2020.03.25
ケース別 会社員世帯の年金額(その1)
会社員生活が長くなってくると、老後資金やもしもの場合の資金を考え、将来受給できる老齢年金額などが気になるときがあるのではないでしょうか。
今回は、「夫が会社員、妻が専業主婦または扶養内パートタイマー」という世帯を具体的にイメージして、将来受給できる老齢年金額、またもしもの場合の遺族年金額をシミュレーションしてみましょう。
夫が会社員、妻が専業主婦または扶養内パートタイマーの世帯の具体的なイメージ
このシミュレーションでは、次のような会社員世帯を例として想定します。
計算のモデル世帯例
- ・夫:1983年生まれ、大学卒業後は65歳まで約43年間会社員。
- ・妻:1985年生まれ、大学卒業後は30歳まで約8年間会社員。出産のため退職後、専業主婦または扶養内パートタイマー。
- ・子1人の3人家族。
夫・妻ともに大学卒業までの2年間は国民年金に加入し、大学卒業後に就職したときから厚生年金に加入します。
夫はそのまま65歳まで国民年金の第2号被保険者である会社員として働き、妻は30歳で出産のため退職し、国民年金保険料の負担がない第3号被保険者となるイメージです。
妻がパートタイマーとして働き始めたとしても、年間収入130万円未満の扶養内の範囲と仮定しているので、計算は専業主婦である場合と同じです。
なお、このシミュレーションは、2019年度の保険料率・老齢年金額による概算であり、実際に受給する老齢年金額とは異なる可能性があります。
受給する老齢年金額の計算方法
まず、老齢年金額について考えてみましょう。
65歳から受給できる老齢年金は、国民年金から支給される老齢基礎年金に、厚生年金から支給される老齢厚生年金が上乗せされます。
それぞれの老齢年金額を計算してみましょう。
(1)老齢基礎年金
このケースでは、夫・妻ともに20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を支払ったことになるため、それぞれ満額の年間約78万円が受給できます。
(2)老齢厚生年金
老齢厚生年金は、厚生年金に加入していた期間の「報酬比例部分」と「加給年金」を合計した額を受給できます。
さらに具体的に計算していきましょう。
報酬比例部分
報酬比例部分の年金額は、厚生年金に加入していた期間と、その期間の報酬(給与)で計算されます。
今回、給与については、国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」を参考に、夫婦それぞれが前述のとおりの期間、平均的な給与額を受け取ったとして計算します。
日本年金機構の計算式にあてはめて計算すると、今回の場合、報酬比例部分の年金額は、夫は年間約133万円で、妻は年間約14万円となります。
加給年金
加給年金は、厚生年金に20年以上加入し、65歳になった時点で、その方に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算される金額です。
配偶者に対する加給年金には「配偶者が65歳未満であること」という年齢制限があります。ここでは、夫が65歳になったときに、配偶者である妻が63歳のため対象になりますが、加算されるのは妻が65歳になるまでの約2年間だけです。
なお、厚生年金加入者の生年月日によって、配偶者に対する加給年金に特別加算があります。
また、子に対する加給年金は、その年度に18歳になる子(または障害等級1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子)までが対象になります。今回、夫が65歳になる時点で子の年齢は33歳なので、ここでは対象になりません。
支給される加給年金額は、配偶者加給年金額の約22万円と、配偶者加給年金額の特別加算額の約17万円を合計した、年間約39万円になります。
上記より、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合算すると、受給する老齢年金額は次の表のようになります。
表 夫が65歳以降の老齢年金受給額(年間)
※スクロールで表がスライドします。
資料:日本年金機構「年金の受給(老齢年金)」をもとに執筆者作成
夫が65歳のときの老齢年金額を1カ月あたりにすると約21万円、67歳以降のときの老齢年金額を1カ月あたりにすると約25万円です。
なお、総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)平成30年(2018年)」によると、2人以上の1世帯当たり1カ月間の消費支出は、世帯主の年齢が60歳~69歳で約29万円、70歳以上で約24万円です。
今回は統計調査結果を使用して老齢年金額を計算しましたが、日本年金機構「ねんきんネット」で、ご自身の将来の老齢年金見込額を確認することができます。
支給される遺族年金額の計算方法
上記例の世帯で、夫42歳・妻40歳のときに夫が死亡したとして、遺族年金額を計算してみましょう。
今回の場合、妻(専業主婦または扶養内パートタイマー)と10歳の子は死亡した夫によって生計を維持されていたため、妻に「遺族基礎年金+遺族厚生年金」が支給されます。
(1)遺族基礎年金
遺族基礎年金の金額は定額で、妻に対して年間約78万円、子に対する加算として年間約22万円が支給され、年間で合計約100万円となります。
なお、遺族基礎年金は、子が18歳になった年度の末日を過ぎると支給が停止されます。
(2)遺族厚生年金
遺族厚生年金は、夫の平均標準報酬額48万円、夫死亡時の年齢42歳とすると、日本年金機構の計算式にあてはめて、年間約62万円の遺族厚生年金が支給されます。
また、死亡した夫の厚生年金被保険者期間が20年以上であるため、子が18歳になった年度の末日を過ぎて遺族基礎年金が停止された後、妻が65歳になるまでの間は、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算(年間約59万円)が足されます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせて、子が18歳になる年度の末日までは年間約162万円、子が18歳になる年度の翌年度からは年間約121万円が支給されることになります。
夫の厚生年金被保険者期間などにより、支給される遺族年金額が違いますので、注意が必要です。
具体的なシミュレーションの結果をどのように感じたでしょうか。
今回のシミュレーション結果や、ご自身の年金に関する情報を活用して、老後資金やもしもの場合の資金を、どのように準備していくか考えてみてはいかがでしょうか。
こちらの記事も読まれています
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。