2020.02.28
その他の免除制度
突然の失業や、自然災害、配偶者からの暴力による別居など「まさか自分が!?」と思う事態が発生する可能性は誰にでもあります。
家計の急変により、国民年金保険料の支払いが難しくなったとき、通常の免除制度よりも緩和された審査基準で、保険料の支払いの免除が受けられる場合があることをご存じでしょうか。
ここでは、国民年金の「特例免除制度」について、詳しくご紹介します。
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国民年金の「特例免除制度」とは?
国民年金には、所得が一定額以下の方のために、保険料の全額または一部の支払いが免除される「保険料免除制度」や、保険料の支払いが猶予される「保険料納付猶予制度」があります。
免除や猶予が受けられるかは、原則、本人または配偶者などの前年または前々年の所得で審査されますが、失業や災害、配偶者からの暴力(DV)被害による別居などの特別な理由がある場合には、前年の所得にかかわらず、「特例免除」となることがあります。
免除や猶予、特例免除の制度を利用せず、国民年金保険料を未払いにすると、公的年金を受給できなくなる可能性があります。
特例免除制度などを利用して保険料の未払いを防ぐことで、保険料を支払っていない期間も公的年金の受給資格期間へ算入され、公的年金を受給する資格を得られる、またはその権利を維持できるというメリットがあります。
なお、老齢基礎年金について、未払いの場合と比べて免除では年金額が増えますが、納付猶予では年金額が増えることはありません。
国民年金の保険料免除申請を行うメリット
※免除を受けた期間は、満額の保険料を支払った場合の金額に対し、全額免除の場合は「1/2」、3/4免除の場合は「5/8」、1/2免除の場合は「6/8」、1/4免除の場合は「7/8」が年金額に反映される。
資料:執筆者作成
申請手続きは難しくありませんので、前述の理由に当てはまる可能性のある方は、積極的に利用するようにしましょう。
もし、免除が無理でも納付猶予にできる可能性もあります。
「相談するのは恥ずかしい」「保険料を滞納しているので言いにくい」など、ためらう方もいるかもしれませんが、将来受給する公的年金のために勇気を出して、近くの年金事務所などに相談してみましょう。
特例免除の手続きの方法
ここからは、特例免除の利用方法について、ケースごとに解説していきます。
(1)失業による特例免除の場合
失業を理由とした特例免除の場合、失業した月の前月から免除が受けられます。
本人の前年所得については審査されませんが、世帯主や配偶者がいる方は、それらの方の所得審査があります。
また、失業していることを証明する書類が必要となりますので、事前に準備しておくと手続きがスムーズに進むでしょう。
- 雇用保険に加入していた方
雇用保険受給資格者証の写しや、雇用保険被保険者離職票などの写し - 事業を休止・廃業した方
履歴事項全部証明書や個人事業の開廃業等届出書など、公的機関が交付する証明書などで失業の事実が確認できる書類
(2)被災による特例免除の場合
自然災害などで被災し、保険料を支払うのが難しいときは、前年の所得にかかわらず、免除を受けることができます。
被災と判断されるのは、震災・風水害・火災などの災害によって、所有する住宅や家財などの財産について、被害金額がその価格のおよそ1/2以上の損害を受けたときです。
災害のあった月の前月から免除が受けられますが、申請時には、災害による被害額などの証明書類が必要となります。
また、被災に伴い、国民年金保険料の納付書や年金証書、年金手帳をなくした場合でも、再発行できるので安心してください。
近くの年金事務所などで、特例免除の話と一緒に相談すると良いでしょう。
(3)配偶者からの暴力(DV)による特例免除の場合
配偶者からの暴力(DV)により、配偶者と住所が異なっている場合には、配偶者の所得にかかわらず、本人の前年所得が一定以下であれば、免除を受けることができます。
ただし、父母などの世帯主は所得審査の対象となることがあるので、注意しましょう。
この特例免除を申請するためには、免除の申請書に加えて、以下の書類が必要となります。
- 配偶者と住居が異なることなどの申出書および住居地が確認できる書類
- 婦人相談所または配偶者暴力相談支援センターなどの公的機関が発行する証明書(配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書)※初回申請時のみ
配偶者からの暴力全般に関する相談窓口である婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターでは、相談やカウンセリング、一時保護などの活動を行っているので、問題解決のために活用すると良いでしょう。
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申請免除ではない「法定免除」の場合
免除制度には、法律上、国民年金保険料の支払いが免除となる「法定免除」もあります。
国民年金保険料が法定免除になる方
法定免除の対象となる方は、下記の方です。
- 生活保護の受給者
- 生活保護受給の開始日を含む月の前月より、保険料免除になります
- 障害基礎年金・被用者年金で障害年金の受給者(1級または2級)
- 障害認定を受けた日を含む月の前月より、保険料免除になります。
- ハンセン病療養所などで療養中の方
- ハンセン病の療養を開始した日が属する月の前月より、保険料免除になります。
過去にさかのぼり法定免除の要件に該当した方には、すでに支払った保険料から該当する期間分が返されます。
法定免除の手続きの方法
上記の(1)~(3)に該当する方は、住んでいる地域の市区役所・町村役場にて、「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」を提出することで、法定免除の適用を受けられます。
それぞれの場合で、手続きに必要な書類は異なります。
- 障害年金受給者は、障害年金証書
- 生活保護受給者は、生活保護受給開始日のわかる書類
(生活保護開始決定通知書、または生活保護開始年月日が記載された生活保護受給証明書) - ハンセン病療養中の方は、療養していることがわかる書類
法定免除により減額される老齢基礎年金の年金額
国民年金保険料の支払いを法定免除されている期間について、老齢基礎年金の年金額は、満額の保険料を支払った場合の金額の「1/2」で算出されます。
なお、老齢基礎年金を満額で受給したい場合は、追納をすることで可能になります。
家計に急変があったときに、家計への負担を軽減しながら万一の場合に備えられる、年金の免除制度があることを知っておきましょう。
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- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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