すっきりわかる高額療養費制度
日本は「国民皆保険」制度を導入しているため、会社員やOLの方が加入する「健康保険」、公務員の方が加入する「共済組合」、自営業の方などが加入する「国民健康保険」、75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療保険制度」のいずれかに私達は加入しています。
年齢によって自己負担割合が異なりますが、小学校入学後から70歳未満の方の場合、病気やケガで治療を受けた場合は、かかった医療費の3割を負担すればいいことになっているのはご存知のとおりです。
窓口での自己負担が3割であっても、長期の入院などでは医療費が相当高額になる場合もあります。このような場合に役立つのが「高額療養費制度」です。
これは、1ヵ月の自己負担額が所定の金額を超えた場合、その超えた部分が請求により返還される制度です。
ただし、この1ヵ月の判定は、月の初日から末日までとなっています。2ヵ月にまたがってしまった場合は、それぞれの1ヵ月で判定されますので注意が必要となります。
また、「食費」「居住費」、患者の希望によって利用する「差額ベッド代」「先進医療にかかる費用」等は、高額療養費の支給の対象となりません。
自己負担の限度額は、年齢や所得に応じて異なります。70歳未満の方の場合は、下の表のように3段階にわかれています。
下記の例の場合は、窓口で30万円を請求されて支払ったとしても、後日加入している公的医療健康保険に、自己負担の上限を超えた金額を精算してくださいという「高額療養費支給申請書」を提出すると、手続き完了後に指定した口座に212,570円が振り込まれる形になります。
出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より
なお、申請をしてから振り込みがあるまでの時間はどれくらい必要かというと、約3ヵ月程度かかるそうです。
そんなに待てないという場合は、加入している医療保険から事前に「所得区分」の認定証を発行してもらい、医療機関の窓口に提出すると窓口での支払いは高額療養費で計算した自己負担限度額で済みます。
私達加入者にとっては、準備する金額が少なくて済むので、きちんと理解して利用したいですね。
出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より
また、医療費の支払いが困難な場合は、無利息の「高額療養費貸付制度」を利用できる場合があります。
この制度の利用ができるかどうか、また、貸付金の金額については加入している公的医療保険によって異なります。
なお、全国健康保険協会のホームページでは、簡単な操作で70歳未満の方の「高額療養費簡易試算」ができます。入院が必要になった時など、高額な医療費を負担しなければならなくなった場合は、是非試算してみてください。
最後に、1月1日から12月31日までの1年間に、高額療養費制度を利用しても自分自身や家族のために支払った医療費の合計金額が高額になってしまった場合は、「医療費控除」の申請をすることができます。
会社員など給与所得者の場合は、勤務先からもらった源泉徴収票と医療費の領収書などを添付して手続きをすると、所得税の精算が行われ、納め過ぎた所得税の還付が受けられます。
このことを「還付申告」といいますが、手続きできる期間が、医療費を支払った年の翌年の1月1日から5年間となっていますので、期間内であれば、忘れていた分の手続きもできます。詳しくは国税庁のホームページに書いてありますので、興味のある方はご覧になってください。
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コラム執筆者プロフィール
瀬尾 由美子 (セオ ユミコ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー(CFP®)、宅地建物取引主任、エフピーおふぃす瀬尾代表。
銀行勤務後、FP資格取得。
家計を預かる生活者としての視点を活かし、個人向けに生活設計や保険の見直しなどのセミナー講師として活動。
同時にFP資格取得講座などの講師も務める。
モットーは「難しい話をわかりやすく」。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 瀬尾 由美子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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掲載日:2019年10月8日
高額療養費制度が使えない場合に注意
高額療養費制度ですが、場合によっては使えないことがあるので注意が必要です。
70歳未満の方の高額療養費制度の主な注意点をお伝えします。
高額療養費制度の合算方法
高額療養費制度は、1つの医療機関等での自己負担額では自己負担限度額を超えない場合、別の医療機関等での自己負担額を合算することができます。
ただし、合算の対象となるのは、それぞれの窓口での自己負担額が21,000円以上の場合のみです。
したがって、1回あたりの自己負担額が21,000円未満の場合は合算の対象となりません。
自己負担額が暦月単位で計算されること
高額療養費制度は、医療費の自己負担額を暦月(月の初めから終わりまで)単位で計算します。
月をまたいで治療をした場合は、自己負担額の合算ができません。
そのため、月によっては自己負担限度額を超えず、高額療養費が支給されない場合があります。
高額療養費制度を利用する際は、特徴や注意点をしっかりと把握して利用しましょう。
高額療養費制度を加味しても医療費の支払いに不安をお持ちの方は、民間の医療保険の利用を検討すると良いでしょう。