2020.01.15
会社員・公務員の遺族年金 誰がいつまで受給できるの?
公的年金制度には、保険の役割があることはご存じでしょうか?
年金保険料を支払い続けることで、自分が将来老齢年金を受給できるだけでなく、万一のときには、残された家族に対して「遺族年金」が支給されます。
このコラムでは、遺族年金を受給することができる遺族について解説していきます。
家計を支えている家族が亡くなったとき、「誰が」「いつまで」遺族年金を受給することができるのかをしっかりと確認しましょう。
遺族年金の種類によって対象の遺族の範囲が異なる
公的年金制度に加入している方が亡くなった場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金のいずれか、または両方の遺族年金が支給されます。
下の図に示した通り、遺族基礎年金は、子どもがいる配偶者や子どもに限って支給されます。
それに対して、遺族厚生年金は、子どものいない妻や夫、孫、父母、祖父母も支給の対象となります。
また、遺族年金を受給するためには、「亡くなった被保険者の方に生計を維持されていた」ことが必要です。
具体的には、下記の2つの要件を満たすがあります。
図2 遺族年金受給の生計維持に関する要件
- 被保険者の方と同居していたこと
- 前年の年収が850万円未満であること
資料:執筆者作成
ただし、別居している場合でも、仕送りをしていることや健康保険の扶養親族であることなどの事項があれば認められます。
遺族が複数名いる場合には、最も優先順位が高い遺族が遺族年金を受給することができます。
遺族年金の受給要件は?いつまで受給できる?
遺族年金を受給できるかどうか、いつまで受給できるのかは、生計を維持していた被保険者の方が亡くなった当時の「遺族の年齢」や「子どもの年齢」が基準となって決まります。
遺族年金の支給対象となる遺族ごとに、詳しく解説していきます。
(1)子ども、孫が受給する場合の遺族年金の受給要件と期間
被保険者が亡くなったときに、18歳になる年度の末日(障害等級1級・2級の障害の状態にある場合は20歳未満まで)を経過していない子どもは、亡くなった方が国民年金の被保険者であれば遺族基礎年金の、また亡くなった方が厚生年金の被保険者であれば遺族基礎年金と遺族厚生年金両方の支給対象者となります。
なお、同じ年齢の孫も、遺族厚生年金のみですが、支給対象者となります。
受給開始後、受給対象となる年齢を過ぎると、遺族年金は支給停止となります。
その他、受給対象となる年齢の期間内であっても、婚姻した場合や養子縁組をした場合にも支給停止となります。
(2)妻が受給する場合の遺族年金の受給要件と期間
遺族年金の受給要件は、被保険者である夫が亡くなったときの子どもの有無や、当時の年齢によって、支給の有無や期間が異なります(下記の表1参照)。
表1 妻が受給する場合の遺族年金の受給要件と期間
※スクロールで表がスライドします。
※「子ども」とは、18歳になる年度の末日(障害等級1級・2級の障害の状態にある場合は20歳未満まで)を経過していない者。
※中高齢寡婦加算とは、夫が亡くなったときに40歳~65歳未満で生計を同じくしている子どものいない妻に対する加算。
資料:執筆者作成
子どものいる妻や、30歳以上の子どものいない妻に支給される遺族厚生年金は、再婚などによって受給権がなくならない限り、一生涯受給することができます。
一方、子どもがいない30歳未満の妻の場合は、5年間の有期給付となるため、大きな差があるといえます。
(3)夫が受給する場合の遺族年金の受給要件と期間
遺族年金の受給要件は、被保険者である妻が亡くなったときの子どもの有無や、当時の年齢によって、支給される遺族年金の種類や期間が異なります(下記の表2参照)。
表2 夫が受給する場合の遺族年金の受給要件と期間
※スクロールで表がスライドします。
※「子ども」とは、18歳になる年度の末日(障害等級1級・2級の障害の状態にある場合は20歳未満まで)を経過していない者。
資料:執筆者作成
夫の場合は、妻の場合と比べて遺族厚生年金を受給できる要件が厳しくなっています。
そのため、妻が一家の大黒柱である場合には、民間の生命保険や貯蓄などで、万一のときに備えておくことをおすすめします。
(4)父母、祖父母が受給する場合の遺族年金の受給要件と期間
父母や祖父母は、亡くなった方が厚生年金の被保険者であった場合に限り、支給対象者となります。
父母や祖父母が遺族厚生年金を受給するためには、被保険者が亡くなった当時に父母や祖父母が55歳以上であることが要件となります。
そして、父母や祖父母が60歳までは受給権が停止されるため、実際に遺族年金を受給できるのは60歳から一生涯となります。
遺族基礎年金の受給要件を満たさない場合は?
国民年金の被保険者が亡くなり、遺族が遺族基礎年金の受給要件を満たさない場合でも、「寡婦年金」や「死亡一時金」といった給付を受けられる可能性があります。
図3 寡婦年金
夫が死亡したときに、夫(国民年金の第一号被保険者)と10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して、60歳から65歳になる前までの5年間支給される有期年金
資料:執筆者作成
図4 死亡一時金
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受給することがないまま亡くなった場合、遺族に支払われる給付金(年金ではなく一時金)
資料:執筆者作成
ここまで、遺族基礎年金と遺族厚生年金について、受給できる遺族の範囲や年齢要件、受給できる期間について紹介しました。
遺族を支えてくれる可能性のある遺族年金は、万一のときには強い味方となるでしょう。
遺族年金を受給できる遺族について理解ができたら、次回のコラムでは、遺族基礎年金や遺族厚生年金の受給額について解説していきますので、確認してみましょう。
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