2020.01.10
会社員・公務員が知っておきたい国民年金・厚生年金の加入期間の壁(その2)「20年」
公的年金には、原則として65歳から受給できる老齢年金や、万一のことがあったときに遺族に支給される遺族年金などがあります。
さらに、会社員・公務員の方の年金では、老齢厚生年金には「加給年金」、遺族厚生年金には「中高齢寡婦加算」という、年金額を上乗せして受給することができる制度があります。
ただし、加給年金と中高齢寡婦加算を受けるためには、厚生年金被保険者期間(加入期間)が20年以上あることが必要とされています。
厚生年金加入20年以上で加給年金が受けられる?
(1)加給年金の要件
厚生年金被保険者期間が20年以上ある方が老齢厚生年金を受けられるようになったとき、その時点で対象者となる配偶者や子どもがいることが、加給年金を受けるための基本的な要件です。
対象者となる配偶者や子どもとは、原則として老齢年金受給者に生計を維持されている65歳未満の配偶者や、18歳到達年度の末日までの子ども(または等級1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子ども)を指します。
このような配偶者や子どもがいる場合、届出をすることで老齢厚生年金に上乗せされるのが加給年金です。
加給年金の金額は下表のとおりです。
表1 加給年金の金額
対象者 | 加給年金額 | 年齢制限 |
---|---|---|
配偶者 | 224,500円※ | 65歳未満であること |
第1子・ 第2子 |
各224,500円 | 18歳到達年度の末日までの子どもまたは1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子どもであること |
第3子 以降 |
各74,800円 |
※老齢厚生年金受給者の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額には33,200円~165,600円が特別加算されます。
資料:日本年金機構「加給年金額と振替加算」をもとに執筆者作成
(2)加給年金の支給停止
配偶者や子どもが年齢制限を超えると、加給年金は支給停止されます。
つまり、配偶者の方が65歳、子どもであれば原則として18歳に到達した年度の末日の時点から、加給年金が上乗せされない老齢年金の受給となります。
ただし、配偶者が所定の要件を満たせば、配偶者が65歳以降受給する老齢年金に「振替加算」という形で上乗せされます。
図2 加給年金のイメージ
例:夫65歳時点で妻52歳、子ども17歳。夫は会社員として40年、妻は会社員として15年勤務していたご家庭の場合。
資料:日本年金機構「加給年金額と振替加算」をもとに執筆者作成
(3)配偶者が20年以上厚生年金に加入している場合
配偶者に厚生年金被保険者期間が20年以上ある場合、その配偶者が65歳未満で老齢厚生年金を受給するようになると、それまで加算されていた加給年金は支給停止されます。
また、振替加算も受けられなくなります。
配偶者が振替加算を受けられる要件とは、加給年金の対象となっていた配偶者であったこと、1926年4月2日~1966年4月1日の間に生まれていること、老齢基礎年金のほかに老齢厚生年金等を受けている場合は厚生年金保険等の被保険者期間(加入期間)があわせて20年未満であることなどです。
このように、配偶者に厚生年金被保険者期間が20年以上ある場合は、加給年金や振替加算が受けられるかに影響が出る可能性があります。
厚生年金加入20年以上で中高齢寡婦加算が受けられる?
厚生年金の被保険者に万一のことがあった場合、要件を満たしていれば、その方によって生計を維持されていた遺族には遺族厚生年金が支給されます。
また妻が残されたケースでは、年齢などの要件によって、遺族厚生年金に上乗せして中高齢寡婦加算を受けられることがあります。
例えば、夫が亡くなり、残された40歳の妻に生計を同じくしている子どもがいない場合では、夫に厚生年金被保険者期間が20年以上あれば、妻は65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算額を上乗せした遺族厚生年金を受給することができます。
こちらの記事も読まれています
加給年金や中高齢寡婦加算の計算例
(1)加給年金の場合
例えば夫65歳、妻56歳、子ども16歳のご家庭の場合、妻が65歳になるまで9年分で約202万円(年額224,500円×9年=2,020,500円)と子どもが18歳になるまでの2年分で約45万円(年額224,500円×2年=449,000円)、総額で約247万円の加給年金が受けられます(配偶者の加給年金への特別加算を除いた金額で計算)。
表2 加給年金の計算例
期間 | 加給年金額 |
---|---|
妻が65歳になるまでの9年 | 約202万円 (年額224,500円×9年) ※特別加算額を考慮しない場合の金額 |
子どもが18歳になるまでの2年 | 約45万円 (年額224,500円×2年) |
総額で約247万円の加給年金 |
資料:執筆者作成
(2)中高齢寡婦加算の場合
例えば、子どものいない夫婦で妻40歳のときに夫が亡くなった場合、妻が65歳になるまでの25年間で約1,463万円(年額585,100円×25年=14,627,500円)を受給することができます。
表3 中高齢寡婦加算の計算例
期間 | 中高齢寡婦加算額 |
---|---|
妻が65歳になるまでの25年 | 約1,463万円 (年額585,100円×25年) |
総額で約1,463万円の中高齢寡婦加算 |
資料:執筆者作成
なお、厚生年金被保険者期間20年に1カ月でも足りない場合は、加給年金も中高齢寡婦加算も受けられないため、注意が必要です。
厚生年金の加入期間が20年未満の場合は?
厚生年金被保険者期間が20年未満の場合、加給年金や中高齢寡婦加算が受けられないため、20年に満たないまま勤務先を退職された方は、ご自身での対策を考えることがあると思います。
どなたでも始めやすい備えとしては、個人年金保険があります。
個人年金保険は、保険料の支払方法や支払期間を自分で決めることができるものがあるため、ご自身のライフスタイルにあった支払いができるというメリットがあります。
個人年金保険に加入することで、厚生年金の加入期間20年の壁で悩んでいる方が、より安心して人生を過ごせるようになるのも魅力です。
もし厚生年金の加入期間20年の壁でお悩みの場合は、まずは厚生年金の加入期間が何年あるかを配偶者と一緒に確認し、そのうえで個人年金保険を検討してみてはいかがでしょうか。
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。