2019.05.10
個人事業主・自営業の方のための老後資金対策~老齢基礎年金を繰上げる~
国民年金の第1号被保険者である個人事業主・自営業の方にとって、老後資金の土台と考えられる老齢基礎年金は、20歳~60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納付した場合、65歳から満額の老齢基礎年金が受給できます。2019年度の老齢基礎年金の満額は780,100円で、月額にすると約65,008円です。総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)家計の概要」によると、世帯主が65歳以上の2人以上の世帯では、1カ月間の消費支出は247,701円となっており、老後資金対策が必要だと感じられるのではないでしょうか?
今回は、老後資金対策の一つである、老齢基礎年金の繰上げ受給についてご説明します。
老齢基礎年金の繰上げ受給とは
第1号被保険者の老齢基礎年金の受給は、原則として65歳からですが、受給開始を早める繰上げ受給の制度も利用できます。老齢基礎年金の繰上げ受給とは、ご本人が希望すれば60歳~65歳になるまでの間でも繰上げて老齢基礎年金を受給できる制度です。繰上げ受給の制度を利用すると、老齢基礎年金が早く受給できる代わりに、受給額が減額率に応じて減額されます。減額率は、「繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数×0.5%」です。
例えば、老齢基礎年金を満額受給できる方が繰上げ請求して60歳から受給する場合、受給額はどれくらいになるのでしょうか。1カ月あたりの減額率0.5%に60カ月(5年間)分を乗じると、減額率は30%となります。よって、老齢基礎年金の受給率は70%となります。2019年度の老齢基礎年金の満額は780,100円なので、この場合、546,070円です。受給開始年齢を繰上げた場合の老齢基礎年金の受給額は下表のようになります。
表 受給開始年齢を繰上げた場合の老齢基礎年金の受給額(満額受給の方の場合)
受給開始 年齢 |
受給率 | 受給額 (年額) |
---|---|---|
60歳 | 70.0% | 546,070円 |
61歳 | 76.0% | 592,876円 |
62歳 | 82.0% | 639,682円 |
63歳 | 88.0% | 686,488円 |
64歳 | 94.0% | 733,294円 |
65歳 | 100.0% | 780,100円 |
資料:厚生労働省ホームページをもとに執筆者作成
老齢基礎年金を繰上げ受給したときの注意点
老齢基礎年金を繰上げ受給した場合、注意することがあります。まず、繰上げ請求をした時点に応じて決まる減額率は一生変わりません。65歳以降も一度減額された金額は戻りません。また、取り消しや変更もできません。
図 満額受給の方が60歳から繰上げ受給をした場合
資料:日本年金機構ホームページをもとに執筆者作成
さらに、繰上げ請求後に障害の状態になっても障害基礎年金は受給できないことや、国民年金に任意加入することができなくなるなど、その他にも注意点があります。
老齢基礎年金を繰上げ受給すると、本来よりも早く公的年金が受給できるので、お得に感じるかもしれません。しかし、老齢基礎年金を満額受給できるとして試算してみると、76歳ごろで、本来の65歳から受給開始した場合の方が、受給総額が多くなります。どれくらい長生きできるかどうかは誰にもわかりません。また、思いがけない病気の治療費などで早めに受給したいと思うこともあるかもしれません。繰上げ受給をするかどうかは、損得だけで考えるのではなく、老後資金として蓄えてきた預貯金などの経済的な状況や、ご自身の事業による収入の状況も含めた総合的な視点で判断されることをおすすめします。
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