がんと経済的な問題
有名なハリウッド女優が、乳がんになる確率87%であると医師から告げられて「両乳房切除手術」を受け、がん確率5%まで下げたというセンセーショナルな話題がありました。
これは、がんに対するリスクマネジメント対策を施したということですが、一般的には「そこまでするのか!?」と、驚かれた方は少なくないと思います。
「リスクをマネジメントする」というのは、なにもプロフェッショナルな世界(企業等)で行うモノではなく、家庭でも簡単にできます。そのリスクマネジメントの考え方を実行する方法は、「がんのリスクマネジメントの考え方」のコラムを参照してください。
今回は、リスクマネジメントのなかでも、がんの経済的な問題を対処する「リスクファイナンス」について詳しくみていきましょう。
リスクファイナンスの方法
リスクファイナンスには、「リスクの移転」と「リスクの保有」の2つがあります。がんのリスク対策では、①「保険(リスクの移転)」と②「貯蓄(リスクの保有)」をバランス良く組み合わせることが必要となります。
つまり、「お金」の支出が絡み、その資金をあらかじめ手当てしておくことが、リスクファイナンスです。
ここで重要なのが、がん治療コストの見積額を想定し、適度な保障をかける①「保険」と、その他のコストの想定額を②「貯蓄」で備えることです。そして、このバランスをいかに保っていくかというプランニングが大切となります(具体的な金額については、保険会社の担当者やファイナンシャルプランナー等のプロに相談することをおすすめします)。
例えば、がんの治療のための医療費の大部分を「がん保険」で賄い、がん治療に伴う収入減や、保険で賄いきれない生活費は貯蓄で補うというように、「保険」と「貯蓄」を分けて備えるとわかりやすいでしょう。
どちらか一方だけでは適切な備えはできない
がんをリスクファイナンスの「リスクの保有」だけで実行しようとしたとき、いちばん簡単なのは「貯蓄だけで賄う」ことです。それができれば、保険の手当てを一切しないので、保険料の支払いが無く、リスクファイナンス上のコストはかかりません。
しかし、一旦がんに罹れば、がんでの入院費から公的医療保険対象外の先進医療費用や、抗がん剤の費用等、巨額の費用が必要となります。
積極的な保有=「貯蓄」対策だけでは、過大にかかるかもしれないコストへの不安は解消できません。一方で、がんのリスクの移転=「保険」対策だけで賄おうとすれば、入院コスト負担の不安には対処できそうです。ただ、不安を安心に変えるために保障をてんこ盛りにしてしまっては、保険料がかかりすぎてしまいます。
まとめ
がんに対する経済的な問題に対処していくリスクファイナンスは、①「保険」と②「貯蓄」のどちらか一方だけを選択するという、極端すぎる対策はおすすめできません。2つのバランスを保った「家計に安心で優しい対策」が、大切なポイントだと思います。
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コラム執筆者プロフィール
市田 雅良 (イチダ マサヨシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1999年、ファイナンシャルプランナーとして独立。
資産運用、相続対策、生命保険の見直しなどの分野でセミナーや相談業務を行う。
FP相談としては年200件超のライフプラン提案を行っている。
また、日銀が支援する金融広報アドバイザーとして金融教育の普及に携わり、「KIDSマネー教育」、「生活経済セミナー」などで活動中。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 市田 雅良
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年5月29日
がんの治療費用などで悩んだら相談しよう
がんが発覚すると、本人を含め周囲の家族などは診断や治療などのさまざまな場面においてストレスを体験するといわれています。
精神的側面のケアもさることながら、実際にがんに罹患したことによりかかる費用や、経済面などに不安がある場合、どのような機関に相談することができるのでしょうか。
全国の「がん診療連携拠点病院等」には、本人や家族、地域の方々など、院内・院外を問わず、誰でも無料でがんについて面談や電話で相談ができる「がん相談支援センター」が設置されています。
なお、がん診療連携拠点病院等は、治療の内容や設備、がんにかかわる情報提供などについて一定の基準を満たし、誰もが質の高いがんの医療が受けられるように厚生労働大臣が指定しています。
がん相談支援センターの相談窓口では、がんの治療にかかわる不安や疑問、療養生活全般の質問など、がんの治療にかかる費用をはじめとする経済的負担や支援制度などについても相談が可能です。
また、がん相談支援センターの相談員は、がんについて詳しい看護師や、国が指定した研修を修了した相談員などが対応しており、研修を修了した相談員は、がん相談支援センターのロゴをモチーフにしたバッジを着けています。
全国のがん相談支援センターは、厚生労働省のホームページなどで探すことが可能ですので、生活全般にわたり不安や疑問を感じたときには、一人で悩まずに利用してみましょう。
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