公的医療保険制度の仕組み
私たちが暮らしている日本では「国民皆保険」が導入されています。この国民皆保険とは、国民すべてが何らかの医療保険制度に加入し、病気やケガをして通院や入院をした場合に医療給付が得られる制度です。
今回は、この「公的医療保険制度」について確認していきましょう。
■医療保険制度の種類
公的医療保険制度は、会社員や公務員等の被用者の方たちが加入している「被用者保険」、自営業の方たちが加入している「国民健康保険」、75歳以上の方たちが加入している「後期高齢者医療制度」の3つに大別することができます。
被用者保険には、主に中小企業に勤務する方とその扶養家族の方たちが加入している「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」や、主に大企業に勤務する方とその扶養家族の方たちが加入している「組合管掌健康保険(組合健保)」および公務員や私立学校教職員の方、その扶養家族の方たちが加入している「共済組合」に分かれています。
一方、国民健康保険は自営業の方とその扶養家族の方たちが加入している「市区町村単位」と、医師や薬剤師等同業種で働く方やその扶養家族の方たちが加入している「国保組合」に分かれています。
また、前述の健康保険制度に加入していた方たちも75歳になると、それまでの医療保険制度から脱退して「後期高齢者医療制度」に加入することになります。
この後期高齢者医療制度は、都道府県ごとに設置された「後期高齢者医療広域連合」が運営にあたり、事務窓口は市町村が務めることになっています。
出典:厚生労働省「我が国の医療保険について」より
■健康保険の主な給付内容
私たちが病気やケガのため通院や入院をした場合は、加入している健康保険から給付を受けることができます。この給付には、「現物給付」と「現金給付」の2つに分けられています。
そこで、これから数回にわたって「健康保険の主な給付内容」について紹介していきたいと思います。
私たちは、病院等で診療を受けた時に医療機関に保険証を提示し、治療費の自己負担額を支払います。差額分については、医療機関が該当する健康保険に請求し、医療機関に直接支払われます。このことを「現物給付」といいます。
ではなぜ「現物給付」と呼ばれているのかというと、被保険者が医療機関で治療を受けた時に、お金ではなく医療サービス(現物)が給付されるからです。
一方、出産した場合に受け取ることができる「出産育児一時金」や、死亡した時に受け取ることができる「埋葬料」等のお金で支給されるものを「現金給付」と言います。
また、被保険者が病気やケガで働けなくなり、給料の支払いがない時や減額された場合に給付される「傷病手当金」は、現金給付になります。
■窓口の一部負担金の割合
病院等の窓口で支払う医療費の一部負担金の割合は、被保険者の年齢によって異なります。
義務教育就学前(小学校入学前)までは、入院・外来とも2割負担。義務教育就学後70歳未満の場合は、入院・外来とも3割。
70歳以上75歳未満の場合は、現役並みに所得のある方は3割ですが、それ以外の方は特例で1割負担(本来は2割負担)となっています。
また、現役並みに所得のある方は3割ですが、後期高齢者の方の場合は入院・外来ともに1割負担になっています。
この「現役並みの所得」がいくらぐらいなのか心配ですが、次の①と②を同時に満たす場合が現役並みの所得となるそうです。
- ①標準報酬月額28万円以上または住民税の課税所得金額が145万円以上
- ②夫婦2人世帯で年収520万円(単身世帯は383万円以上)
70歳以上でこの①と②を同時に満たす方は限られているようなので、あまり心配する必要はなさそうですね。
「国民皆保険」のおかげで、平均寿命や平均余命が伸びたといわれています。
私たちが安心して暮らしていくために必要な制度といえるでしょう。
これから公的医療保険制度を正しく理解した上で、不足分をカバーするための民間医療保険を上手に活用しましょう。
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コラム執筆者プロフィール
瀬尾 由美子 (セオ ユミコ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー(CFP®)、宅地建物取引主任、エフピーおふぃす瀬尾代表。
銀行勤務後、FP資格取得。
家計を預かる生活者としての視点を活かし、個人向けに生活設計や保険の見直しなどのセミナー講師として活動。
同時にFP資格取得講座などの講師も務める。
モットーは「難しい話をわかりやすく」。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 瀬尾 由美子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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掲載日:2019年9月30日
■公的医療保険制度の保険の種類による違い
公的医療保険制度では、年齢や職業によって手当などの保障内容が異なります。
主な違いを下表でみてみましょう。
表1 被用者保険と国民健康保険の比較
※スクロールで表がスライドします。被用者保険では、傷病手当金や出産手当金が支給されます。
国民健康保険は傷病手当金や出産手当金は任意給付となっていますが、実施している市町村はありません。
なお、国民健康保険組合では支給される場合があるため、確認が必要です。
さらに、公的医療保険制度の1つである後期高齢者医療制度も確認しましょう。
表2 後期高齢者医療制度
対象 | 75歳以上の方 |
---|---|
医療費の自己負担割合 (一般・低所得者) |
1割負担 |
医療費の自己負担割合 (現役並み所得者) |
3割負担 |
なお、後期高齢者医療制度でも、1カ月の医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合、高額療養費の対象となり、自己負担限度額を超えた分が後から支給されます。
高額療養費制度について知りたい方に
公的医療保険制度だけでなく民間の医療保険について詳しく知りたい方に