火災保険の値上げ
掲載日:2016年5月25日
更新日:2020年10月15日
はじめに
2018年6月に火災保険の「参考純率」が改定されました。それに伴い、2019年10月以降、各損害保険会社の火災保険料も見直され、その多くが値上がりしました。
参考純率とは「損害保険料率算出機構」が算出する「純保険料率」のことです。保険金額に対する保険料の割合を「保険料率」といい、純保険料率と付加保険料率で構成されています。
純保険料率とは、事故が発生した場合に保険会社が支払う保険金にあてられる保険料率、付加保険料率とは、保険会社が事業を行うための経費にあてられる保険料率のことです。
各損害保険会社は、参考純率を参考に自社の純保険料率を算出します。なお、参考純率を用いずに、保険会社が独自に純保険料率を算出することもできます。
また、2019年10月にも火災保険の参考純率が改定されましたので、保険会社によっては、今後も火災保険料を全国平均的に値上げする予定にしているところもあります。
以下、参考純率改定による火災保険料の値上げについてみていきます。
参考純率の改定の背景
2018年の損害保険料率算出機構の「火災保険参考純率改定のご案内」によりますと、改定の背景として、以下の2点を挙げています。
- 2014年の改定以降、2015年の台風15号(九州に被害)等による支払保険金の増加。
- 冬季の凍結や老朽化等で、水道管等に生じた事故による水濡れ損害の支払保険金の増加。
また、2019年の同案内によりますと、改定の背景として、以下が挙げられています。
- 自然災害(風水災)による支払保険金の増加。
- 築年数によるリスク較差の反映。
参考純率の改定について
火災保険の参考純率は、2018年6月の改定では平均で5.5%の引き上げでしたが、2019年10月の改定では平均で4.9%の引き上げでした。この値は、全ての契約条件(都道府県・構造・築年数等)の改定率を平均した値です。したがって、契約条件によって改定率(引上率・引下率)は異なります。
建物の所在地や建物構造ごとにリスクが異なるため、所在地や建物構造によっては引き下げになったケースもあります。以下の3つの表を参照してください。
建物構造別の参考純率改定率(2019年10月改定)例
都道府県 | 改定率(%) | |
---|---|---|
三大 都市圏 |
東京都 | +1.4 |
大阪府 | +8.9 | |
愛知県 | +4.2 | |
最大 | 熊本県 | +24.1 |
最小 | 静岡県 | -3.8 |
都道府県 | 改定率(%) | |
---|---|---|
三大 都市圏 |
東京都 | +4.9 |
大阪府 | +16.6 | |
愛知県 | +11.0 | |
最大 | 宮崎県 | +24.7 |
最小 | 福岡県 | -6.8 |
都道府県 | 改定率(%) | |
---|---|---|
三大 都市圏 |
東京都 | +0.1 |
大阪府 | +14.9 | |
愛知県 | +10.9 | |
最大 | 熊本県 | +31.3 |
最小 | 福岡県 | -15.9 |
- ※上表は保険金額が建物2,000万円、家財1,000万円の場合の改定率を例示したものです。
- ※都道府県は、三大都市圏で契約数が最も多い都府県、および改定率が47都道府県のなかで最大・最小となった都道府県を挙げています。
- ※全ての築年数の契約を平均した改定率を示しています。
- ※参考純率の改定率であり、実際の契約にあたっての保険料の改定率とは異なります。
資料:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」をもとに作成
このように、参考純率の改定率は地域や建物構造により、ばらつきがあります。改定により、全体として火災保険料は値上げの傾向にありますが、逆に値下げとなるケースもあることが分かります。
値上げになる保険料を抑えるには
値上げになる保険料への対処法としては、
- 風災・雹(ひょう)災・雪災および水災による損害に対する自己負担額を増やすことで保険料を抑える。
- 水災の補償については、住んでいる地域(洪水や土砂崩れの心配がある・ない)、マンションの場合は住んでいる階(高層階・低層階)等の条件を考慮して、補償を外すことができる場合は外し、その部分の保険料をカットする。
等が考えられます。
以上、火災保険の保険料値上げの背景、地域や建物構造による参考純率の改定率のばらつき、保険料の値上げへの対処法についてみてきました。
自然災害を背景とした参考純率の改定が続く現状を踏まえれば、今後も改定が行われる可能性があります。保険料の値上げへの対処法を参考に、契約の見直しをすることも大切でしょう。
出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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