がんの備えは検診受診とお金の2本柱で
国も取り組む「がん対策」
「日本人の2人に1人は『がん』になり、3人に1人は『がん』で亡くなる」。
ここのところ世間でよく耳にするこのフレーズですが、人の一生涯で考えると、決して大げさではありません。もはや、がんは「国民病」といっても過言ではないでしょう。
このような現状を受け、国も「がん対策」に非常に力を注いでいることをご存知でしょうか?
2007年4月に「がん対策基本法」が施行され、2007年6月には「がん対策推進基本計画」が策定されました。
厚生労働省は国、地方公共団体、がん患者さんを含めた国民、医療従事者およびマスメディア等が一体となって、がん対策に取り組むことで、「がん患者を含む国民が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」の実現を目指すことを最大の目標として、様々ながん対策を講じています。
がん検診受診の重要性
例えば、住んでいる自治体から私たちの手元に郵送されてくる「がん検診の無料クーポン券」と「がん検診手帳」。
これは、診断と治療の進歩により、早期発見、早期治療が可能になっていることから、がんによる死亡者数を減らすために、がん検診の受診率を向上させ、がんを早期に発見するためのがん対策推進事業の一環です。
図1 「罹患時のがんのステージ」と「がん発覚の経緯」の関係
出典:アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)
「がんサバイバー」向けアンケート調査(2012年発表)
こちらは、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)が全国のがん経験者(がんサバイバー)を対象に、がんが発覚したときのステージとがん発覚の経緯について尋ねた結果を示したものです。
がん検診を含む健康診断でがんが発覚した方のうち、約60%の方はステージ0期・Ⅰ期という早い段階で発見できています。この結果からも、がん検診を受診することの意義が分かります。
国民にがん検診への意識を高めてもらうように、厚生労働省は2009年に「がん検診50%推進本部」を設置し、予算額も引き上げてきました。
以降、がん検診受診率は年々上昇してきているものの、まだ目標の50%には到達できていません。
このような現状に、検診無料クーポン券を送付しても受診されない方に対しては、再度の受診勧奨を郵送等で行うよう、国は各自治体に通達しています。
また、民間の企業や団体も、がん検診受診率50%超を目指し「がん対策推進企業アクション」という国家プロジェクトを立ち上げています(2014年4月現在、賛同企業・団体数1,254)。
企業にとって、大切な財産である人材をがんによって失うことは、計り知れない損失となります。
早期発見し早期治療ができれば、仕事への復帰も早いことから、企業もがん検診の重要性に着目し、協力し合って活動を広げているのです。
がん検診受診率とがん罹患率、死亡率の関係性
がん検診は、「自分では気付いていないがんを早いうちに見つけておこう」というものです。がん検診の受診率が上がることで、がんの早期発見率が上がるのは当然だといってもおかしくないですよね。
最近では、年齢調整(高齢化による人口構成の変化の影響を取り除く調整)を行った数値をみると、がんの罹患率は年々上昇しています(図2参照)。
その一方で、死亡率は年々低下しています。これは、がんの罹患率は上がってきているものの、がん検診の受診率が上がってきているために、早期発見、早期治療が可能になり、死亡率は下がってきていると捉えることができます。
今後、がん検診の受診率が上がれば、さらに死亡率は下がっていくと推定されます。
図2 がん年齢調整死亡率・罹患率年次推移
出典:公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計'13」
検診プラスお金でがんに備える
がん検診は、早期発見により、がんによる死亡を避けることをもたらしてくれると期待できますが、治療することで、がんが身体から無くなれば終わりという単純なものではないのも事実です。
少なくとも3年、頻度を減らして5年、10年の単位で定期検査は必須ですし、再発予防のために、ホルモン療法や放射線療法を行うケースも少なくありません。
また、手術でがんを切除したことにより、身体をケアする専用の下着を着け続ける必要が出てくる場合もあります。
つまり、たとえ早期発見できたとしても、がんになったことで必要になってくるお金は、一時的なものでは済まないということです。
私たち個人ができるがん対策としては、がん検診の受診だけでなく、がんになったときのためのお金も備えておいた方がいいでしょう。
がん保険もお金の備えの一つとして大きな役割を果たしますが、大切なことは、本当にお金が必要なときに役立つ保険かどうかです。
早期発見で、手術によってがんを切除した場合の入院日数は10日前後だと考えると、入院日数よりその後の通院日数の方が多くなるでしょう。
また、一度の手術費用よりも、定期的に必要な放射線療法の費用の方が高額になるでしょう。
保険で備える際には、今の医療に合ったものであるか、一時的ではなく長期的にかかってくるお金に対して、カバーできているかどうかを確認しておきましょう。
がんは、「がん検診の受診」と「お金」の2本柱で備えましょう。
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コラム執筆者プロフィール
川崎 由華 (カワサキ ユカ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、平成24年度日本FP協会「くらしとお金の相談室」相談員。
前職ではがん領域の薬を扱う製薬会社に勤務。
現在は2児の母をしながら、主婦向けのマネー講座や個人相談、執筆等ファイナンシャルプランナーとして活動中。
お金の数字だけの問題でなく、気持ちも汲み取れる身近で気さくな存在のファイナンシャルプランナーをモットーにしている。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 川崎 由華
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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