医療保険の種類
医療保険は、生命保険、損害保険各社や共済(医療共済)が扱う病気やケガで入院や手術をした場合のリスクに備える保険ですが、どのような種類と特徴があるのかを確認してみましょう。
1.保障期間:定期型と終身型
10年間などの期間限定保障の定期型と、生涯の保障が得られる終身型があります。
働き盛りの期間に保険料を抑えて保障が得たいという場合は定期型が向いていますし、退職した後の保障まで確保しておきたいという場合は終身型が向いています。
なお、定期型は保険料が更新の度に上がっていきますが、保険会社が定める引き受け可能な期間まで更新することができます。
2.保険料の支払い方:終身払いタイプと短期払いタイプ
定期型は保障期間と保険料支払期間は同じですが、終身型は生涯保険料を支払い続ける終身払いタイプと、60歳や65歳などで保険料を支払い終える短期払いタイプがあります。
短期払いタイプは生涯の保障分を一定期間で支払うことになりますので、終身払いより1カ月あたりの保険料が高くなります。
人がいつ亡くなるかはわかりませんので、どちらのタイプを選択するかの判断は難しいですが、短期払いタイプは長生きすればするほど費用対効果がよくなりますし、今現在の保険料負担を抑えたいという方は終身払いタイプが向いています。また、保険料を一回で支払い終える一時払いタイプもあります。
3.掛け捨て型と貯蓄型
医療保険に加入後、解約した場合にお金が戻らない、いわゆる掛け捨て型と、お金が戻る貯蓄型があります。
貯蓄型には保障期間に生存していると生存給付金が受け取れるタイプもあります(期間中に入院給付金等を受け取っていない場合のみ支払われる商品もあります)。
掛け捨て型の保険料は貯蓄型より安いですが、実質負担(支払保険料-戻ってくるお金)は貯蓄型のほうが安い場合があります。
4.持病の有無など
医療保険に加入する際は健康状態を告知書に記入する必要があり、その内容によっては契約ができない場合があります。このような場合に選択肢と考えられるのが「引受基準緩和型」と「無選択型」の医療保険になります。
加入はしやすいですが、保険料が一般的に高くなることや、給付金の支払いに制限がある場合もありますので注意が必要です。
5.女性専用
通常の病気やケガによる保障だけではなく、女性特有の病気に手厚い保障がされる女性専用の医療保険があります。
一般の医療保険より保障が手厚いため保険料が高めになります。通常の医療保険でも女性特有の病気は保障されますので、上乗せで保障を得るのかどうかを検討しましょう。
6.まとめ
医療保険にはさまざまな種類があり選択に悩む方は多いと思います。そこで、相談対応している中で私が感じる傾向をお伝えします。
保障期間は平均寿命が延びていることもあり終身型を選択し、保険料の支払方法は年金から保険料を支払うのは避けたいという理由から短期払いタイプを選択し、なおかつ家計を考えると保険料を抑えたいとのことで掛け捨て型を選択される方が多いです。
また、健康状態によって引受基準緩和型や無選択型の医療保険を選択せざるを得ない方で、預貯金が多めの方は保険に加入せず万一のときは預貯金で対応し、そうでない方は一般の医療保険と比較して保険料が高くても加入される方が多いです。
女性専用の医療保険を選択される方は、少ないように感じます。前述しましたが、女性特有の病気への保障は通常の医療保険でカバーできます。
この保険を選択する方が少ないのは、保障を厚くするよりは、保険料を抑える方を優先するからかと思われます。
商品選択の前に医療保険の種類を把握し、自分自身の希望に合う医療保険を選択するようにしましょう。
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コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
- ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※本記事は、2015年2月23日に掲載された記事です。そのため、記事内容は掲載日のものであり、現在と情報内容が異なっている場合がございますので、本記事の閲覧・利用等に際しては、ご注意ください。
この記事も参考に
掲載日:2019年8月7日
公的医療保険と民間医療保険
医療保険には公的医療保険と民間医療保険があります。
公的医療保険は国民皆保険制度により、全ての国民が加入する必要があり、社会保障制度に含まれる、社会保険の一つです。
同じ社会保険のくくりとして、年金保険・労災保険・雇用保険・介護保険があります。
公的医療保険には、各健康保険組合などが運営する健康保険をはじめ、共済組合・船員保険・国民健康保険などがあり、所属や条件により加入する種類が異なります。
なお、公的医療保険は、加入する保険の種類によって、給付金などの支給要件が異なる場合があります。
例えば、傷病によって働くことができなかったときの「傷病手当金」は、国民健康保険では任意給付となっており、現在実施している市町村はありません。
民間医療保険の目的
民間医療保険の目的は、公的医療保険の補完(不十分を補うこと)です。
例えば、先進医療は、厚生労働大臣が認める医療技術で、医療技術ごとに適応症および実施する医療機関が限定されています。
これらの医療技術・適応症・実施する医療機関は、随時見直されています。
なお、先進医療の技術料(一般治療と共通する部分以外)は、公的医療保険の対象外となり、全額自己負担となります。
民間医療保険は、このような公的医療保険ではカバーしきれない医療費などの補完を目的に加入できるため、自分自身で生活を保障する手段として検討すると良いでしょう。
掲載日:2020年2月4日
公的医療保険制度の医療費の自己負担とは?
民間医療保険を検討する前に、公的医療保険制度の医療費の自己負担部分を把握しておきましょう。
公的医療保険制度の利用による自己負担の割合は、年齢によって異なります。
図1 医療費の一部負担(自己負担)割合
資料:厚生労働省ホームページをもとに作成
6歳までは2割負担、6~69歳までは3割負担、70~74歳までは1~2割負担、75歳以上は1割負担となります。
ただし、70歳以上でも、現役並み所得者(年収約370万円~)の方は3割負担となるので注意が必要です。
この自己負担分は、医療機関を受診した際に窓口で支払いますが、1カ月の医療費が一定以上の金額になる場合は「高額療養費制度」を利用することができます。
高額療養費制度とは、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口で医療費総額を支払った後に、月ごとの自己負担の上限額を超える部分について医療費が払い戻される制度のことです。
図2 高額療養費制度の概要
資料:厚生労働省ホームページをもとに作成
自己負担の上限額は被保険者の所得に応じて設定され、後期高齢者医療制度の被保険者は現役世代よりも低く設定されています。
表1 69歳以下の方の上限額
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|
住民税非課税者 | 35,400円 |
~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 |
57,600円 |
年収約370万~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% |
年収約770万~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 |
252,600円+(医療費-842,000)×1% |
資料:厚生労働省ホームページをもとに作成
表2 70歳以上の方の上限額
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | ||
---|---|---|---|
外来(個人ごと) | |||
住 民 税 ・ 非 課 税 等 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) |
8,000円 | 15,000円 |
Ⅱ 住民税非課税世帯 | 24,600円 | ||
一 般 |
年収156万~約370万円 標報26万円以下 課税所得145万円未満等 |
18,000円 (年144,000円) |
57,600円 |
現 役 並 み |
年収約370万~約770万円 標報28万円以上/課税所得145万円以上 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% | |
年収約770万~約1,160万円 標報53万円以上/課税所得380万円以上 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% | ||
年収約1,160万円~ 標報83万円以上/課税所得690万円以上 |
252,600円+(医療費-842,000)×1% |
資料:厚生労働省ホームページをもとに作成
また、同じ月の複数の医療機関における一部負担金(70歳未満の場合は21,000円以上であることが必要)を合算することができます。
この合算額が限度額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。
このような制度について理解した上で、公的医療保険では足りない保障をカバーする民間医療保険について検討すると良いでしょう。
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