がん治療に平均いくらかかる?

「がんで入院し、持ち出しが100万円以上かかった。がん保険にも入っていたのだけれど…」
と知人が言っていたのを聞いて、その金額の大きさにびっくりしたことがあります。
私自身は、がんで入院した経験は無いのですが、親戚や親しい友人が、がんで入院したという話を聞くにつれ、いよいよ自分も?…と被害妄想的な気分になってしまうのは、「がん」というフレーズに敏感になってしまっているからかもしれません。
「日本人の年間の死亡者数は、約100万人にものぼり、そのうち約34万人が“がん”の死亡者である」(厚生労働省「がん対策について」)。
つまり、がんによる死亡者は「3人に1人」という確率が発表されているわけです。どれくらいのがん予備軍がいて、そこからどれくらいの方が実際がんになるのかということについては、がん登録の制度によって詳しく分析されています(がん登録による分析は、国立がん研究センターがん対策情報センターにて行われています)。
がん治療には、いくらかかるのでしょうか?
がん治療は、公的な健康保険の範囲内で行われます。
つまり、他の病気やケガと同様、医療機関の窓口で保険証を提出し、健康保険等の公的医療保険制度の枠組みのなかで、3割負担(罹患者の年齢によります)となります。
また、治療費が高額になった場合は、高額療養費制度により、負担はさらに軽くなります。
主ながん治療の平均入院日数と治療費は以下の通りです。

※資料:厚生労働省 医療給付実態調査平成23年をもとに執筆者作成
平成23年度のデータをまとめた表ですが、以前(平成8年等、厚生労働省のホームページ参照)のデータから比べれば、入院日数や医療費用等も格段に負担は減ってきています。
このデータによると、がんで入院した場合の日数は、10日~20日程度と思ったほど長期入院ではないというのがわかります。
ただし、がんは1回の入院で済むのではなく再発するケースも多く、複数回の入院をする場合もあり、必要入院日数は、表内の入院日数より多くなることもあります。
また、高額療養費を適用していれば、入院自体の費用負担はそれほど大きくありません。ただ、退院後は、引き続き通院が必要な場合が多いです。
その際、よく治療薬で使われる「抗がん剤」は、保険適用されるものでも高額ですが、保険適用されないものもあります。入院手術の治療費以外に、通院にも費用がかかるのが、がん治療の特徴です。
ライフプランを考えるとき、「ライフデザイン(生きがい)」「ファイナンス(経済・お金)」「健康」の3大要素を考えてプランニングしていくのが、ファイナンシャルプランナー的な考え方の基本です。
その「健康」を考えるとき、自分がかかりそうな「がん」は、どのような「がん」なのかの予想がつくのなら費用見積りが可能ですが、アメリカに比べてがんリスク予見が確立されていない日本では難しいといわざるを得ません。
でも、がんに罹患した場合の費用見積りは、データ等を利用して備えるという方法がとれます。その備えはやはり「現金・預金」と「がん保険加入」です。
自分のライフプラン上、安心できる範囲で「がん保険」と「現金・預金」等により、金銭的にもバランスがとれた備えが大切だと思います。

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コラム執筆者プロフィール
市田 雅良 (イチダ マサヨシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1999年、ファイナンシャルプランナーとして独立。
資産運用、相続対策、生命保険の見直しなどの分野でセミナーや相談業務を行う。
FP相談としては年200件超のライフプラン提案を行っている。
また、日銀が支援する金融広報アドバイザーとして金融教育の普及に携わり、「KIDSマネー教育」、「生活経済セミナー」などで活動中。

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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 市田 雅良
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
こちらの記事も参考に
掲載日:2020年6月23日
がんの治療費についての不安を和らげる方法とは?

がんに罹患した場合の、手術費や入院費、通院費等の治療費を不安に思う方もいるでしょう。
治療費について相談できる場所や利用できる公的制度等を知ることで、不安を和らげられるかもしれません。その一部を紹介します。
がん相談支援センター
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などに設置された、がんの無料相談窓口です。患者さんやその家族だけでなく、地域の方々も利用可能な相談窓口で、治療費のことだけでなく療養生活等、がんに関することについて相談することができます。
医療ソーシャルワーカー
医療ソーシャルワーカーは病院等で、患者さんやその家族が抱える不安を解決し、社会復帰を促進する業務を行っています。経済的な不安に対しても相談に乗ってくれるため、治療費に不安を覚える場合の相談先の一つとして活用できるかもしれません。
高額療養費制度
医療機関や薬局で支払う医療費が1カ月で上限額を超えた場合に、超えた分の金額が支給される公的制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定められています。
さまざまな病気やケガの治療を受けた際に利用できる制度ですが、がんで治療費が高額になってしまったときにも活用できることがあるので、選択肢として覚えておくと役立つでしょう。
この他にも、会社員の方等が利用できる傷病手当金制度や、公益法人等が提供している無料電話相談サービスもあります。
不安を抱え込まずに、ひとまず相談してみたり、利用を検討してみたりすると、不安軽減につながるのではないでしょうか。