2019.12.23
会社員・公務員の厚生年金保険料、知って得する豆知識
給与から天引きされている厚生年金保険料の仕組みについて、熟知している方は多くないでしょう。
会社員・公務員の厚生年金保険料は、基本的に平均給与額をもとに算出されるため、人によって異なります。
このコラムでは、友人と給与や賞与の話題になったときや、転職や退職をするときに、知っておくと役立つ豆知識をご紹介します。
平均給与額1円の差で変わる会社員・公務員の厚生年金保険料
基本的に毎月の厚生年金保険料は、4月~6月の平均給与額を、1~31等級に区分した標準報酬月額に当てはめて算出します。
平均給与額が1円違うだけでも、天引きされる厚生年金保険料の金額は変わることがあります。
例えば、下記の表1のように、4月~6月の平均給与額がほぼ同じであるAさんとBさんがいるとしましょう。
表1 平均給与額による厚生年金保険料の違い(一般・坑内員・船員の方の場合) ※スクロールで表がスライドします。
(注)厚生年金保険料は事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。こちらは被保険者の負担分のみの金額です。
資料:日本年金機構「保険料額表(平成29年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」をもとに執筆者作成
平均給与額が289,999円であるAさんは、標準報酬月額に当てはめると18等級となり、厚生年金保険料は25,620円となります。
一方、平均給与額が290,000円であるBさんは、標準報酬月額に当てはめると19等級となり、厚生年金保険料は27,450円となります。
平均給与額は1円しか変わらないのに、AさんとBさんでは天引きされる厚生年金保険料が月額1,830円変わると分かります。
会社員・公務員の厚生年金保険料は残業手当や通勤手当に左右される
厚生年金保険料の算出に使用される平均給与額は、残業手当や通勤手当を含みます。
そのため、基本給が同じであったとしても、厚生年金保険料は毎年上下することがあります。
(1)遠方への引っ越しで厚生年金保険料アップ
遠方への引っ越しなどで通勤手当が大幅に増えた場合、平均給与額が上がり、厚生年金保険料も上がる可能性があります。
この場合は、通勤手当が増えても、手元に残る給与の金額が増えるわけではないので、厚生年金保険料が上がって負担が増えたと感じるかもしれません。
(2)春から初夏にかけての残業で厚生年金保険料アップ
春から初夏にかけて繁忙期となる方は、厚生年金保険料の負担が大きいと感じることもあるでしょう。
なぜなら、原則として毎年4月~6月の平均給与をもとに、9月からの1年間の厚生年金保険料が決められるからです。
例えば、いつもは残業手当が0円で給与17万円の方が、4月~6月のみ残業手当を含む給与22万円をもらった場合、標準報酬月額22万円(15等級)として厚生年金保険料が計算されます。
その結果、その年の9月から翌年8月まで給与から天引きされる厚生年金保険料は、標準報酬月額17万円(11等級)の場合と比べて月額4,575円上がることになります。
厚生年金保険料が上がることを負担に感じる方もいるでしょう。
しかし、厚生年金保険料が上がると、将来受給する老齢厚生年金の見込み額も上がります。
将来のための貯蓄だと捉えると、前向きな気持ちで保険料を支払えるのではないでしょうか。
会社員・公務員の厚生年金保険料が上がった場合、いつ下がる?
9月になって急に厚生年金保険料が上がったと驚いた方もいるかもしれません。
一度上がった厚生年金保険料は、いつになれば下がる可能性があるのでしょうか。
これまでも触れたように、厚生年金保険料は原則として毎年4月~6月の平均給与額をもとに決定され、その年の9月から1年間適用されるため、再び厚生年金保険料が変動するのは翌年の9月ということになります。
ただし、9月に新しい保険料が適用されたのち、報酬月額に大幅な変動(標準報酬月額の2等級以上)が起きた場合には、随時標準報酬月額の改定が行われ、厚生年金保険料も変動することになります。
そのため厚生年金保険料が下がる可能性がある時期は、毎年9月と、人事異動など大きく給与が変わるタイミングだと覚えておくと良いでしょう。
会社員・公務員が退職した場合、退職月の厚生年金保険料はどうなる?
退職した場合の厚生年金は「退職した日の翌日に被保険者資格を喪失し、保険料は資格喪失日が属する月の前月分まで支払うこと」となっています。
つまり、月の途中で退職すると、退職月は新たに公的年金に加入して年金保険料を支払う必要が出てくるのです。
下記の表2を参考に、退職後の状況に応じて、退職月の年金保険料を支払いましょう。
表2 退職月の年金保険料の主な支払い方法(月の途中で退職した場合) ※スクロールで表がスライドします。
資料:執筆者作成
退職後に国民年金の第1号被保険者となる場合は、お住まいの市区町村の役所にて、加入手続きをする必要があります。
たとえ翌月から新しい職場で第2号被保険者となることが決まっていても、月の途中で退職したときには、退職月の年金保険料が未払いとならないよう、忘れずに手続きや支払いをするようにしましょう。
また、国民年金の第3号被保険者となる場合は、配偶者の勤務先を通して書類を提出する必要があります。
こちらの場合も、手続きをしないと退職月の年金保険料が未払いとなってしまうので、忘れずに覚えておきましょう。
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