個人年金保険の加入率
公的年金の補完の意味合いからも、関心をもつ方が多い「個人年金保険」ですが、実際の加入率はどのような状況になっているのでしょうか?
生命保険文化センターの平成25年度「生活保障に関する調査」(平成25年12月発行)の結果をみてみましょう。
年代別でみてみると……
個人年金保険の加入率は、全年代においてあまり高くないことがわかります。
20歳代以下では10%にも達していません。
30歳代では17.6%、40歳代では24.3%と、年代とともに徐々に上昇していますが、加入率が一番高い50歳代でも28.4%です。
また、60歳代は19.6%となっていますが、これは、満期を迎えて年金を受け取る方が多いため、50歳代よりも加入率が低いと推測されます。
職業別でみてみると……
自営業者の方・民間企業の会社員の方・公務員の方ともに、個人年金保険の加入率に大きな差はなく20%前後です。
その中でも、29.6%~31.3%となっているのは、公務員の方および民間大企業の会社員の方です。
年収別でみてみると……
加入者本人の年収別でみてみると、加入率30%を超えているのは、年収500万円以上の方。
また、世帯年収別では、30%に極めて近くなるのは、年収700万円以上の世帯となっています。
ライフステージ・ライフイベントの視点からみてみると……
未婚の方、もしくは、既婚で子どもが小学校に入学する前の世帯は、加入率が20%をきっています。
既婚で末子が小学生の世帯が21.7%と、その頃から徐々に上がり始め、末子が中学生・高校生世帯の30.3%をピークに下がっています。
その後、子どもが短大・大学・大学院等を卒業した世帯の加入率も約20%と、大きな変動はありません。
住居という視点からみてみると……
借家に居住している方の加入率が14.2%であるのに対し、持ち家に居住している方が22.6%と、やや加入率は高いといえます。
また、同じ持ち家でも、住宅ローンがある方よりもない方が、借家でも、一般の賃貸住宅に居住している方よりも社宅に居住している方の加入率が高くなっています。
調査からどんなことがみえてくるか
この調査の結果をみてみると、家計に余裕がある方が個人年金保険に加入している様子が浮かび上がってくるように思います。
確かに、住宅ローンの返済や繰り上げ返済のための積み立て、また子どもの教育費の積み立ておよび支出がある時期は、その他の目的(老後準備等)のための積み立てには、なかなか手が回らないこともあるでしょう。
とはいえ、家計に余裕が出てくる時点でも、個人年金保険の加入率はあまり高いとはいえない調査結果となっています。
ライフステージ・ライフイベントの結果からもわかるように、子どもが卒業した後に教育費の負担がなくなったとしても、加入率が急激に上がっているというわけではありません。
この結果から、老後の準備をしなくてはならないという意識が漠然とあっても、具体的にいつから、どれくらいを準備するかまで考えるほど、老後の資金準備に対する意識は高くないものと推測されます。
しかし、今後ますます自助努力が求められる社会になりつつある中、公的年金だけでは生活が成り立たなくなる可能性もあります。
一人ひとりが自分の老後のための準備を意識し、家計の見直しをすることがより一層重要になってくるといえます。
また、家計の見直しをする前から、余裕がないと言い切ってしまうのは早計です。
ライフプランを通して、余裕が生じる時期がいつ頃なのかを確認することぐらいはできるはずです。
中には、家計の見直しをしてもなお、老後の準備に苦慮する場合があるかもしれません。
しかし、思い描く老後の生活を実現するためにも、一般的な個人年金保険の加入率に惑わされず、自分の場合はいつから、どれくらいの準備が必要なのかを早い時期から考えてみることをおすすめします。
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コラム執筆者プロフィール
キムラ ミキ (キムラ ミキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 鳥取県立米子東高等学校卒業後、日本社会事業大学 社会福祉学部 福祉計画学科にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP、社会福祉士を取得。大学卒業後、アフラックでの保険営業を経て、株式会社アゼル(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わる。その後FP会社でのスタッフ経験を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。
ファイナンシャルプランナー キムラ ミキ
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2019年11月12日
20代の個人年金保険加入率の変化
高い水準とはいえなかった20代の個人年金保険加入率ですが、近年は変化がみられるようです。
(公財)生命保険文化センターが平成30年に行った調査によると、20代の個人年金保険の世帯加入率(世帯主年齢別)は、以下のように変化しています。
29歳以下の個人年金保険への加入率の変化
資料:(公財)生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」をもとに作成
全生保(民保・かんぽ生命等、簡保、JA、県民共済・生協等の4つの機関が取り扱う生命保険商品)でみた29歳以下の個人年金保険の加入率は、平成18年は3.2%、平成21年は3.7%、平成24年は3.9%でした。
ところが、平成27年には8.8%と、急激に増加しており、平成30年には15.3%と、3年間の間に倍近い加入率の増加がみられました。
加入率の変化から読み取る20代の個人年金保険への意識
平成18年から平成30年にかけて29歳以下の加入率が大幅に増えたのは、「公的年金制度に不安があるから」という理由が考えられます。
厚生労働省「平成28年 社会保障を支える世代に関する意識調査報告書」によると、20代の将来の不安として「公的年金制度が老後生活に十分であるかどうか」が、男女共に全体の4割程度を占めています。
公的年金制度だけでは老後の生活を支えるのに十分ではない、と感じているからこそ、個人年金保険への加入率が増加していると推測されます。
また、2番目に多い将来の不安として、男性は「医療や介護が必要になり、その負担が増大してしまうのでないか」、女性は「子育てや子どもの教育にお金がかかり、生活が苦しくなるのではないか」が挙げられました。
老後資金の形成や生活不安の軽減をサポートする個人年金保険は、20代にとっては「転ばぬ先の杖」なのかもしれませんね。
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