入院日数の平均
医療保険加入を検討する場合、平均的な入院日数はどの程度なのかが気になるところです。
厚生労働省「平成23年(2011)患者調査の概況」を使って入院日数の平均を確認してみましょう。
1. 年齢別平均入院日数
調査によると、病院での平均入院日数は34.3日となっており、以前に比べれば短くなってきているのが現状です。
年齢階級別に見ると0~14歳は8.9日、15~34歳は14.0日、35~64歳は27.3日、65歳以上は44.8日と、年齢が上がるに従って入院日数は長くなる傾向にあります。
2. 三大疾病での平均入院日数
年齢別にみた三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)での平均入院日数を確認しましょう。
がんの平均は19.5日、心疾患の平均は21.9日、脳血管疾患の平均は93.0日となっています。
65歳以上の脳血管疾患による平均入院日数が、104.4日と長くなっているのが目立ちますが、その他は60日以内におさまっています。
また、脳血管疾患は年齢を重ねるごとに入院日数は長くなりますが、がんは0~14歳、心疾患は15~34歳の入院日数が比較的長くなるという特徴があります。
表1 三大疾病の年齢階級別退院患者の平均入院日数
0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 | |
---|---|---|---|---|
がん | 19.7日 | 15.7日 | 15.1日 | 22.4日 |
心疾患 | 15.9日 | 24.7日 | 9.2日 | 26.1日 |
脳血管疾患 | 23.2日 | 30.6日 | 55.4日 | 104.4日 |
資料:厚生労働省「平成23年(2011)患者調査の概況」をもとに執筆者作成
3. その他の病気での平均入院日数
年齢別にみた三大疾病以外の病気での平均入院日数を確認してみると、ウイルス肝炎の平均は15.4日、糖尿病は36.1日、結核は65.4日となっています。
結核は年齢を重ねるごとに入院日数は長くなる傾向ですが、糖尿病は比較的若い15~34歳の入院日数が長くなるという特徴があります。
ただ、2.で確認した三大疾病の脳血管疾患のように、100日以上の入院日数になる場合は少ないことがわかります。
表2 ウイルス肝炎、糖尿病、結核の年齢階級別退院患者の平均入院日数
0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 | |
---|---|---|---|---|
ウイルス肝炎 | 6.1日 | 12.7日 | 12.8日 | 21.6日 |
糖尿病 | 14.2日 | 41.6日 | 21.3日 | 47.6日 |
結核 | 11.9日 | 44.8日 | 62.9日 | 68.9日 |
資料:厚生労働省「平成23年(2011)患者調査の概況」をもとに執筆者作成
4. 入院日数の構成割合
病院での平均入院日数の構成割合を見てみると、0~14日は66.0%、15~30日が16.4%、1~3カ月が12.8%となっており、圧倒的に14日以内に退院する方が多くなっています。
しかし、精神病床では1~3カ月が34.5%と多くなっており、結核病床でも1~3カ月が44.8%となっています。
また、感染症病床は92.0%が14日以内に退院しているのも特徴的です。
5. まとめ
以前に比べ全体的に入院日数の短期化が進んでいますので、入院治療より通院治療が多くなっているのが現状です。
医療保険は一般的に入院・手術を行った場合に備えるための保険ですが、最近は通院の保障も兼ね備えた内容の医療保険も販売されています。
時代によって医療保険も進化していますので、現在のニーズに合った商品を選択することを検討しましょう。
相談対応をしていても、入院・手術の保障よりも通院の保障を得たいと考える方が多くなったと感じています。
ただ、三大疾病等では入院日数が長期化する傾向ですので、三大疾病だけは長期入院で給付金が受け取れる特約を付ける加入方法も検討に値すると思います。
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コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2019年8月7日
がんの種類別平均入院日数
がんも、腫瘍のできる場所により治療法などが異なり、平均入院日数が変わります。
厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」によると、「胃の悪性新生物」「結腸及び直腸の悪性新生物」「肝及び肝内胆管の悪性新生物」「乳房の悪性新生物」のうち、最も平均入院日数が短いのは「乳房の悪性新生物」で11.5日、最も長いのは「胃の悪性新生物」で19.2日でした。
「胃の悪性新生物」の平均入院日数は、0~14歳が8.1日なのに対して、75歳以上は24日と、若年層と高齢層で差が大きいのが特徴的です。
一方で、「肝及び肝内胆管の悪性新生物」の平均入院日数は15~34歳が36.5日とピークになっています。
がんの年齢階級別退院患者の平均在院日数 | 0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 | 75歳以上 |
---|---|---|---|---|---|
胃の悪性新生物 | 8.1日 | 12.5日 | 13.0日 | 20.8日 | 24.0日 |
結腸及び直腸の悪性新生物 | 8.8日 | 12.7日 | 11.7日 | 17.1日 | 20.5日 |
肝及び肝内胆管の悪性新生物 | 15.7日 | 36.5日 | 13.0日 | 17.7日 | 19.8日 |
気管,気管支及び肺の悪性新生物 | 12.5日 | 9.7日 | 13.3日 | 17.1日 | 19.3日 |
乳房の悪性新生物 | 5.5日 | 7.1日 | 8.4日 | 15.7日 | 20.1日 |
資料:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」をもとに作成
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掲載日:2020年1月24日
適切な入院の支払限度日数を選択しよう
医療保険の入院の支払限度日数には、30日・60日・120日・180日・360日・730日などがあります。
もしもの時の保険ですから、安心を考えて、入院の支払限度日数を長期間に設定することも一つの考えですが、支払限度日数を長期間に設定すると、一般的に保険料が高くなります。
最近では、入院日数の平均が年々短くなっている傾向にあるため、保険料をできるだけ抑えるのであれば、入院の支払限度日数を30日や60日に設定するのも良いでしょう。
しかし、精神・行動障害(統合失調症・躁うつ病など)やアルツハイマー病(神経系の疾患)、脳血管疾患など、長期入院が予想される傷病に対して不安に思う方は、特約を付加するのも一つの手です。
例えば、医療保険の特約には、三大疾病や七大疾病(※)に罹患して、一定の条件となった時に一時金が受け取れたり、三大疾病の入院の支払日数が無制限になったりする商品や、退院してからの通院に対する保障など、さまざまな商品があります。
(※)七大生活習慣病とも呼ばれており、保険会社が定める傷病を保障対象とする商品です。
入院の支払限度日数の設定や特約を付加する際には、保険会社の商品の違いを理解した上で、ご自身に必要な保障と保険料を比較して検討することをおすすめします。
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