老後の備えとして考える医療保険
医療保険で何をまかなうか。
ずっと、お元気で過ごされていた方でも高齢になると、ケガや病気で入院されることが増えます。保険のテレビコマーシャルも目につき、入院というと費用のことが心配になります。
医療保険は、主に入院をした場合の入院費と手術費用が対象として支払われます。
今までかけていた生命保険の特約として医療保障が付いていた場合、60歳や65歳で医療保障部分が終了してしまい、継続したい場合には別途まとまった額の保険料を一括で払うことを求められるケースも見受けられます。
特約で付いていた医療保障と同じ内容がこれからも必要であるとは限りませんので、医療保険が本当に必要かどうかをここでもう一度考え直してみましょう。
それでは、どのような保障があれば安心なのでしょうか。
医療保険のパンフレット等を見ると、実際例や統計データ等で「がんの医療費は100万円以上かかる」「心筋梗塞は200万円以上かかる」等の説明とともに医療保険の必要性が書いてある商品もありますが、実際にこの「医療費」は治療にかかる総額である場合が多いようです。健康保険の負担や高額療養費の制度を使うことで、本人負担はそのうちの一部で済むこともあります。
差額ベッド代などは別として、一定以上の医療費がかかった場合は、健康保険に入っている限り自己負担額(一般で3割、70歳以上になると収入に応じて1~3割)に上限があり、それ以上は負担する必要がありません。
この制度を「高額療養費制度」といいます。年齢や所得によって計算式が違いますが、治療を受けた人が負担する医療費が1ヵ月に100万円もかかることはありませんし、以前は一旦、自己負担で支払って後日返してもらっていましたが、この頃は手続きによって負担しなくてもよいように制度が変更されつつあります。
ただし、最近よく聞く「先進医療」を受けた場合には、健康保険の対象外になるので高額療養費制度も対象外となります。先進医療の保障は、100円程度の上乗せで追加することができます。ただ私は現状で、先進医療の保障のためだけに保険に加入されるのは個人的に賛成しません。それは、実際に先進医療を受けられる方が非常に少ないからです。
元を取りたいなら、貯金にすればよいのでは?
仕事をしている世代であれば、入院することで仕事ができないため収入が途切れる不安もありますが、高齢者の方ですでに退職されている方はその心配も不要です。
治療に関する費用を、入院日数や手術等に応じて支払う医療保険に入っていないからと、高齢になってから割高な保険に入らなくても、手持ちの現預金がある程度あればまかなえるケースは多いです。70歳を過ぎれば高額療養費の自己負担限度額も下がりますから、新規契約は考えものです。
よく「保険で元を取る」という話を聞きますが、基本的に保険は元を取れるものではありません。必ず元を取りたいのであれば、貯金しておけばよいのではないでしょうか。貯金ならば入院にも使え、また元気なら旅行やバリアフリーの改装費にも使えます。
介護費用の心配
高齢者の支出で心配なのが「介護費用」です。入院をした際の介護状態は医療保険で対応できますが、要介護になって高齢者施設に入所しても医療保険は出ません。介護状態からすぐに回復するということはなかなかありませんので、介護費用保険は長く出たほうがありがたいですね。一生涯、終身で給付が受けられるとよいのですが、終身保障の介護保険は何歳で入っても保険料が割高で、支払いの条件も結構、厳しいものです。
高齢になっていろいろなサポートが必要になることに対して、保険に入るという選択肢はありますが、全てをフォローしてくれる保険はありませんし、そのための保険料はかなり高額になり無駄も多くなります。「何が何でも保険に入っておかないと」と考えず、支払う保険料と得られる保障のバランスをよく考えることが必要です。
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コラム執筆者プロフィール
山根 裕子 (ヤマネ ユウコ) マイアドバイザー.jp®登録 - 株式会社エフ・ピー・エー代表、CFP®。
会計事務所系FP会社で中小企業のオーナーや個人顧客の様々なおかねに関する問題解決の実行支援を展開中。
コンサルティングを受ける側のことを考えた親身なアドバイスには定評がある。
NPO法人日本FP協会の関東ブロック長としてファイナンシャルプランナーを地域に拡げる活動にも積極的に参加。
ファイナンシャルプランナー 山根 裕子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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