がん検診の重要性
がん検診のメリット
「なぜがんになるの?」という問いに、ある専門家は「細胞の“コピーミス”による突然変異でがんが生まれる」と説明しています。医学が発達した現在でも、がんの原因は明確になっておらず、新薬や新たな治療法が日々開発されてはいても、人類ががんを克服するまでには至っていません。
しかし、早期発見すれば治るがんもあるといわれています。
厚生労働省「人口動態統計」(平成19年)のデータによると、病気による死因はがんがトップであり、最も死亡率の高い病気であることが分かります。
がんを見つける手段として有効な方法は「がん検診」を受けることです※1。
がん検診を受け早期発見できれば、数多い治療法の中から選択の幅は広がります。そして早期に治療を開始すれば、ほぼ完治するところまで医学は進歩しています。
がん検診の目的は、早期発見によりがんで死亡する可能性を低くすることです。定期的な「がん検診」は、がん罹患におけるリスクを最も抑える手段でしょう。
※1.厚生労働省 「がん検診」
がん検診について注意していただきたいこと
このように「早期発見・早期治療」が、がん検診の目的といえそうですが、解決しないといけない課題もあります。
初期のがんは発見が容易ではなく、ある程度の大きさにならないと見つけるのが難しいため、どのような検査でも100%確実ではないことを認識する必要があります。
また、検診を受けることによる不利益があることを知っておくことも重要です。微小でその後も進行がんにならないがんが発見される場合があり(過剰診断)、このような進行しないがんでも早期治療に重点を置いた場合、治療の対象となることがあります。
そのため、精神面への影響や、体への負担に配慮したうえで慎重に判断すべきではないかとの注意喚起がなされています※2。
他にも、X線やCT検査等の検査被ばくによる健康被害もあります。被害が最小限となるよう厳重な管理のもとで行われていますが、ゼロではありません。また内視鏡検査では医師の技術向上や機器改善により極めてまれではあるものの、内臓に傷がつくケースもあるようです。
このように「がん検診」を頻繁に受けると、リスクを伴うこともあるので注意が必要ですが、早期発見・早期治療によってがんのリスクを回避するためにも、必ず一度は検診を受けることをおすすめします。
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コラム執筆者プロフィール
市田 雅良 (イチダ マサヨシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1999年、ファイナンシャルプランナーとして独立。
資産運用、相続対策、生命保険の見直しなどの分野でセミナーや相談業務を行う。
FP相談としては年200件超のライフプラン提案を行っている。
また、日銀が支援する金融広報アドバイザーとして金融教育の普及に携わり、「KIDSマネー教育」、「生活経済セミナー」などで活動中。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 市田 雅良
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年2月4日
がん検診の受診率
がん検診では「がんを早期発見する」ことと、「早期発見により、がんによる死亡リスクを下げる」メリットがあります。
しかし、以下のような注意点もあり、がん検診の対象者が受診をためらう要因にもなっています。
- がん検診を受けることで100%早期発見できるわけではない
- 不必要な検査や治療につながる可能性がある
- 検査に伴って体に負担がかかることがある
では、2016年に実施された、がん検診の受診率の全国平均をみてみましょう。
がん検診対象である5つの種別ごとに、前回調査時と比較しています。
がん検診の受診率(全国平均、受診期間過去1年)
検診種別 | 性別 | 対象年齢 | 2016年実施 | 2013年実施 |
---|---|---|---|---|
胃がん | 男女 | 40歳以上 | 38.4% | 36.7% |
大腸がん | 男女 | 40歳以上 | 39.1% | 35.4% |
肺がん | 男女 | 40歳以上 | 43.3% | 38.7% |
乳がん | 女 | 20歳以上 | 29.7% | 27.4% |
子宮頸がん | 女 | 20歳以上 | 28.3% | 27.5% |
資料:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」をもとに作成
上表をみると、2013年の調査実施時と比べて、全てのがん検診種別で約1~4%ほど、受診率が上がっています。
ただし、40歳代の女性の死亡率が高い「乳がん・子宮がん・卵巣がん」の早期発見につながる乳がん・子宮頸がん検診は、受診率が20%台後半と低調なことが目立ちます。
がん検診の5つの種類と対象年齢
がん検診は、男性3種別、女性5種別と、5つのがん種別に対応しています。
対象年齢は、男女ともに「胃がん」は50歳(胃部エックス線検査については40歳以上に対し実施可)、「大腸がん・肺がん」は40歳から、女性のみが対象の「乳がん」は40歳、「子宮頸がん」は20歳からの受診が推奨されています。
がん検診は、がんによる死亡率を下げることが目的ですから、早期発見につながる5つの検診は、がんで死亡率が上がる年齢より前から受けられるようになっています。
先に示したがん検診の受診率は、3年前より上昇していますが、「胃がん・大腸がん・肺がん」の受診で4割程度、「乳がん・子宮頸がん」の受診に至っては3割を切っているのが現状ですから、高い水準とはいえません。
国のがん対策推進基本計画では「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」ことを目標として、目標達成のためにがん検診をはじめとする予防診断対策から治療・緩和ケアまで、さまざまな対策を講じています。
国民一人ひとりががん検診に関心をもち、がん検診を受診するようになれば、早期発見により助かる命や、長く生きられる命も増えるでしょう。
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