がん保険の必要性
保険の加入や見直しを検討するときに、がん保険に加入するかどうかで悩む方は多いのではないでしょうか?
国立がん研究センターの「がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2013年データに基づく)」によると、生涯でがんに罹患する確率は、男性62%、女性46%で、2人に1人が罹患するとされています(※)。
誰でも罹患する可能性のある病気ですが、がんは病気自体の怖さだけでなく、家計への影響も大きく、それまでの家族の生活を一変させてしまう可能性がある病気です。
このコラムでは、がんになったとき必要になる費用と家計の負担を軽減してくれるがん保険の必要性についてご紹介します。
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
がんになったらどんなお金が必要になるの?
(1)治療費
がんになったときに必要なお金というと、一番気になるのは治療費ではないでしょうか。
がんの治療は、健康保険適用の範囲内の治療であれば、他の病気やケガと同じように医療費の自己負担は最高3割となります。
例えば治療のため入院した場合、短期間であれば支障はないかもしれませんが、半年や1年などと入院が長期間続くと、無視できない金額となってくるでしょう。
(2)生活費を補填するお金
がんになったときの生活費にも注意が必要です。現在働いている方は、収入が減る可能性が考えられます。
今までと同じように残業ができなくなったり、短時間勤務になったりすれば収入に影響が出ることが予想されます。特に、仕事を続けるのが難しくて退職する場合、家計に大きく影響します。
また、病院へ通うための交通費や宿泊費、生活改善のための医療用ウィッグなども必要になってくることがあります。交通費や宿泊費は家族の分も必要になることがあります。
一つひとつは小さな金額でも、気がつかないうちに出費がかさんで家計を圧迫することが考えられます。
がんになったときに役立つ公的制度
がんになったときの経済的な負担を減らすために、下表に記載した公的制度を積極的に活用しましょう。
「高額療養費制度」を利用すれば、毎月の治療費を抑えることができます。「医療費控除」を申請すれば、支払う税金の金額を減らすことができます。
会社員であれば、長期間休んで給料がもらえないときには「傷病手当金」を受け取ることができます。ただし、自営業の方などで自治体の国民健康保険に加入している場合には、傷病手当金は給付されないことに注意が必要です。
また、がんの初診日から1年6カ月経過後に身体の機能の障害か、長期の安静が必要な病状のため、日常生活ができない、または著しい制限を受ける状態と認定されると「障害年金」を受け取れることも覚えておきましょう。
がんになったときに役立つ公的制度
名称 | 内容 |
---|---|
高額療養費 (健康保険) |
ひと月にかかった医療費の自己負担金額が高額になったとき、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が支給される制度。自己負担限度額は、年齢および所得状況により設定されている。 |
医療費控除 | 1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額を超えたとき、所得控除を受けることができる。 |
傷病手当金 (対象は会社員) |
病気やケガで会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられないときに支給される。最長1年6カ月の間、おおむね給与の3分の2に相当する金額が支給される。 |
障害基礎年金・障害厚生(共済)年金・障害手当金 | 初診日から1年6カ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)に障害の状態にあると認定された場合に年金が受け取れる。障害手当金は傷病が治り(症状が固定し)、労働に制限を受けるか受けることを必要とする状態と認定された場合、一時金として支給される(国民年金には障害手当金はありません)。 |
資料:執筆者作成
しかし、このような公的制度を活用しても、経済的な負担をゼロにすることはできません。
十分な貯蓄があれば乗り切れるかもしれませんが、こうした公的制度と貯蓄だけでは不安が残る方が多いと思います。万一の事態に備えて、がん保険に加入しておくと良いでしょう。
万一のときに役立つがん保険
(1)がん保険の給付金
がんになったときやがん治療のために入院したり手術したりしたときに保険金や給付金が受け取れるがん保険ですが、どんなときに受け取れるのかは商品によって違います。
がんと診断されたらまとまった一時金が給付されるものや、抗がん剤治療や放射線治療、ホルモン剤治療など、特定のがん治療を受けることで給付金が受け取れるもの、入院日数や通院日数に応じて給付金が受け取れるものもあります。
また、がん治療のために実際にかかった治療費を補償するものや、未承認の抗がん剤治療などの健康保険適用外の治療費を補償するものもあります。
(2)医療保険に加入していれば、がん保険はいらない?
「医療保険に加入しているからがん保険は必要ない」と思う方もおられるかもしれません。
しかし、医療保険の多くは手術や入院をした場合に給付金が支払われるため、抗がん剤による治療などで長期間通院して治療費がかかったとしても、手術や入院をしなければ、給付金を受け取ることができないことがあります。
がんになったとき、しっかりとした保障(補償)を受けられるようにするためには、医療保険に加えてがん保険にも加入しておくと安心です。
保険料の負担を抑えたい方は、保障(補償)がシンプルながん保険に加入する、医療保険にがん特約をつけるなどの工夫をして、がんに備えると良いでしょう。
-
コラム執筆者プロフィール
張替 愛 (ハリカエ アイ) - AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 大学で心理学を学んだ後、損害保険会社にて5年半勤務。その後、夫の海外赴任を機に独立を決意。育児をしながら在宅でファイナンシャルプランナーとしての活動を始める。転勤族や、仕事と家庭の両立で悩む女性のために、オンラインでのマネー講座や個別相談を開催中。
FP事務所マネセラ代表
ファイナンシャルプランナー 張替 愛
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年3月17日
がん保険は不要?がん保険が必要ない方とは
国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん登録・統計」2014年データによると、がんに罹患する確率は2人に1人とされています。
しかし、罹患の確率が高いからといって、がん保険には社会保険のように加入義務はないため、がん保険に加入する必要性について自身で判断しなければいけないという難しさがあります。
がん保険が不要な方の1つの目安として、「万一がんに罹患した場合の経済的負担に耐えられるか」という点に注目すると判断しやすいでしょう。
十分な貯蓄があるなど、経済的に余裕がある方であれば、そもそも医療費を保険で備える必要がありません。
がんは誰がいつ罹患するか予想することはできませんが、経済的負担に耐えられるという場合には、がん保険に加入する必要性はないといっても良いのではないでしょうか。
がん保険に入らない場合の医療費はどのくらいになる?
がん保険に未加入の状態でがんに罹患した場合でも、医療費の全てを自己負担で支払わないといけないわけではありません。
医療費を軽減する際の主な注目ポイントは「高額療養費制度」です。
「高額療養費制度」を利用すれば、1カ月の医療費の自己負担額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた分の金額の支給が受けられます。
制度を利用する方の年齢や所得状況によって自己負担限度額は異なってきますが、例えば35歳で年収約380万円の方が治療を受け、医療費の総額が100万円となった場合、次の計算式により、87,430円が自己負担限度額となります。
- 上記例の場合の自己負担限度額の計算式
- 80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円
この制度によって、手術や長期間の治療で医療費の総額が膨らんだ場合に、医療費を軽減できます。
ただし、先進医療にかかる費用や差額ベッド代、食事代やお見舞い客の交通費などは、上記制度の適用外となることに注意しておきましょう。
こちらの記事も読まれています