校、高校、大学へと進学するタイミングは、お子さまの誕生と同時にある程度予想することが可能なため、タイミングよく進学費用に活用できるように、祝い金や満期金(満期保険金)の受取時期が設定されています。
反面、急な出費などイレギュラーな事態が起きた場合、預貯金ならいつ引き出しても元本割れすることはありませんが、学資保険は途中解約した場合、タイミングによっては支払った保険料より少ない解約返戻金しか受け取れないことがあります。
また、マイナスにはならなくても、申込時に予定していたほどの返戻率が確保できない場合がほとんどです。
こうした解約以外に、急な出費に対応できるように「契約者貸付」が利用できる場合もありますが、利用できる金額は解約返戻金の所定の範囲内までという制限があることや、貸付を返済するまでのあいだは「利息」が発生するなどの注意点があります。
そのため、預貯金と比較すると、急な出費などイレギュラーな事態への対応には向いていないといえます。
- 長期的に資金が拘束される
- もう一つの注意点としては、長期的に資金が拘束される点です。例えば、保険期間18年の契約の場合、18年間という長期にわたって資金が拘束されてしまいます。
- 保険会社が経営破たんした時
- 金融機関の預貯金の場合、預けていた金融機関が経営破たんした場合でも、「預金保険機構」により一般預金等は1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1,000万円までの保護が受けられます。
一方で、学資保険を契約している保険会社が経営破たんをした場合には、「生命保険契約者保護機構」が、破たんした保険会社に代わり、「保険金」や「給付金」の支払いをしてくれますが、「責任準備金の9割まで」という補償限度が設定されています。
経営破たんというイレギュラーな事態が発生した際のリスクは、預金保険制度によって預貯金が1,000万円までであれば、金融機関の方が低いといえます。
学資保険ですべてが対応できるわけではありません
このように、学資保険は効率よく教育費を準備できる保険商品ですが、学資保険だけですべての教育費の準備やリスクへの対応ができるわけではありません。
必ず、学資保険以外の方法での貯蓄や、生命保険への加入などを並行して検討するようにしてください。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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