親の加入している医療保険を無駄にしないために
離れて暮らす一人暮らしの親が突然倒れて、入院することに・・・
1ヵ月以上の入院となると、月末ごとに医療費の請求が来ます。
手術をともなうものであれば、まとまったお金が必要になります。
そんなとき、親が医療保険加入していたら子どもとしても助かりますね。
ただ、子どもが医療保険の存在を知らなかったり、親も忘れてしまっていたりなんてことがあると、せっかくの保険が無駄になってしまいますね。
親の金融資産や加入している保険を全く把握していない
親の預貯金はどこの銀行なのか?銀行通帳やキャッシュカードは家のどこにあるのか?
保険に加入しているのか?全く把握していないという子どもは少なくありません。
親に何かがあったとき、なにかと必要な現金。
子どもが生活に余裕がない場合は、親の金融資産や保険を使いたいものですし、親も子どもに負担をかけたくないでしょう。
ただ、年老いた親が急に倒れてしまったとき、子どもが動くしかありません。
親のお金のことを何もわかっていなかった、ということになると一時的にせよ子どもがまとまったお金を負担することになります。
キーパーソンを決めておく
福祉の世界では、親に何かがあったときに動いてくれる子どものことを「キーパーソン」と呼んでいます。
このキーパーソンを決めておきましょう。
子どもが複数いる場合は、住まいが近い、コミュ二ケーションが良好である等の条件が整った方がなるのが好ましいです。
お金のことは、親子でもなかなか話しづらいものです。
親子のコミュニケーションがうまくいっていないと、親はこの子には絶対お金のことを話したくない、と思っていることが少なくなく、親の入院を機にお金のことでさらに親子の関係がこじれるのは、避けたいところです。
キーパーソンを誰がやるか決めておくこと、日ごろから親とのコミュニケーションを良好にしておくことはとても大事なことです。
お金のことを親子で話してみましょう
キーパーソンとして動く子どもは、日ごろのコミュニケーションの中で、すぐに引き出せる預貯金はどこにどれくらいあるのか、加入している保険はどのようなものなのかを聞いておきましょう。
詳しく根ほり葉ほり聞くことに親も抵抗するかもしれませんし、親も加入している保険等を忘れていることもあるでしょう。
大事な書類のしまってある場所だけでも聞いておきましょう。
なぜ必要なのか?ということも合わせてお話しすることは、もっとも重要です。親がかたくなで教えてもらえないときは、無理強いはしません。
良好なコミュニケーションの維持は、一番優先しなければなりません。エンディングノートの活用も一つの方法です。
医療保険の請求
親が入院した際、親が医療保険に加入していたら、経済的に助かります。
医療保険の給付金は、本人が保険会社に請求をしなければ、現金が手元に来ません。
ただ入院してしまうと本人は動けませんし、長期入院の場合は、入院中でも請求して給付金を受けたいものです。
そんなときは、キーパーソンが手続きをすることになります。
まずは、親が加入している医療保険に「指定代理請求特約」が付いているかを確認しましょう。
この特約が付いていないときは、子どもが本人の代わりに請求することはできません。
この特約は、いつでも付けられますので、早めに手続きをしておきましょう。
これも本人が保険会社に連絡をとらないといけませんので、親が元気なうちに手続きを済ませましょう。
いざというときに使えなかったら、せっかく保険料を支払って加入していた医療保険が無駄になってしまいますね。
キーパーソンを決める、お金のことを親と話す、親子のコミュニケーションを良好にする、保険に指定代理請求特約を付ける、これらのことは、親が元気なときにできることです。
親の加入している医療保険を無駄にしないためにも、早速行動に移してみてはいかがでしょうか?
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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掲載日:2020年2月14日
親の入院費用はいくらかかるのか
実際に高齢となった親が入院する場合、どのくらいの費用がかかるのかは、誰でも気になりますし、事前にどのくらいの費用がかかるのかを知っておくと、もしものときに備えることができます。
まずは、65歳以上の方がどのような傷病で入院されているのかをみてみましょう。
図 65歳以上の方の入院患者数が多い主な傷病
資料:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査」をもとに作成
上図をみると、入院患者数の多い順に「脳血管疾患」「悪性新生物」「骨折」となっています。
では、上図の傷病に対して、65歳以上の方の平均在院日数や入院時の自己負担費用はどのくらいかかるのでしょうか。
表 65歳以上の方の平均在院日数と入院時の自己負担費用の目安
65歳以上の平均在院日数…(A) | 60歳代の直近の入院時の1日あたりの自己負担費用(※)…(B) | 入院時の 自己負担費用の目安 (A)×(B) |
|
---|---|---|---|
脳血管疾患 | 86.7日 | 約21,000円 | 約1,820,700円 |
悪性新生物 | 18.6日 | 約390,600円 | |
骨折 | 45.6日 | 約957,600円 | |
統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害 | 1210.6日 | 約25,422,600円 | |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 22.2日 | 約466,200円 | |
アルツハイマー病 | 254.9日 | 約5,352,900円 |
※治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や、衣類、日用品などを含みます。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額です。
資料:厚生労働省「平成29年(2017) 患者調査の概況」、(公財)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」をもとに作成
表をみると、平均在院日数が長い傷病は「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」「アルツハイマー病」「脳血管疾患」と、アルツハイマー病の平均在院日数が長いということが分かります。
次に、60歳以上の方の入院時の自己負担費用の目安をみると、平均在院日数の短い「悪性新生物」でも約390,600円かかることになります。
傷病によっては在院日数が長くなるため、自己負担費用も増え、公的医療保険ではカバーできないかもしれません。
親の入院によってかかる費用を考え、親が健康なうちに、現在加入している医療保険がいざというときに役立つ保障になっているか、新規での加入が必要であるか、きちんと話し合っておくことが必要でしょう。