2020.02.28
海外居住者の国民年金加入手続きはどうするの?
海外留学や国際結婚、海外で働くなどの理由で海外に居住する方は、日本の年金制度への加入義務はありません。
しかし、国民年金へ「任意加入」をすることで、将来への備えを手厚くすることができます。
このコラムでは、海外居住者が知っておきたい、国民年金の任意加入制度の特徴や手続きの方法についてご紹介します。
国民年金の「任意加入制度」の特徴
海外に居住する場合、日本国籍のある20歳以上65歳未満の方は、日本の国民年金へ任意加入をすることができます。
次の図の通り、任意加入をして国民年金保険料を支払うことで、将来受給できる老齢基礎年金の年金額を増やし、また万一のときに遺族基礎年金や障害基礎年金を受給できる可能性が高くなります。
図 任意加入をすることで受給できる可能性のある公的年金
資料:執筆者作成
一方、任意加入をしなかった場合、このような恩恵は受けられないかもしれません。
公的年金は、海外に居住していても受給することができます。
支払った保険料が無駄になるわけではないため、前向きに任意加入を検討することをおすすめします。
なお、もし国民年金に任意加入をしなかった場合でも、海外居住期間は、合算対象期間(カラ期間)として、老齢基礎年金を受給するために必要な期間に算入されます。
合算対象期間を含めれば、国民年金加入期間が10年に満たなくても、老齢基礎年金を受給できる可能性がありますが、合算対象期間は年金額には反映されません。
任意加入をした場合は年金額が増やせることと比較して、任意加入をするかどうか検討しましょう。
居住国の年金制度
日本の国民年金へ任意加入をする前に、居住国の年金制度についての理解を深めることも大切です。
日本と協定を結んでいる国で働く場合は、原則として就労する国の年金制度に加入することになります。
就労する国の年金制度に加入した場合、受給要件を満たせば、その国の老齢年金などを受給できます。
しかし、海外で就労する年数が短い場合や、その国の年金制度が整っていない場合などは、日本の老齢年金が老後の収入の柱となるでしょう。
そのような場合は、日本の国民年金に任意加入をして、老後の年金を確保しておくと安心です。
なお、働く期間が5年以内と見込まれる場合などは、日本の国民年金に引き続き加入することで、就労する国の年金制度への加入が免除されることもありますが、国や職種、所得によっては免除されないこともあります。
国民年金の任意加入手続き
海外居住者の国民年金の加入は任意であるため、自ら加入手続きを行う必要があります。
次の表の通り、市町村の窓口や年金事務所で手続きを行いましょう。
なお、手続きをする際には、年金手帳が必要です。
表 任意加入の手続き窓口
※スクロールで表がスライドします。
資料:日本年金機構「国民年金の任意加入の手続き」をもとに執筆者作成
任意加入の場合、国民年金保険料の支払い方法は2つあります。
本人が開設している日本国内の預貯金口座からの口座引き落としで支払う方法と、日本国内に居住している親族などの協力者が、本人の代わりに支払う方法です。
日本国内に預貯金口座をお持ちであれば、保険料の支払い漏れを防ぐためにも、口座引き落としでの支払いをおすすめします。
口座引き落としを選択する場合は、任意加入の手続きをする際の持ち物として、年金手帳に加えて、預貯金の通帳ならびに金融機関への届出印を持っていくようにしましょう。
保険料の支払いを忘れてしまった場合は、後から支払うこともできますが、納付期限(納付対象月の翌月末日)から2年を経過すると、時効により支払うことができなくなるため、注意が必要です。
一時帰国・本帰国時の手続き
海外から帰国して住民登録を行う場合、日本に居住する期間の長さにかかわらず、日本の国民年金への加入が義務となります。
転入する市区町村役場にて、転入手続きと合わせて国民年金への加入手続きを忘れずに行いましょう。
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ねんきん定期便の送付先の変更手続き
「ねんきん定期便」は、日本年金機構が実施している、保険料の支払実績や将来受給できる年金についてお知らせをするサービスです。年金加入者に対し、毎年の誕生月に送付されますが、送付先の変更手続きをすれば、海外の住所宛てにも送付できます。
海外でねんきん定期便を受け取るには、「ねんきん定期便お申込みページ」で基礎年金番号、住所、メールアドレス、氏名、電話番号など必要事項を入力するだけです。
なお、申し込み手続き1回につき1回限りの送付であることや、申し込みから海外の届出住所へねんきん定期便が届くまで、原則として3カ月程度、年金記録の状況や各国の郵便事情によってはそれ以上の時間がかかることを知っておきましょう。
海外へ引っ越すときや海外から帰国するとき、年金に関する手続きは忘れがちかもしれません。引っ越し準備のやることリストに書き加えるなど、対策をしておくことがおすすめです。
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