今さら聞けない個人年金の基礎知識
日本人の平均寿命が男女共に80歳を超える現在、老後のお金の準備について頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。
(公財)生命保険文化センターの「平成28年度 生活保障に関する調査」によると、実に85%以上の方が老後生活に対して「不安感あり」と答えています。その不安感の内訳を見てみると、80%以上の方が「公的年金だけでは不十分」と考えています。そして30%以上の方が「個人年金保険」という方法で老後のお金を準備しています。
このコラムでは、個人年金保険という言葉は知っているけれどもよく分からないという方、今更周りの人に聞けないという方のために分かりやすくご説明します。
個人年金保険とは
契約の際に年金を受け取り始める年齢を決め、それまでに保険料を払い込み、払い込んだ保険料をもとに受取開始の年齢から年金として受け取るという保険です。
ご自身で保険会社を通じて用意する年金と考えていただければ分かりやすいでしょう。例えば、30歳で契約し、30歳~60歳まで保険料を払い込み、年金を65歳から毎年受け取るという保険があります。
払込期間や受取条件等は保険商品によってさまざまですから、いろいろ比較してみましょう。
個人年金保険の利点
(1)老後の資金不足への備え
毎月一定額を積み立てることにより堅実に老後資金をためることができ、不足分に対して計画的に備えることができます。
また個人年金保険は、銀行や郵便局の普通預金や定期預金に預けているよりも金利は高い場合もあり、資産運用の一つの手段となります。
(2)節税効果がある
「個人年金保険料税制適格特約」を付加することで、個人年金保険料は「個人年金保険料控除」の対象となります。1年に払い込んだ保険料の金額に応じて、一定額まで所得税と住民税について所得控除を受けることができます。
ただし、控除を受けるにはいくつかの条件があります。
- 年金受取人は保険料の支払いをする本人またはその配偶者であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 年金の受け取りは60歳以上で、受取期間が10年以上であること
これらの条件を満たせば、保険料を払い込んでいる期間は毎年控除を受けることができます。
既に生命保険や介護医療保険に加入しており生命保険料控除を受けていても、個人年金保険はまた別に控除が受けられます。
主な個人年金保険の種類
主な個人年金保険の種類をご紹介します。年金の受取方法によって違いがあります。
(1)期間を決めて受け取る(確定年金)
受取開始年齢から一定の期間、年金を受け取る個人年金保険です。
65歳から10年間受け取るという契約であれば、65歳~75歳までが年金受取期間となります。
また、受取期間中に本人が亡くなった場合には、相続人の方が引き続き年金または一時金として受け取ることができます。
比較的元気な時期に趣味や旅行等へお金をかけたい方などにおすすめといえます。
図1 確定年金について
※保険料の払込終了から受け取りまでに据置期間が設定されることがあります。
資料:執筆者作成
(2)一生涯受け取る(保証期間付終身年金)
受取開始年齢から本人が亡くなるまで年金を受け取る個人年金保険です。
60歳から受け取るという契約であれば、60歳から本人が亡くなるまでが年金受取期間となります。
亡くなったのが保証期間中の場合、残りの保証期間中は相続人の方が引き続き年金または一時金として受け取ることができます。
公的年金だけでは老後の生活費が不安なため、一生涯受け取りたいという方におすすめです。
図2 保証期間付終身年金について
※保険料の払込終了から受け取りまでに据置期間が設定されることがあります。
資料:執筆者作成
この2つの個人年金保険にもいくつか種類があり、例えば、夫婦いずれかが生存している限り年金を受け取れる「夫婦年金」などがあります。
個人年金保険の注意点
年金を受け取る前に本人が亡くなった場合は、既に払い込んだ保険料に相当する額を死亡保険金として受け取れるのが一般的です。
途中解約をすると、払い込んだ保険料より戻ってくる解約返戻金が少ない場合があります。
また、利率は契約時のもので、固定されてしまうことが一般的です。5年など一定期間ごとに利率の見直しがあるものもありますが、日本の金利が低い現在では、「外貨建て年金保険」という選択肢もあります。日本より金利が高い外貨での運用が可能です。
ただし、為替相場の変動によるリスクがあるため注意が必要です。
以上、個人年金保険の基礎的なことをお伝えしました。
ご自身の老後のライフスタイルに合わせて、個人年金保険を利用し、ゆとりある老後生活の備えまたは資産運用の方法の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
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コラム執筆者プロフィール
柳沢 有紀 (ヤナギサワ ユキ) - キャリアコンサルタント
- 小・中学生の子を持つママ。商社の営業事務・採用業務から店舗の販売職までさまざまな仕事を経験。その後行政の就業相談職に就き、2年半で累計3,800人の相談実績を持つ。「仕事」と「お金」の両方から、悩めるママに向けた講座や個別相談にて活動中。
ファイナンシャルプランナー 柳沢 有紀
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2019年10月30日
個人年金保険の年金の受け取り時にかかる税金とは?
個人年金保険は、契約形態(契約者・被保険者・年金や死亡給付金の受取人の関係)などによって、年金の受け取り時にかかる税金の種類が異なります。
個人年金保険と税金について、説明をしていきます。
被保険者が生存している場合
被保険者が生存している場合、契約者・年金受取人の関係によって税金の種類が異なります。
契約者を夫とした場合でまとめると、次の表になります。
表1 個人年金保険の年金にかかる税金の種類(契約者が夫の場合の例)
※スクロールで表がスライドします。
例えば契約者が夫、年金受取人も夫の場合、夫が受け取る年金は所得税の課税対象となります。
図1 個人年金保険の年金に所得税がかかる例
一方、契約者が夫で、年金受取人が妻の場合、年金の受け取り開始時に年金の権利評価額が贈与税の課税対象となります。なお、2年目以降毎年受け取る年金は、所得税の課税対象となります。
図2 個人年金保険の年金に贈与税(2年目以降は所得税)がかかる例
年金の受け取り前に被保険者が死亡した場合
個人年金保険の年金を受け取る前に被保険者が死亡した場合、これまで支払った保険料の総額に応じた額の死亡給付金を、死亡給付金受取人が受け取ります。
この場合、契約者・被保険者・死亡給付金受取人の関係によって税金の種類が異なります。
先ほどと同様、契約者を夫とした場合で表にまとめます。
表2 個人年金保険の死亡給付金にかかる税金の種類(契約者が夫の場合の例)
※スクロールで表がスライドします。
表の上から順番に解説します。
まず契約者・被保険者が夫で、死亡給付金受取人が妻の場合です。
被保険者である夫が死亡すると、この場合保険料を支払っている契約者も夫ですので、夫の死亡により妻が夫のお金(死亡給付金)を受け取ることになり、死亡給付金は相続税の課税対象となります。
図3 個人年金保険の死亡給付金に相続税がかかる例
次に、契約者・死亡給付金受取人が夫で、被保険者が妻の場合です。
被保険者である妻が死亡すると、保険料を支払っている夫自らがお金(死亡給付金)を受け取ることになり、死亡給付金は所得税の課税対象となります。
図4 個人年金保険の死亡給付金に所得税がかかる例
最後に、契約者が夫、被保険者が妻、死亡給付金受取人が子と、3者すべて異なる場合です。
被保険者である妻が死亡すると、子が夫のお金(死亡給付金)を受け取ることになり、死亡給付金は贈与税の課税対象となります。
図5 個人年金保険の死亡給付金に贈与税がかかる例
このように、契約形態などによって、所得税・相続税・贈与税と税金の種類が異なると説明しましたが、必ず税金がかかるわけではなく、控除により税金がかからないこともあります。
個人年金保険に関する税金は複雑ですので、その内容をしっかりと把握し、自分の場合はどの税金がかかるのかを確認しておきましょう。