個人年金と税金
保険会社からの個人年金の受け取りは、老後の備えとして大変ありがたいものです。受け取った年金は、長年保険料を支払ったものに運用益が上乗せされて支払われています。よって、実際に受け取った金額と支払った保険料との差額には、税金がかかることになります。
では、個人年金保険に加入されていた方が年金を受け取ったときの税金について考えてみましょう。
年金で受け取った場合
表1 年金の課税関係
資料:執筆者作成
その1:保険料負担者と年金受取人とが同じ場合
受け取った年金には、所得税(雑所得)がかかることになります。なお、この場合の課税所得は以下の通りです。
課税所得=年間の受取年金額-(総支払保険料×(今年の受取月数÷受取予定期間))
※計算された金額が25万円以上の場合、所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。
その2:保険料負担者と年金受取人とが異なる場合
年金の受取開始時に、将来年金を受け取る権利の総額に対して、年金受取人に贈与税がかかります。ただし、贈与税には110万円の基礎控除があります。
実際に年金を受け取るときは、受取金額から非課税部分を差し引いたものに所得税(雑所得)がかかります。年金を受け取る初年度は全額非課税となり、2年目以降、段階的に税金がかかる部分が増えることになります(※図1を参照)。
図1 年金を受け取る権利に基づいて受け取ったときの課税部分のイメージ
資料:国税庁のホームページをもとに執筆者作成
以下では、個人年金保険の類似商品についてお話しします。
確定給付企業年金(旧:適格退職年金)
年金として受け取った場合、受け取っている厚生年金や国民年金の公的年金等に含まれて税金がかかります。ただし、受け取る年金には、公的年金等の控除があります。控除額は最も少ない場合、60歳~64歳は70万円、65歳以上は120万円となります。
財形年金貯蓄
財形貯蓄として貯まったものを年金として受け取った場合、要件を満たせば利息等の運用益も含めて非課税で受け取ることができます。利息などが非課税になる元本の額は、「財形年金貯蓄」のみの場合は385万円以下、「財形住宅貯蓄」を併せて利用する場合は合算して550万円以下です。
個人年金保険に加入したものの、年金受取時に所得税等がかかることを嫌って、一時金で受け取りたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。この場合の税金についても考えてみましょう。
一時金で受け取った場合
保険料負担者と一時金受取人とが同じ場合
一時金で受け取った場合、所得税の一時所得になります。
課税所得=(受取年金の総額-総支払保険料-50万円)×1/2
受取一時金と総支払保険料との差が70万円以下の場合は、確定申告が不要になります。
保険料負担者と一時金受取人とが異なる場合
受け取った金額に対して一時金受取人に贈与税がかかります。
それでは、年金受取人が亡くなられた場合はどうなるのでしょうか。
年金受取人が亡くなった場合
表2 年金受取人死亡時の課税関係
資料:執筆者作成
その1:保険料負担者と年金受取人とが同じ場合
年金受給権取得時に、将来年金を受け取る権利の総額に対して、年金受給権者に相続税がかかります。ただし、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があります。
その2:保険料負担者と年金受取人、および年金受給権者とが異なる場合
年金受給権取得時に、将来年金を受け取る権利の総額に対して、年金受給権者に贈与税がかかります。ただし、贈与税には110万円の基礎控除があります。
いずれの場合も、実際に年金を受け取るときは、受取金額から非課税部分を差し引いたものに所得税(雑所得)がかかります。年金を受け取る初年度は全額非課税となり、2年目以降、段階的に税金がかかる部分が増えることになります(※図1を参照)。
結びに ~年金をどのように受け取るか~
個人年金保険の年金を年金で受け取るべきか、一時金で受け取るべきかの損得は、加入しておられる保険契約や、年金生活時の収入状況によって異なります。よって、どちらを選択するべきかは、保険会社や保険に強いファイナンシャルプランナーにご相談されるとよいでしょう。
とはいうものの、一度にお金をもらうと気が大きくなって多く使ってしまったり、お金があることで不安になったりする方もおられます。ご心配な方は、損得抜きで年金として受け取った方がよいでしょう。
気にかけたいのは、贈与税がかからない保険契約にすることです。どうしてもということであれば、保険料を保険料負担者に贈与するかたちがよいと思われます。
ファイナンシャルプランナー 上津原 章
- ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※本記事は、2015年11月20日に掲載された記事です。そのため、記事内容は掲載日のものであり、現在と情報内容が異なっている場合がございますので、本記事の閲覧・利用等に際しては、ご注意ください。
掲載日:2020年1月30日
個人年金保険の保険料控除で税金の負担軽減
個人年金保険は、一定の要件を満たしている場合、一般生命保険料控除および介護医療保険料控除とは別枠で、保険料控除を受けることができます。
保険料控除を受けることで、所得税や住民税の負担が軽減されます。
個人年金保険の保険料控除
個人年金保険料控除の対象となるためには、以下の4つの要件を全て満たし、かつ「個人年金保険料税制適格特約」を付けた保険契約である必要があります。
図2 個人年金保険料控除を受けるための要件
- 年金の受取人は、契約者またはその配偶者であること
- 年金の受取人は、被保険者と同一であること
- 保険料等は、年金を受け取るまでに10年以上の期間にわたり、定期に支払う契約であること(一時払いは対象外)
- 年金の支払いは、年金受取人が原則として満60歳になってから支払うとされている、10年以上の定期または終身の年金であること
これらの要件を満たしていない場合は、個人年金保険料控除の対象とはならず、一般生命保険料控除の対象となります。
なお、保険料控除額は、2012年1月1日以後に締結した保険契約(新契約)と、2011年12月31日以前に締結した保険契約(旧契約)とで異なります。
新契約は所得税が最高40,000円、住民税が最高28,000円です。旧契約は所得税が最高50,000円、住民税が最高35,000円です。
控除額について詳しく知りたい方は、国税庁やお住まいの市区町村のホームページをご確認ください。
個人年金保険料控除を受ける際の注意点
個人年金保険は保険料控除を受けるための要件があり、要件を満たしていない場合は一般生命保険料控除の対象となる点に注意が必要です。
すでに個人年金保険以外の一般生命保険料について上限額まで控除を受けている場合、個人年金保険で支払っている保険料分の控除は受けられません。
自身が加入している保険について、あらかじめしっかり確認をしておきましょう。
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