医療保険を選ぶときのポイント
医療保険の種類はかなりの数があります。そのなかから自分に合った商品を選ぶのは難しいことでしょう。
そこで、医療保険を選ぶときのポイントをまとめます。たくさんの商品を比較して分からなくなってしまったときには、基本に戻ることが大事です。
民間医療保険に加入する前に、公的医療保険の確認を
日本には「国民皆保険制度」といって、全ての国民が公的医療保険制度に加入することになっています。
公的医療保険制度には「健康保険」「共済組合」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」などの種類があり、加入する医療保険によって保障内容に若干の違いはありますが、いずれも医療費に対する備えができます。
民間の医療保険は、公的医療保険の不足を補うものですので、まずは自身が加入する公的医療保険の保障内容を確認しましょう。
例えば、公的医療保険では医療費が一部の負担ですみます。
平成29年6月現在の自己負担額は、6歳未満(義務教育就学前)であれば2割負担、6歳~70歳未満であれば一律3割負担です。
70歳~74歳未満になると年収約370万円までの方であれば2割負担(平成26年4月1日までに70歳になっている場合は1割)、75歳以上では1割負担となりますが、70歳以上の現役並み所得者は3割負担です。
高齢になるほど病院に通うことが増えがちですが、基本的に自己負担割合が少なくなる仕組みになっています。
また、ひと月あたりの医療費自己負担額に上限を定めた「高額療養費制度」があり、70歳未満の年収500万円程度の方であれば、医療費が高額になってもひと月約90,000円で医療費が収まります(保険対象の治療に限る)。
さらに、会社員の加入する健康保険組合によっては、「付加給付」として、ひと月あたりの自己負担額を25,000円程度に抑えている場合もあります。
自身が加入している公的医療保険でも保障の内容を知らないことがあります。まずは医療への備えとして土台となる公的医療保険を確認し、不足する部分を民間の医療保険で備えるようにしましょう。
民間の医療保険は「基本保障」をまず確認
民間の医療保険は保障の内容が複雑に思えますが、原則、保障される「基本保障(主契約)」と、任意で加入する「特約」の大きく2つの分かりやすい構成で成り立っています。
基本保障には「入院給付金」「手術給付金」などがあり、保険商品によって基本保障として備えている給付金の種類が異なります。
基本保障は、不要な給付金があっても保障から外すことができないこともありますので、まずは基本保障の内容を確認しましょう。
基本保障で確認すべき主なポイントは以下の3点です。
- (1)保障額と給付条件
- (2)保障の上限日数
- (3)保障期間
ポイント(1)の保障額と給付条件では、「どのようなときにいくらもらえるのか」を確認します。
「入院給付金」の場合、例えば、入院1日あたり5,000円の保障をする保険もあれば、入院してから一定期間は一律25,000円を保障し、以降は1日あたり5,000円の保障をする保険もあります。
また入院においては日帰り入院から支払われるかどうかが確認ポイントです。
「手術給付金」では、保障の対象となる手術の範囲はどのように定められているかなどを確認します。保険商品によって給付の条件が異なりますので、自身の望む保障であるか確認しましょう。
ポイント(2)の保障の上限日数では、「1回の入院で保障される日数」と「通算で保障される日数」を確認します。
厚生労働省「平成26年(2014)患者調査の概況」によると、平均在院日数は31.9日です。
最近では、1入院の支払限度日数を「60日」とする商品が主流になってきていますが、個人事業主等で長期入院が心配な方はもっと保障日数を長くしたり、健康保険が充実している会社員の場合は保障日数を短くしたりなど、個人によって必要と考える保障日数は異なります。
自身にあった保障日数を選んでいきましょう。
ポイント(3)の保障期間では「いつまで保障されるか」を確認します。
保障期間には一生涯保障される「終身保障」と一定期間で保障が終了する「定期保障」があります。
終身保障では保険料が変わらないという安心がありますが、定期保障と比較して保険料は高くなります。
定期保障で保障期間が短い場合は、最初の契約時の保険料は安くても、更新の度に見直され年齢に応じて高くなっていきます。
一時的な保障でよければ定期保障、生涯備えておきたいのであれば終身保障を選ぶとよいでしょう。
任意で加入できる「特約」で、自分に合った商品に
原則加入しなければならない基本保障の上乗せとして、任意で加入できる「特約」があります。
特約は基本保障以上に多種多様な保障があり、保険商品によって大きく異なってくる部分です。
プラスαの保障を備えたいと考える人は、特約の保障内容を比較すると、より自分に合った商品に出会えるかもしれません。
特約の例としては、以下のようなものがあります。
- ・先進医療特約
- ・入院一時金特約
- ・三大疾病一時金特約
- ・保険料払込免除特約
- ・がん入院特約
- ・女性疾病入院特約
- ・介護一時金特約
- ・傷害損傷特約
- ・成人病入院特約
特約にはさまざまな種類があり、あれもこれもと追加していくとその分保険料が高くなっていきます。
迷ったときは、保険の基本的な考え方である「起こる可能性はあまりないけど、万一起きてしまったら大きな支出となる」特約から優先して加入を決めていきましょう。
当然、必要がないと考えるのであれば特約は加入しなくてもよいものです。
まとめ
医療保険を比較していると、細かい保障の違いに囚われて判断が難しくなってしまうことがあります。そのようなときは基本に戻って比較すると選びやすくなります。
まずは、公的医療保険の保障を確認し、不足する部分を民間の医療保険で備えていきます。民間の医療保険もベースとなる「基本保障」から検討し、最後にプラスαの特約を比較していくとスムーズに選ぶことができるでしょう。
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コラム執筆者プロフィール
松原 季恵 (マツバラ キエ) - CFP®
銀行、損害保険会社での勤務経験から、多くのお客さまの相談に乗ってきました。
ファイナンシャルプランナーとして独立した際は、ライフプランを軸に「お金で楽しい毎日を」を心がけて情報発信しています。
ファイナンシャルプランナー 松原 季恵
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年5月29日
【年代別】民間の医療保険の選び方
自身に合った医療保険を探す際、自身が今何歳で、どのようなライフステージにいるかによっても選び方は変わってくるでしょう。
民間の医療保険への考え方もさまざまあるなかで、以下のような考え方も1つの案として捉えてみるのも良いかもしれません。
- 20代
- 一定の保険料で一生涯の保障を得たい方や、病気やケガなどに若いうちから備えたい方は、若くて健康なうちに終身型の医療保険に加入するのも1つの案です。
- 保障が一生涯続く終身型の医療保険は、更新タイプの特約の付加などをしなければ、年齢が上がったとしても保険料が上がることはありません。一般的に保険料は、保険加入時の年齢が若いときほど低額となりますので、月々の負担を抑えることができます。
- 医療保険には必要な期間だけ契約ができる定期型もあります。保険を選ぶ際には保障内容や保険期間、保険料が適正かどうか、高齢になったときのことなども考慮しておくと良いでしょう。
- 30代
- 厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、夫婦の平均初婚年齢は29.4歳~31.1歳、第1子出生時の母の平均年齢は30.7歳と、30代で結婚する方や子どもが生まれる方が多くなっています。
- 医療保険に加入していない方は、いざ入院となった場合に、収入が減ったり支出が増えたりすることも考えて検討することをおすすめします。女性の方は、妊娠する前に加入することも検討しましょう。
- 若いうちに医療保険に加入された方は、ライフステージの変化に合わせて主契約や特約の見直しをしてみるのも1つの案です。
- 40代
- 40代以降は入院時の平均日数が長くなる傾向にあります。そのため、入院が長期となった場合でも、費用や収入の確保ができるようにした方が良いでしょう。
- また、生活習慣病の割合やがんの罹患率が年齢と共に増加していく年代でもあるため、生活習慣病やがんに対する保障が手厚い医療保険を検討するのも選択肢の1つです。
- 若い頃と比べて保険料が上がっていますので、自身に必要な保障をバランスよく選ぶことをおすすめします。
- 50代
- 50代になると持病のある方が多いかもしれません。一般的に持病のある方が保険に加入する場合、健康な方と比べて選択肢も狭まり保険料が高くなりますので、そのことを念頭に置いておきましょう。
- また、50代からは生活習慣病の割合や、特に男性はがんの罹患率が上がります。そのため医療保険に加入していなかった方は、50代や60代からの罹患のリスクを考えたうえで医療保険に加入するのも1つの案です。
- 子どもがいる方は子どもの独立後や、会社勤めの方は定年を見据えるなど、自身が60代や70代になったときの収入や預貯金を考慮しながら医療保険を選ぶと良いかもしれません。
- 60代以上
- 60代以上は、子どもがいる方は子どもが独立したり、会社勤めの方は定年を迎えたりするなど、多くの方のライフステージが変わる年代でしょう。
- 一般的な医療保険は、契約可能な年齢がそれぞれの保険商品で決まっているため、60歳以上からは、自身の年齢で加入できる医療保険を探すところから始めることも必要です。
- また、病歴や持病のある方でも加入しやすい引受基準緩和型や、無選択型などの医療保険もあります。一般の保険商品に比べると、保険料は高く保障内容に制限がある場合がありますので、加入の際には、支払う保険料など、収入と支出を考えながら無理なく保険を選ぶことも意識しましょう。
- なお、現役並み所得でない70歳以上の方は公的医療保険の自己負担割合が軽減されます。ある程度の預貯金がある方は、公的制度の利用で賄うことができるかもしれません。