個人年金と確定拠出年金の違い教えます!
確定拠出年金制度の導入企業&参加者が増えている
2001年(平成13年)10月に導入された確定拠出年金は、もらえる年金額が決まっている従来の年金(確定給付型年金)と異なり、年金原資を加入者自身の責任で運用し、その運用結果に応じて年金額が増減する仕組みになっています。
厚生労働省が発表した「確定拠出年金の施行状況等 規約数等の推移」によると、以下のように確定拠出年金を導入する企業や参加者が増えています。
図1
出典:厚生労働省「確定拠出年金制度 規約数等の推移」
図2
出典:厚生労働省「確定拠出年金制度 規約数等の推移」
確定拠出年金の施行状況
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資料:厚生労働省「確定拠出年金の施行状況」(平成26年12月31日現在)をもとに執筆者作成
図1、図2から見えてくることがあります。
企業型は導入当初は急速に加入者数を増やしていますが、最近は伸び悩んでいるようにみえます。個人型は、2013、2014年は増加割合が加速しているようです。
保険会社の個人年金との違い
このような状況下で、確定拠出年金に関してよく受けるご相談内容は……
「会社を通じて今まで入っていた企業年金や個人で入っていた個人年金があるが、確定拠出年金と何が違うのか?」
「個人年金に入ろうと思うのだけれど、会社を通じて確定拠出年金にも入っている。何が違うのかがわからないので、教えて欲しい」
というご質問です。
簡単に結論を申し上げると、従来の企業年金や保険会社の個人年金は、運用責任は企業や保険会社にあるので、将来もらえる年金額が確定している(=確定給付型)年金でした。
それに対して、確定拠出年金は、拠出(=積立額)が確定しているということで、運用責任は加入者本人にあるので、将来もらえる年金額は確定していない年金だと言うことです。
簡易な表に示すと以下のようになります。
表 確定拠出年金と個人年金の違い
確定拠出年金 | 個人年金(民間) | ||
---|---|---|---|
仕組み (ポイント) |
“積立金額”が確定している →変化に対応しやすい |
“給付金額”が確定している →安心感 |
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積 立 時 |
積立額 | 原則、変更可能 (会社による条件を確認) |
原則、契約時に決定 ※変更可能 |
税制 | 小規模企業共済等掛金控除にて、全額控除 例)企業従業員の限度額 ・企業年金あり+企業型加入→最大 33万円 ・企業年金なし+企業型加入→最大 66万円 ・企業年金なし+個人型加入→最大27.6万円 |
生命保険料控除(個人年金)にて、一定金額まで控除 所得税:最大 4万円 住民税:最大2.8万円 |
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運 用 時 |
中途解約 | 原則不可 | 可能 ただし、受取額が減少 |
運用責任 | 本人 →運用方針変更可能 →物価変動への対応可能 |
保険会社 原則、運用利率が固定 →運用方針変更不可 →物価変動への対応不可 |
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管理コスト | あり | なし | |
税制 | 非課税…特別法人税:平成28年度まで凍結中 | ||
受 取 時 |
受取額 | 運用次第で増減=未確定 | 原則、契約時に決定≒確定 |
税制 | 一時金の場合:退職所得控除 年金の場合:雑所得(公的年金控除) |
一時金の場合:一時所得 年金の場合:雑所得 |
資料:執筆者作成
どのように使い分けるか?
個人年金と確定拠出年金は、どのように使い分けていくのがよいのでしょうか?2つの違いからみていきましょう。
まず、加入する目的は、半強制か、任意で加入するかの違いはありますが、「老後資金の準備」ということは、同じですね。両方とも、公的年金制度の上乗せの部分に当たります。
個人年金は「貰える年金額が確定している分、安心感がある」のに対して、確定拠出年金は「年金額を増やせる可能性があるが、保証はなく、運用が不調であれば年金額は減る」ということです。
個人年金は安定していますが、現状の金利状況では金利が低いままで運用することが前提なので、投資効率が悪くなる可能性があります。
確定拠出年金は保証はありませんが、税制上は、個人年金(生命保険控除+雑所得)より優遇されている(積立時、運用時、引き出し時すべてに所得税法上の控除があり、額も大きい)というメリットがあります。
ライフプランを作成すると、将来の予測ができます。老後の収入源のメインは今後も年金でしょうから、将来の不足額を予測することで、「いつ、どれくらいの準備をしておくべきか?」予想ができます。
準備する際に、税制なども優遇され、投資により年金を増やすことができる「確定拠出年金」で備えるのか?安心感のある「個人年金」で備えるのか?を考え、自分自身のライフプランに合った年金制度を使い分け、活用していきましょう。
ファイナンシャルプランナー 佐藤 益弘
- ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※本記事は、2015年4月3日に掲載された記事です。そのため、記事内容は掲載日のものであり、現在と情報内容が異なっている場合がございますので、本記事の閲覧・利用等に際しては、ご注意ください。
こちらの記事も参考に
掲載日:2020年1月24日
個人年金保険と確定拠出年金は併用できる
個人年金保険と確定拠出年金は併用する(両方に加入する)ことが可能なのか気になる方もいると思いますが、個人年金保険と確定拠出年金は併用可能です。
税金に関して、個人年金保険の保険料として支払った金額は「生命保険料控除」、確定拠出年金の掛金として支払った金額は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、両方の所得控除を受けることができます。
個人年金保険、確定拠出年金それぞれの特長や注意点を考慮し、ご自身のライフプランに合わせて加入を検討しましょう。
個人年金保険
個人年金保険は、個人が任意で加入することが可能な保険です。加入時の健康状態の告知は不要、もしくは簡単な告知のみで良い場合が一般的です。
個人年金保険は、加入後にライフプランを変更する必要が生じたときに、それまでに積み立てた保険料の中から保険会社の規定の範囲で借り入れができる場合がある他、自由に解約もできます。
ただし、解約をする場合は、解約の時期によっては元本割れの可能性がありますので注意が必要です。
確定拠出年金
確定拠出年金は、企業型と個人型(iDeCo)があります。個人型(iDeCo)は加入するかどうか任意ですが、企業型の場合、企業によっては自動で加入になることがあります。また、加入に際して健康状態の告知は不要です。
加入後は原則60歳まで拠出し、一定の条件以外は脱退が認められません。特にiDeCoに加入する際は、60歳まで継続して拠出ができるか、ライフプランをより慎重に検討する方が良いといえるでしょう。