がん保険の保障の傾向と対策
がん保険では、何日の入院保障がベスト?
がんでの平均入院日数は何日だと思いますか?
新生物※1による平均入院日数は、平成8年は35.8日でしたが、平成23年は19.5日と、この15年間で16.3日も短くなっています(資料:厚生労働省「平成8年患者調査」「平成23年患者調査」より)。
※1悪性腫瘍のことです。細胞が何らかの原因で変異して増殖を続け、周囲の正常な組織を破壊する腫瘍です。がんや肉腫等がこれに入ります。
入院日数は病気全体でみても、最近は減少傾向となっています。もちろん、「新生物(すなわちがん関係)」においても同じく減少傾向となっています。
それはなぜでしょうか?
厚生労働省のレポートでは、「医療技術の進歩」が大きな原因であると報告しています。
そこで、「がんに備える保険」も医療技術の進歩があることをふまえた保険商品に、変化してきています。
傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数
厚生労働省患者調査 傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数
最近のがん保険相談の変化
数多くの保険見直し相談を受けていて感じる、相談内容の変化を以下に挙げてみます。
がんの入院患者は、従来、比較的男性が多いとされてきました。しかし、最近では女性も肩を並べるようになってきています。
そのため、生命保険や医療保険の「見直し相談」でも、かつては男性が被保険者の主契約が多かったのですが、最近では女性も被保険者として、契約加入される例が増えてきた傾向にあるように感じます。
- どんどん新しい商品が出てくる「がん保険」を、どれにしたらいいのか迷って相談する人が多くなってきています。
- 知人や親、親戚等の身内ががんで入院し、大変だったことを目の当たりにした不安から、「がん入院が心配で、がん保険に入りたい」と相談に来るケースが、年々増えてきています。
多様化してきた最新「がん保険」の保障の種類
① 診断給付金に特化した商品
② がん通院給付金に特化した商品
③ 年金形式で給付金が受け取れる商品
④ 抗がん剤特約等、退院後の外来治療の保障を手厚くした商品
⑤ 女性特有の「がん」への備えを手厚くした商品
最近のがん保険の保障は、選択肢が多様化してきています。上記保障内容の一例をみてみましょう。
① 診断給付金
がんと診断された時点で、診断一時金として給付金が支払われるというものです。例えば、診断給付金100万円の場合、入院1日あたり1万円の「入院給付金」と比較換算すれば、結構な金額の差となります。
② がん通院給付金
最近は、「通院」による治療に重点を置く傾向があるようです。特に、抗がん剤投与による薬代の負担額が増えています。
そのため、この給付金で通院時にかかる薬代の一部を充当し、その軽減を図るための保障とする考え方もできると思います。
③ 年金形式で給付
例えば、がん(悪性新生物)と診断確定されると、5年間、または、保険期間満了まで等、年金形式でまとまったお金が給付されるというものです。
「5年確定年金タイプ・年金年額60万円」で契約すると、がんと診断確定された時点で60万円の給付、その後、2年目~5年目まで、毎年60万円が給付されるというものです。
④ 抗がん剤特約
厚生労働省のデータから、がん罹患者の5割を超える方が「抗がん剤治療」を受けられています。抗がん剤というのは、副作用のリスクがあり、しかも、外来主体ということで治療費が高額となります。
この特約は、月ごとに請求ができ、月に1回でも抗がん剤治療を受ければ給付金対象となることも特徴の一つです。
ただし、厚生労働大臣の承認を受けていない「抗がん剤」による治療には、給付金が支払われないことになっているので、注意が必要です。
⑤ 女性特有のがんで給付
乳がんや子宮頸がん、卵巣がん等、女性特有の「がん」に対して給付されるものです。
対象となるのは、厚生労働省大臣官房統計情報部編「疾病、傷害および死因統計分類提要ICD-10(2003年版準拠)」等に掲げられたがんに罹患した場合、診断給付金や入院給付金が通常のがん保険に上乗せして受け取れるというものです。
対策
がんの治療方法は、医療技術の進歩に伴い多様化していきます。その変化に合わせて、「がん保険」の新しい保障が益々増える傾向となりそうです。
かなり昔から「がん保険」に入られている方は、もう一度、その保障が今必要ながん保障のニーズに合っているのかどうかを見直す必要があります。
また、これから加入される方は、がん保険は医療技術の進歩により、将来保険商品の内容も変化するということを意識して、保険商品選びをしましょう。
特約等がたくさん付いていると迷われると思いますが、ご自身が理解し、納得した保険商品を選びましょう。
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コラム執筆者プロフィール
市田 雅良 (イチダ マサヨシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1999年、ファイナンシャルプランナーとして独立。
資産運用、相続対策、生命保険の見直しなどの分野でセミナーや相談業務を行う。
FP相談としては年200件超のライフプラン提案を行っている。
また、日銀が支援する金融広報アドバイザーとして金融教育の普及に携わり、「KIDSマネー教育」、「生活経済セミナー」などで活動中。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 市田 雅良
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年4月28日
がん保険を選ぶ前に、利用できる公的制度も理解しておきましょう
がんの治療方法は、今後もさらなる進歩を遂げると予想されています。
例えば2016年度の診療報酬改定時に、がんの治療において高額となっていた陽子線治療と重粒子線治療の一部は保険適用となりました。
がんの治療の際、医療費が高額となった場合の負担を軽減させるために利用できる公的制度をみてみましょう。
- 高額療養費制度
- 高額療養費制度とは、1カ月に医療機関や薬局の窓口で支払った金額(※)が自己負担額の上限を超えた場合に、その上限を超えた分について支給を受けられる制度です。上限は年齢や所得に応じて決められています。(※)入院時の食事費用や差額ベッド代などは含みません。
- 医療費控除
- 医療費控除とは、所得控除の一つです。その年の1月1日から12月31までに支払った医療費が一定額を超える場合に、確定申告を行うことでその医療費の金額に応じて所得控除が受けられるというものです。
医療費控除額の計算方法
- 納税者がその年の1月1日~12月31日までの間に、自己または自己と生計を共にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費の合計額です。
- 高額療養費で払い戻された金額や生命保険会社などから受け取った給付金などは差し引く必要があります。
- 10万円または、その年の総所得金額等が200万円未満の方は、総所得金額等の5%の金額です。
- 医療費控除額の上限は200万円です。
資料:国税庁ホームページをもとに作成
一人では医療費が一定額を超えなかったとしても、生計を共にする方と支払った医療費を合計した上で控除が受けられるので、家計全体でみると負担が軽くなることがあります。
なお、医療費控除の確定申告を行う際には、医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」の提出が必要となります。
医療費の領収書は、場合によっては提示または提出を求められることもありますので、自宅などで5年間保存しておきましょう。
また、医療費控除の詳細については国税庁のホームページで確認ができますので、控除を受ける際に目を通しておくと良いでしょう。
- その他の公的制度
- 会社員や公務員の方などが病気やケガで働けないときに受け取れる「傷病手当金」や、病気やケガで生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる「障害年金」、介護保険の対象となる特定疾病により介護が必要と認定されたときに介護サービスが受けられる「介護保険制度」といった公的制度もあります。
こうした公的制度を利用することで、がんに罹患した際の治療にかかる費用の負担を抑えることができます。
あらかじめ自身が利用できる公的制度をよく理解した上で、がん保険の加入を検討しましょう。