2019.05.17
在職老齢年金制度の中身を正しく理解!(その1)
前回は60歳以降働くと老齢厚生年金の受給額の調整が行われる「在職老齢年金」についてみてきました。今回は在職老齢年金を計算する際の「調整の対象となる公的年金」と「調整の対象とならない公的年金」についてみていきましょう。
調整の対象となる公的年金
(1)老齢厚生年金(退職共済年金)
会社員や公務員は国民年金から「老齢基礎年金」を、厚生年金や共済年金から「老齢厚生年金(退職共済年金)」が受給できますが、在職老齢年金を計算する際に調整の対象となるのは老齢厚生年金(退職共済年金)です。
60歳以降も厚生年金に加入する事業所に勤務する場合、70歳未満の方は原則として厚生年金の被保険者となるので年金保険料を支払うことになりますが、70歳以上の方については、厚生年金の被保険者ではないため、年金保険料の負担はありません。
共済年金については、2015年10月以降、共済組合員も厚生年金保険の被保険者になりましたので、支給停止方法は厚生年金保険制度に統一されました。なお、組合員で2015年9月30日以前に受給権が発生していた場合は退職共済年金となります。停止方法が統一されるにあたり、2015年10月以前から退職共済年金を受給しながら働いている方のうち、一定の要件に該当する方には、別途、停止額の配慮措置が設けられています。
(2)厚生年金基金の代行部分
厚生年金基金は企業独自の私的年金制度ですが、一部は老齢厚生年金の報酬比例部分の年金を代行しているため在職老齢年金を計算する際には調整の対象となります。なお、代行部分以外の企業独自の「プラスアルファ部分」については調整対象外となります。厚生年金基金について詳しく知りたいときは、勤めていた事業所や企業年金連合会に確認しておきましょう。
調整の対象とならない公的年金
(1)老齢基礎年金
在職で老齢基礎年金を受給する場合、老齢基礎年金の受給額については調整の対象とはなりません。老齢基礎年金は65歳から受給できますが、20歳~60歳になるまでの40年間の全期間、国民年金保険料を納めた場合は満額受給できます。
(2)老齢厚生年金に加算される加給年金
加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持され、要件を満たしている配偶者または子がいるときに加算される公的年金です。在職老齢年金を計算する際には、加給年金を支給されていても調整の対象とはなりません。
注意したいのは、老齢厚生年金が全額支給停止となる場合には加給年金の支給も停止となることです。老齢厚生年金が一部停止となる場合には加給年金は全額支給となりますので、加給年金が支給されるかどうかは確認しておくと良いでしょう。
在職老齢年金の受給月額早見表でチェック!
以下の表は、在職老齢年金の受給月額早見表です。表中にある「基本月額」は老齢厚生年金・厚生年金基金の代行部分など調整対象となる公的年金であるかを把握しておく必要があります。調整対象外の公的年金が含まれていると正しく計算することができないため注意しましょう。
表1 在職老齢年金の受給月額早見表(60歳以上65歳未満)
※スクロールで表がスライドします。
(単位:円)
資料:日本年金機構「60歳以上65歳未満の在職老齢年金」をもとに執筆者作成
表2 在職老齢年金の受給月額早見表(65歳以上)
※スクロールで表がスライドします。
(単位:円)
資料:日本年金機構「65歳以上の在職老齢年金」をもとに執筆者作成
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