差額ベッド代
病気やケガにより入院や手術をしても、医療費は健康保険により3割負担になりますし(年齢や所得によって自己負担割合が変わってきます)、高額療養費制度によっても自己負担額を抑えることができます。
ただし、条件の良い個室等を使うと使用料が発生し、入院費用に大きな影響を与えることになります。
1.差額ベッド代の意味
病院に入院すると通常は6人部屋等の大部屋になり、この場合は特別な自己負担が発生することはありません。
ただし、条件が良い個室等に入院すると、大部屋との差額料金である差額ベッド代を自己負担する必要があります。
差額ベッド代は健康保険や高額療養費制度の適用対象外になりますので、入院費用が増加する一因になります。
差額ベッド代は1人部屋だけではなく、4人部屋でも必要になる病院があります。
2.差額ベッド代の現状
厚生労働省の調べでは1日平均の差額ベッド代は、1人部屋7,478円、2人部屋3,043円、3人部屋2,704円、4人部屋2,325円となっています(平成24年7月1日現在)。
また、差額ベッド代の相場は以下の表になり、かなり差異があるのがわかります。
一般的によく言われる差額ベッド代は1日1万円ですが、表によると10,500円以上必要なのは1割強しかないというのが現状です。
ただし、長期入院になれば差額ベッド代が膨らみ自己負担増になると言えるでしょう。
表:差額ベッド代の相場
1,050円以下 | 11.2% |
1,051円~2,100円 | 15.8% |
2,101円~3,150円 | 15.0% |
3,151円~4,200円 | 9.4% |
4,201円~5,250円 | 13.0% |
5,251円~8,400円 | 16.0% |
8,401円~10,500円 | 7.5% |
10,501円~15,750円 | 7.1% |
15,751円~31,500円 | 4.4% |
31,501円超 | 0.7% |
資料:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」(平成25年9月)をもとに執筆者作成
3.差額ベッド代の注意点
個室に入院すれば必ず差額ベッド代が必要というわけではありません。
もちろん、患者が望んだ場合や差額ベッド代が必要になる旨の説明を受け、納得した上で同意書にサインした場合は必要になります。
しかし、患者の意思に関わらず個室での治療が必要であるとか、院内感染を防ぐため等、病院側の都合で個室に入院した場合は、差額ベッド代の負担は必要ありません。
緊急対応以外の場合では、病院の差額ベッド代の説明をしっかり聞き、判断することが大切です。
4.考え方
差額ベッド代がかかるかかからないかで、1日あたりの入院費は大きく変わってきます。
医療保険加入に際し、差額ベッド代も保険に頼りたい場合は、1日あたりの入院給付金額は多めにしておいた方が安心でしょう。
また、経営者や自営業の方で、入院しても病室から部下に業務の指示を行うような場合は、6人部屋等では難しいので、あらかじめ差額ベッド代も考慮して医療保険を検討した方が良いでしょう。
5.まとめ
私が相談対応をしている中では、医療保険を検討する際、会社員の方では差額ベッド代までは考慮しないという方が多いですが、経営者や自営業の方は大部屋では仕事の話がしにくいですから差額ベッド代を気にされる方が多いように思います。
また、職業に関わらず、がん等の重い病気で入院する場合は、より良い環境で治療に専念したいと考え、差額ベッド代分を上乗せして医療保険の入院給付金日額を決める方もいます。
差額ベッド代は、自ら希望した場合のみ支払う必要がありますので、病院側からの事前の説明をしっかり聞き、わからない点は必ず確認するようにしましょう。
自分自身で差額ベッド代を含めた医療保険の考え方や選択をするのは難しいと感じる方は、一度専門家に相談してみるのも良いでしょう。
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コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
この記事も参考に
掲載日:2019年8月27日
部屋別の平均的な差額ベッド代
表1 平均的な差額ベッド代(2017年)
部屋の種類 | 金額 |
---|---|
1人部屋 | 7,837円 |
2人部屋 | 3,119円 |
3人部屋 | 2,798円 |
4人部屋 | 2,440円 |
※全国平均のため、地域や病院、条件の良い個室を選択した場合は、さらに差額ベッド代がかかる可能性があります。
資料:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」(平成30年11月)をもとに作成
上表によると、2017年の1人部屋の差額ベッド代の平均は7,837円です。
仮に、30日間の入院を全て1人部屋で過ごした場合、約24万円の差額ベッド代が発生することになります。
また、30日間の入院を全て4人部屋で過ごした場合、約7万円の差額ベッド代が必要になることが予想できます。
もし、どうしても個室が良い、できれば少ない人数の部屋が良い、という要望がある人は、「実費補償型」の医療保険を検討しても良いでしょう。
実費補償型の医療保険は、入院の治療費に加えて、主契約として差額ベッド代や入院時の生活費、諸費用等が補償できたり、オプションとして付帯できたりします。
掲載日:2019年11月11日
差額ベッド代の費用は医療費控除の対象になる?
差額ベッド代の費用が、理由によっては医療費控除の対象にならないことをご存じでしょうか。
本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッド代の費用は、医療費控除の対象にはなりません。
また公的医療保険制度のひとつである、高額療養費制度の対象外のなかにも、差額ベッド代の費用があります。
長期入院が必要な場合や、プライバシーを守りたい場合は、差額ベッド代の費用を支払ってでも個室に入りたいと思うことがあるのではないでしょうか。
なぜなら、プライバシーが守られている普段の生活環境から、プライバシーが守られていない環境に入院となれば、精神的にもつらい思いをする可能性があるからです。
表2 差額ベッド代の相場(2017年)
1,080円以下 | 10.2% |
1,081円~2,160円 | 14.9% |
2,161円~3,240円 | 14.9% |
3,241円~4,360円 | 8.9% |
4,361円~5,400円 | 13.3% |
5,401円~8,640円 | 17.2% |
8,641円~10,800円 | 7.7% |
10,801円~16,200円 | 7.7% |
16,201円~32,400円 | 4.4% |
32,401円~54,000円 | 0.7% |
54,001円~108,000円 | 0.1% |
108,001円超 | 0.0% |
資料:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」(平成30年11月)をもとに作成
表2をみると、差額ベッド代の相場は、17.2%の5,401円~8,640円となります。
例えば8,640円で計算した場合、入院日数が長くなればなるほど負担は重くなるでしょう。
プライバシーが守られている個室に入院したいけれど、お金の負担が心配な方は、民間の医療保険への加入を検討することをおすすめします。