がんの手術費用
がんの治療には大きく、がんを切除する手術・がんを破壊する放射線治療・がんを死滅させたり増殖を抑えたりする抗がん剤治療の3つがあり、がんの3大治療法と呼ばれています。
実際にはこのうちの1つの治療法だけではなく、いくつかの治療法を組み合わせて行われることが多いようです。
今回はがんの手術と、手術費用を含むがんの治療費に関して確認してみましょう。
1.部位別手術実施割合
がんの部位別手術実施割合を厚生労働省「平成23年患者調査」で確認すると、肝がんと乳がんの手術割合が半数を超えて高く、逆に肺がんや気管支がんはかなり低くなっています。
一般的に白血病など血液のがんや、全身に転移したがんに手術を行うケースは少ないようです。
下表は、がんの進行程度や患者の意思にもよりますが、手術を行うかどうかの参考になる数字ではないかと思います。
胃の悪性新生物 | 47% | 乳房の悪性新生物 | 55% |
結腸の悪性新生物 | 41% | 子宮の悪性新生物 | 33% |
直腸等の悪性新生物 | 36% | 悪性リンパ種 | 16% |
肝等の悪性新生物 | 60% | 白血病 | 16% |
気管・肺等の悪性新生物 | 15% | その他の悪性新生物 | 36% |
資料:厚生労働省「平成23年患者調査」をもとに執筆者作成
2.部位別主な手術方法
部位によって手術方法は変わりますので、特徴を確認してみましょう。
乳がんでは開胸手術、肺がんや気管支がんでは胸腔鏡下手術、肝がんでは経皮的血管内手術が比較的多くなっており、その他のがんでは開腹手術が多くなっています。
早期に発見されたがんや大きさが小さいがんは、手術によって完全にがんを切除できれば完治する可能性が高くなります。
手術方法を選択するときは、体への負担や手術後の職場復帰への影響等も含め慎重に検討するようにしましょう。
3.手術費用を含む治療費
手術費用を含むがんの治療費は、胃がん約29万円・結腸がん約25万円・直腸がん約34万円・気管支がんおよび肺がん約23万円・乳がん約23万円になります。
がんの治療費も他の病気やケガと同じように、健康保険適用内の手術等であれば治療費の3割負担になります。
部位によって手術費用に多少差はありますが、高額療養費制度(※)を利用すれば実際の負担額は少なくてすみますので、金銭面で過度に不安になる必要はないでしょう。
※高額療養費制度とは、1カ月に支払った治療費が自己負担限度額を超えた場合、その超えた分が支給される制度です。
4.がん手術給付金
医療保険の手術給付金と同じように、がん保険での手術給付金にも2つのタイプがあります。
手術の内容により入院給付日額の10倍・20倍・40倍などと定められているタイプと、一律に入院給付日額の20倍などと決められているタイプです。
倍率で手術給付金が定められているタイプは、手術方法によって受け取れる金額が異なりますので注意しましょう。最近はわかりやすい一律タイプのがん保険が増加しています。
5.まとめ
手術費用を含むがんの治療費は、高額療養費制度がありますので、健康保険適用範囲内の治療であれば著しく高額になることはありません。
しかし、健康保険適用外の治療を受けると想像以上に支出が多くなる可能性もありますので、がん保険へ加入しリスク対策を行うのも良いでしょう。
また、がん保険の選択に当たってはがん入院給付金やがん診断一時金に注目しがちですが、がん手術給付金に着目してみるのも良いのではないでしょうか?
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コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年2月27日
がんの手術費用の負担を軽減する高額療養費制度
がんの手術費用などで医療費負担が大きくなった場合に利用できるのが、公的制度のひとつの「高額療養費制度」です。
高額療養費制度では、毎月1日から月末までを1カ月と数え、その期間に支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、限度額を超えた分の金額の支給が受けられます。
自己負担上限額は、年齢と収入による区分ごとに、計算式や具体的な金額が設定されています。基本的には世帯ごとの医療費の限度額ですが、70歳以上ではそれに加えて外来だけの限度額が設けられている場合もあります。
表1 高額療養費制度の自己負担限度額(69歳以下)
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770万~ 約1,160万円 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370万~ 約770万円 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
資料:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」をもとに作成
表2 高額療養費制度の自己負担限度額(70歳以上)
適用区分 | ひと月の上限額 | |
---|---|---|
年収約1,160万円~ | 世帯ごと | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770万~ 約1,160万円 |
世帯ごと | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370万~ 約770万円 |
世帯ごと | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
年収約156万~ 約370万円 |
外来 (個人ごと) |
18,000円[年144,000円] |
世帯ごと | 57,600円 | |
住民税非課税世帯 | 外来 (個人ごと) |
8,000円 |
世帯ごと | 24,600円 | |
住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など) | 外来 (個人ごと) |
8,000円 |
世帯ごと | 15,000円 |
資料:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」をもとに作成
高額療養費制度以外にも、費用の負担を軽減する公的制度があります。
1年分の医療保険と介護保険の自己負担分の合算額が一定金額を超えている場合は、限度額を超えた分の金額が支給される「高額介護合算療養費制度」が利用できます。
公的制度を利用すれば、がんの手術費用の負担を大きく抑えられる可能性があります。経済的な負担を心配されている方は、どの制度でどのくらいの支援が受けられるのかを確認してみましょう。
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