「がんに万一なった場合」を想定してみよう
「あなたは家を買った場合、どのような生活が送れると思いますか?」という確認が、コーチングの手法にあります。
購入後の楽しいことの数々を思い浮かべながら、購入に向かっての目的と弾みをつけていただこうというものです。こういったポジティブシンキングは楽しいことです。
一方で、長い人生の中では、楽しくないライフイベントが出てくることもあります。暗くなりがちな話題ですが、心の整理をどうするか、今回のテーマである「がんに万一なった場合」に想定されることを考えてみましょう。
まずは、がんと告知されたときのことを想像してみてください。
がんを告知されたとき、初めは大きな心理的ストレスを本人や家族は感じるでしょう。告知の直後は死をイメージし、本人も家族も落ち込むことがあるでしょう。多くのがん患者は、時間の経過とともに病気を受け入れることができるのだそうです。そこから今度は、病気と闘うというポジティブな気持ちになり、治療を頑張るという心の整理ができてくるのでしょう。私の周りのがん経験者の方も、病気を前向きにとらえ、がんと闘っている方が多いように思います。
がんになった場合を想定すると、もう一つ不安なのが治療費の問題です。
保険会社のアフラックが行った「がんに関する意識調査」(2010年8月)によると、がん未経験者とがん経験者とでは、がんになった時の不安について、ギャップがあるのがわかります。
がん未経験者は「がんと聞いて最初に何を心配しますか?」という問いに対し、「治療費(経済的負担)」と回答した方が最も多く、がん経験者は「がんと知って最初に何を心配しましたか?」という問いには、「死」を一番多く回答していました。
入院・食事・交通費等を含むがん治療全般に関わる費用に関しても、がん経験者の回答で一番多かったのが「50万円程度」、ついで「100万円程度」となっています。それに対して、がん未経験者は「300万円以上」と思っている方が一番多いという結果でした。
実際にがんにかかると、お金のことよりも「死」への不安が大きいことや、がんの種類や部位、進行度合いによって異なりますが、がん治療費に関しても、実際は考えているほどかからないことがこの調査でうかがえます。
とはいえ、経済的不安を取り除けば、安心して治療に専念できます。
保険や、貯蓄で治療費を準備しておくことで経済的不安は払拭できるでしょう。
同調査によると、「治療費は主に何でまかないましたか?」というがん経験者への質問には、「保険」が「貯蓄」を上回り、がん治療には、保険が大きな役割を果たしているといえます。
「がんになったら…」といろいろ想定するのは、元気なうちはなかなかできないものです。
しかし、現在、日本人の2人に1人はがんになる時代です。
そして、がんは早期発見により「治る」病気になりつつあります。
お金の準備は、前もってできます。安心して治療に専念するためにも、特に貯蓄の少ない人はがん保険を検討しましょう。
年齢が若ければ、保険料はお手頃です。早めの行動が、保険料の面においてお得になりますよ。
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コラム執筆者プロフィール
市田 雅良 (イチダ マサヨシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1999年、ファイナンシャルプランナーとして独立。
資産運用、相続対策、生命保険の見直しなどの分野でセミナーや相談業務を行う。
FP相談としては年200件超のライフプラン提案を行っている。
また、日銀が支援する金融広報アドバイザーとして金融教育の普及に携わり、「KIDSマネー教育」、「生活経済セミナー」などで活動中。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 市田 雅良
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
こちらの記事も参考に
掲載日:2020年4月3日
がんの手術や検査の費用を補える公的制度
内閣府「平成28年度がん対策に関する世論調査」によると、約半数の方が「がんの治療には高額な費用がかかる場合がある」ことを恐れているという結果が出ています。
もしもがんになってしまったときのために、がんの手術や検査にかかる費用を補える公的制度があることも知っておきましょう。
公的医療保険
がんの手術代や検査代、薬代については公的医療保険が適用となり、医療費の一部のみが自己負担になります。自己負担割合は年齢や所得によって異なりますが、70歳未満の成人ならば3割負担となります。
知っておきたいのが保険適用されないものについてです。
図1 公的医療保険が適用されない費用
- 入院中の差額ベッド代や食事代など
- 先進医療費
- 試験的な薬を使った治療費など
これらの費用は、原則的に全て自己負担となることに気をつけましょう。
高額療養費制度
公的医療保険が適用されても、医療費の支払いが高額になってしまった場合は「高額療養費制度」を利用することができます。
この制度は、「1カ月間で支払った医療費が一定の金額を超えた場合に、超えた分の金額が払い戻される」というものですが、次のような注意点があります。
図2 高額療養費制度の注意点
- 入院中の差額ベッド代や食事代、先進医療費などは対象外となる
- 払い戻しは後日の申請に基づいて行われるため、いったんは医療機関の窓口で大きな額の支払いが必要となる場合がある
ただし、支払う医療費が高額になることがあらかじめ分かっている場合は、限度額適用認定証やその他必要な書類を医療機関の窓口へ提示することにより、支払いを自己負担限度額までにとどめることも可能です。
これら、がんの手術や検査の費用を補える公的制度に注目し、もしものときに役立ててください。