がん保険 生命保険会社と損害保険会社の違いは?
がん保険は、生命保険会社から販売されている商品と、損害保険会社から販売されている商品とがあります。
同じがん保険でもその内容は異なるのに、違いは分かりにくいですね。では、それぞれの商品の違いを解説します。
「保障」と「補償」
生命保険会社の保険商品で提供されるものは「保障」と表記されます。
「保障」とは、「責任をもって安全を請け合い、一定の地位や状態を保護する」ことを意味します。
一方、損害保険会社の保険商品で提供されるものは「補償」と表記されます。「補償」とは、損害を「補いつぐなう」ことを意味します。
生命保険会社の商品は、リスクから家族や本人など大切な人「守る」ためのもので、損害保険会社の商品は、リスクから生じた損害を「補う」ものという違った意味を持つことを理解しましょう。
では、がん保険の「保障」と「補償」の違いをみていきます。
生命保険会社と損害保険のがん保険の入院保障(補償)の例
生命保険会社のがん保険は、起こるかもしれないリスクを想定して保障される範囲や金額を具体的に決めています。
例えば入院保障では、1日あたり1万円というように1日あたりの保障額の定額払いとなります。
一方、損害保険会社のがん保険は、実際にかかった医療費の自己負担分となります。
では、具体的な数字でみてみましょう。
例えば、がんの手術治療で15日間入院したときの医療費の自己負担分が20万円だった場合、1日あたり1万円の入院保障の生命保険会社のがん保険では、1万円×15日=15万円と手術保障(例えば保障が入院日額20倍手術の場合は20万円(1万円×20))が保障され、併せて35万円が給付されます。
一方、損害保険会社のがん保険では、実際にかかった20万円が補償されます。
このように生命保険会社と損害保険会社のがん保険では、「保障」と「補償」の違いがあり、給付金額にも違いが出てくるのがわかります。
生命保険会社と損害保険会社のがん保険には、同じ仕様の保障(補償)もあります。それは、がん診断に伴う保障(補償)です。
がんと診断された際に給付される給付金や、がんと診断され治療を始める際に給付される給付金など、がん診断に伴う保障(補償)です。
給付金額は、双方とも100万円などまとまった金額の給付となります。
保障(補償)のメニューの違い
生命保険会社、損害保険会社ともに保障(補償)のメニューは、がんの治療における「入院」「手術」「通院」とがん診断に伴う給付金を中心とした基本保障(補償)メニューです。
オプション(特約)として、「先進医療をつけるか?」というところが、現在のがん保険選びの基本となるでしょう。
生命保険会社の商品では、「抗がん剤治療」や「放射線治療」、「乳房再建手術」など特定の治療を保障するものが増えてきています。
さらに「治す」ことを目的に、主契約を「治療」に特化した商品もあり、生命保険会社の保障のメニューは保障対象を細かく分けることにより特約がバラエティーに富んでいます。
また、細かい給付条件が設定されているのは、生命保険会社の商品の特徴です。例えば通院保障に関しては、「入院後の○日以内の治療」や「1回の入院で○日まで」など商品によって細かい条件があります。
一方、損害保険会社の補償メニューは、がん治療であれば治療法を限定せずかかった分を給付するというスタイルで、公的医療保険の範囲を超えている自由診療までカバーしています。
自由診療の場合は、医療費が高額になるケースがあります。損害保険会社の中には、提携している医療機関での自由診療の入院治療の場合は、かかった医療費を保険会社が直接病院に支払いをしてくれるので、まとまった費用を用意する必要がありません。
保険期間の違い
保険期間の大きな違いは、損害保険会社のがん保険は期間が決められている定期保険のみということです。
その期間は5年など短い期間となっています。その分保険料は低く抑えられていますが、更新して補償を継続したい場合は、保険料は上がります。
生命保険会社の商品は、生きている間ずっと保障が続く終身タイプのものや定期保険の商品もあり、また終身保障でも、保険料の払い込み期間を60歳までなど、年齢で設定できるものが多く、選択肢は広くなっています。
どちらを選択すればよいのか?
生命保険会社と損害保険会社のがん保険の選択を考えるときには、上記のような特徴を理解したうえで、個々が望む保障(補償)に近いものを選びましょう。
損害保険会社のがん保険は、「かかった医療費=給付金」ととらえておけばよいので、シンプルでわかりやすいといえます。
もし、生きている間ずっと保障を望む場合は、終身保障のある生命保険会社の商品が良いでしょう。
また、子どもの教育費や住宅ローンなど支出がかさむ一定期間の保険料をなるべく抑えてがんに備えたい、あるいは先進医療や自由診療も含め治療費を気にせず治療に専念したいという場合は、損害保険会社の保険商品をおすすめしますが、入院や手術保障は他の医療保険でカバーしているので、がんの通院治療のみの保障にし、その分保険料を抑えたい場合は、生命保険会社の保険商品をおすすめします。
自分が望む保障(補償)はどうなのか?
今回は、生命保険会社と損害保険会社のがん保険の違いをみてきました。保険商品の知識を増やしてより的確な選択をしていきましょう。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年2月17日
がんの治療費以外に必要な費用を知ろう
がんになると、治療費以外にも必要な費用が出てきますが、どのような費用が必要になるのでしょうか。
がん治療における入院費用
治療費だけでなく、入院にも費用がかかります。
厚生労働省「平成30年社会医療診療行為別統計の概況」によると、0歳~74歳のがん治療における平均入院費用は、1日あたりでは約65,800円(全額自己負担の場合の金額)となっていますが、総額は症状や入院の日数などにより異なります。
また、入院する際に必要となる日用品の購入など、細かい支出も発生するため、思った以上に費用の負担が大きくなる可能性もある点には注意をしましょう。
がん治療における通院費用
近年、入院でなく通院によりがん治療を受ける患者が増えています。
通院するには、電車賃やガソリン代などの交通費がかかりますし、家族に一緒に来てもらうのであれば、その交通費も必要になるかもしれません。
がん治療を受けるために何度も通院することになれば、その分交通費の負担は大きくなります。
また、先進医療を受ける場合の交通費についても注意が必要です。
先進医療を受けられる医療機関は限られているため、住んでいる場所とは離れた医療機関で受けなければならないことがあり、その場合交通費も高くなることが考えられます。
自己負担を抑えられる公的制度
がんの治療費や入院費などの費用は、公的医療保険によって、70歳未満の成人であれば3割の自己負担となります(先進医療の費用など一部を除く)。
例えば30歳の方が治療を受け、治療費などの総額が120万円で、そのうち先進医療の費用が40万円だった場合を考えてみましょう。
公的医療保険の対象となるのは、先進医療の費用を除いた80万円ですので、その3割である24万円が自己負担となります。この24万円と先進医療の費用の40万円を合計した、64万円を自分で負担することになります。
1カ月の費用が高額になった場合は「高額療養費制度」を利用することで自己負担を抑えられますが、入院時の差額ベッド代や食事代、また先進医療の費用などについては対象外となり、全額自分で負担しなければなりません。
高額療養費制度など、がんになったときに助けとなる公的制度がある一方で、自分で賄わなければならない費用もあることが分かります。
これらの自己負担費用を補うのががん保険ですので、がん保険に加入する際には、がんになるとどんな費用が必要になるのか、よく確認してみましょう。
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