手術給付金の基礎知識
「手術給付金」とは、病気やケガで所定の手術を受けた場合の保障です。
手術給付金が給付される内容は、保険会社の約款に定める手術や公的医療保険対象の手術などがあります。
しかし、全ての手術が保障されているわけではなく、各保険会社の保険商品によりさまざまな違いがあります。
保険商品を選ぶポイントの1つとして、手術給付金の基礎知識をお伝えします。
給付対象の手術
近年販売されている医療保険では、手術給付金の対象の手術を公的医療保険対象の手術等に連動させているタイプが多くみられます。
約1,000種類の手術がカバーされるとされていますが、法令等の改正があった場合に手術給付金の支払事由が変更されることがあります。
以前、販売されていた医療保険は、約款などに定める88種類や89種類に分類された保険会社所定の手術等を給付対象としているものが主流でした。
このタイプの医療保険は今でも販売されており、特約を付加することで、公的医療保険対象の手術までカバーできる商品もあります。
なお、「公的医療保険対象の手術が1000種類」といった表現の商品と比べて、支払対象となる手術が少なく感じるかもしれませんが、対象となる手術等を大きく88種類と分類しているためで、手術の数が10倍以上も違うわけではありません。
給付対象かどうか気になる手術がある場合は、保険会社へ確認すると良いでしょう。
給付対象外となる手術
手術給付金は全ての手術が給付の対象となるわけではありません。
保険による責任開始前(保障が始まる前)に発生していた病気やケガを原因として責任開始後に行った手術は、原則として給付の対象外です。
美容整形上の手術、疾病を目的としない不妊手術や、視力矯正を目的とする手術(レーシックなど)など、治療の目的ではないものも給付の対象外です。
また、公的医療保険対象の手術等であったとしても給付金の対象とならない場合があります。
図1 公的医療保険対象の手術などでも給付の対象外となる一例
給 付 対 象 外 |
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資料:執筆者作成
上記以外にも手術給付金の対象外となる手術があり、保険商品により違いがあるので注意しましょう。
手術給付金の支払額
手術給付金の支払額は、入院日額を基準にして手術の内容により倍率で決まっている保険商品や、手術内容に関係なく一律で決まっているものなど、保険商品によって異なります。
表 手術給付金の支払いの例
手術内容によって支払額が異なる保険商品の場合 | 入院給付金日額の10倍・20倍・40倍 | ||
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支払額が全て一律の保険商品の場合 | 入院給付金日額の10倍 | ||
入院中の手術か、外来での手術かにより区別する保険商品の場合 | 入院中の手術の場合 | 入院給付金日額の10倍 | |
外来の手術の場合 | 入院給付金日額の5倍 | ||
同一の日に複数回の手術があった場合 | 手術給付金額の高いいずれか1つの手術についてのみ手術給付金を支払う |
資料:執筆者作成
保険商品により、入院のない手術をして入院給付金が支払対象とならない場合でも、手術給付金は支払対象となる場合があります。
手術をしたときは加入している保険商品の約款を確認するとともに保険会社の担当者へ手術内容を伝えましょう。
手術給付金に上乗せも
万一のときに金銭的に困らないように備える役割を果たすのが保険です。
さらに、がんの手術や女性特有の病気の手術などを受けたときに手術給付金の上乗せがあるなど、手厚く保障されている保険商品もあります。
厚生労働省「平成26年(2014)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(※)によると、平成26年9月中の一般病院7,426施設のうち、手術などの実施状況は「悪性腫瘍手術」が一般病院総数の31.2%となっており、2,319施設で手術が行われています。
これを部位別でみると「大腸」(24.4%)が最も多く、次いで「胃」(21.5%)、「乳房」(16.6%)となっています。
治療費が高額になる可能性のあるがん治療などに備えるため、手術給付金に上乗せがあるかどうかという視点で保険選びをするのも良いかもしれません。
※厚生労働省では、3年ごとに「静態調査」として、検査・手術の実施状況や診療設備の保有状況などの診療機能の詳細な調査を実施しています。
図2 一般病院における手術などの実施状況
資料:厚生労働省「平成26年(2014)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」をもとに執筆者作成
どの手術に手術給付金がいくら支払われるかを確認したい場合は、約款をよく読み、不明な点は保険会社に問い合わせをすると良いでしょう。
それぞれの商品の保障内容を比較し、ご自身にあった保険選びをするようにしましょう。
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コラム執筆者プロフィール
小山 智子 (コヤマ トモコ) - 宅地建物取引士/AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 専業主婦時代に、夫の借金を1,000万円肩代わりする。離婚後「お金を守る知識」の重要性を痛感。現在は、シングルマザーと独身女性の相談業務とマネー講座を中心に活動中。著書「誰にも頼れない女のお金の守り方」(秀和システム)。
鎌倉ウーマンライフプランニングオフィス 代表
ファイナンシャルプランナー 小山 智子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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掲載日:2019年9月17日
手術後に入院した際の保険について考える必要性
手術後、しばらく入院をして回復を目指すこともあると思います。
下図によると、平成29年の平均入院日数は29.3日とされており、この日数は年々減少傾向にあります。
退院患者の平均在院日数の推移
資料:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」をもとに作成
(公財)生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」によれば、入院時の1日あたりの自己負担額平均は19,800円です。
「入院日数は減少傾向」とはいえ、入院トータルで必要な金額は小さくないでしょう。
また、年齢別にみると、高齢者の方は入院日数が多くなりがちなため、自分自身の年齢から計算して保険を選ぶことも大切です。
実際に保険を選ぶ際には、手術に対する給付金だけでなく、入院する可能性まで加味して、総合的な負担の軽減を目指すことを意識してみましょう。