2019.05.31
海外赴任、海外移住したら公的年金はどうなるの?
海外赴任や海外移住は年々増えています。外務省の「海外在留邦人数調査統計 平成30年要約版」によると、在外公館に在留届を提出している日本人は約135万人(2017年10月1日時点)で、なんと、山口県の人口に匹敵します!
しかし、海外赴任や海外移住をした場合、公的年金がどうなるのか心配に思っている方も多いのではないでしょうか?このコラムでは、海外赴任・海外移住した場合の公的年金についてご紹介します。
海外赴任をしたら公的年金はどうなるの?
日本の会社から海外に派遣されて働くこととなった場合、赴任する国や期間によって、日本の年金制度に加入するのか、それとも赴任する国の年金制度に加入するのかが変わってきます。
海外赴任時には赴任する国の社会保障制度に加入する必要があり、日本の年金制度と二重で加入しなければならないことがあります。そのため、保険料の二重負担にならないように、日本はいくつかの国と「社会保障協定」を締結しています。
表1 各国との社会保障協定発効状況(2018年8月時点)
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資料:日本年金機構ホームページをもとに執筆者作成
海外赴任をした場合に加入する年金制度
社会保障協定が発効済みの国に5年以内の期間で海外赴任をする会社員の場合は、赴任中も原則日本の年金制度(厚生年金)に継続して加入し、赴任する国の年金制度に加入する必要はありません。加入手続きは不要で、必要に応じて適用証明書を赴任先の国の保険機関などに提示してください。赴任期間は5年以内とされていることが多く、多くの海外赴任者は、日本で暮らしているときと変わらずに、厚生年金保険料を支払い続けることになります。しかし、協定が発効済みの国に5年を超えて赴任する場合は、赴任する国の年金制度にのみ加入することになります。日本の社会保障制度への加入が免除され、厚生年金に継続して加入しないときは、将来受給できる日本の老齢年金額を増やすために、国民年金へ任意加入することができます。
一方、社会保障協定が発効されていない国に赴任する場合は、原則、赴任する国の社会保障制度へ加入することになります。日本の企業との雇用関係が継続していれば、厚生年金にも加入することになります。赴任する国の社会保険料は、会社が負担する場合もありますので、確認してみましょう。
表2 海外赴任時(※1)の年金制度への加入(原則)
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- ※1 日本企業と雇用関係が継続したまま海外派遣される場合に限る。
- ※2 国民年金への任意加入は可能。
- ※3 事情により5年以内の赴任の期限の延長が認められる場合がある。
資料:執筆者作成
海外へ単身赴任したときの配偶者の公的年金はどうなるの?
海外へ単身赴任した場合、継続して日本の厚生年金に加入するかどうかで扶養に入っている配偶者の公的年金は変わります。
継続して日本の厚生年金に加入するならば、国民年金の第3号被保険者のままのため、年金保険料を負担する必要はありません。しかし、日本の厚生年金に加入しなくなった場合(社会保障協定発効済みの国へ5年を超えて赴任する場合など)には、国民年金の第3号被保険者ではなくなります。国民年金の第1号被保険者となり、保険料を負担する必要があります。
海外移住しても日本の老齢年金は受け取れるの?
海外赴任の経験から、「老後は海外移住も良いな」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?海外に住んでいても、届け出を出すことで日本の老齢年金を受給できます。受給は、日本の銀行口座でも海外の銀行口座でも送金してもらうことが可能です。
海外に居住して老齢年金を受給する場合には、「現況届」の提出が必要です。現況届は、年1回、日本年金機構から誕生月の前月下旬に発送され、滞在国の日本領事館などで発行された在留証明書を添付して提出する必要があります。日本年金機構からの現況届が届かないということがないように、住所変更の手続きをしっかりと行ったり、現況届が届いたらすぐに提出できるように計画的に在留証明書を用意したりしておくと安心ですね。もしも現況届が届かなかった場合は、日本年金機構のホームページから「年金受給権者現況届」を印刷することができますので、必要事項を記入し、在留証明書を添付して提出期限の誕生月の末日までに必ず提出しましょう。
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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