学資保険を知るための6つの視点 第6回 育英年金の特徴
はじめに
「学資保険を知るための6つの視点」最終回は、「育英年金」についてみていきます。
育英年金は学資保険に特約等で付加できるもので、契約者(保護者)が万一の場合に満期までの期間、毎年一定の年金が受け取れるというものです。この特約を付加することによって、保障は充実します。
しかし、保障機能が充実しているために、返戻率(保険金総額÷払込保険料総額×100(%))は下がります。
以下、育英年金の仕組みと特徴を、公的な遺族保障の仕組みを参考にしながら、みていきます。
育英年金の仕組み
学資保険には、契約者(保護者)が万一の場合、以後の保険料は免除する「保険料免除特則」が主契約で用意されています。育英年金は、そこから一歩踏み込んで、契約者(保護者)が万一の場合、満期まで毎年一定の年金を保障します。
保険会社により、
- 特約として用意
- セット商品として育英年金の入ったセットと入っていないセットを用意
- 育英年金を特約のラインナップに用意していない
など、取り扱いはさまざまです。
また、毎年の年金額についても、満期学資保険金と同額の保険会社、満期学資保険金の何%と設定している保険会社等があり、また、契約者(保護者)が三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)で保険会社の定める所定の状態になったときにも、育英年金が受け取れる特約を用意している保険会社もあります。
それでは、育英年金の付加を考える前に、国の遺族保障の内容を理解しておきましょう。
国民年金に加入している自営業の方等(第1号被保険者)が万一の場合には、「遺族基礎年金」が支給されます。
会社員の方等(第2号被保険者)が万一の場合には、遺族基礎年金にプラスして「遺族厚生年金」も支給されます。
遺族基礎年金について
遺族基礎年金の支給対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた、
- 子のある配偶者
- 子
になります。
ここでいう「子」の要件は、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、および障害年金の障害等級1級または2級の20歳未満の子になります。
年金額は、「772,800円+子の加算額」になり、第1子・第2子は各222,400円、第3子以降は各74,100円になります。
妻と子2人の場合、1,217,600円(772,800円+222,400円×2人)が年金として支給されます(平成26年4月分から)。
なお、死亡された方が国民年金保険料を滞納していないこと等といった、支給要件があります。
遺族厚生年金について
会社員の方等の第2号被保険者の場合、上記の遺族基礎年金にプラスして遺族厚生年金が支給されます。遺族厚生年金では、死亡した者によって生計を維持されていた、配偶者と子、父母、孫、55歳以上の夫等、支給対象者の範囲が広がります。
支給金額は、死亡された方の収入により異なります。また、厚生年金の加入期間が300月(25年)に満たないときには、300月として支給額を計算します。
原則、下記の計算式を用います。
(1)「(平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×3/4」
ただし、上記(1)の式によって算出した額が、下記(2)の式によって算出した額を下回る場合は、(2)の式によって算出した額になります。
(2)「(平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×1.031×0.961×3/4」
例えば、平成16年4月に会社員になった人が、妻と二人の子どもを残し、平成25年3月に亡くなったとします。それまでの平均月収(平均標準報酬額)が30万円としますと、上記(2)の式で算出した額が上回るため、
年間 約38万円(30万円×5.769/1000×300月×1.031×0.961×3/4)
が、遺族厚生年金として支給されます(厚生年金加入期間は108月で300月に満たないため、300月で計算)。
先述した遺族基礎年金と合わせると、
約159万円(約121万円+約38万円)
になります。
また、遺族厚生年金は、遺族基礎年金と異なり、子が18歳到達年度の末日(3月31日)(障害年金の障害等級1級または2級の場合は20歳)を経過した場合でも、妻に対して支給が続きます。なお、遺族基礎年金と同様に、保険料滞納がない等といった支給要件があります。
以上、国の遺族保障についてみてきました。
まとめ
学資保険に育英年金を付加するかどうかを判断するにあたっては、
- 学資保険加入の目的は貯蓄重視なのか、それとも保障重視なのか?
- 遺族基礎年金、遺族厚生年金の年金額で教育資金を準備できないか?
- 他に加入している生命保険等の保険金や、預貯金等の貯蓄で、教育資金の準備ができているのではないか(保障が重複していないか)?
の3つの観点から、判断してみてはいかがでしょうか。
そして、育英年金を付加する場合には、前回「学資保険の税金と控除」で触れましたように、年金の受取人を子どもに設定した場合、金額によっては親の扶養から外れてしまうこと等が起こるため、年金の受取人を誰にするか等も考えて選択するようにしましょう。
以上、「学資保険を知るための6つの視点」というメインテーマに沿って、
- 「第1回 学資保険の必要性について」
- 「第2回 学資保険 VS 積立式定期預金 どっちを選ぶ?」
- 「第3回 学資保険の加入率と選ぶときのポイント」
- 「第4回 学資保険、同額の保険料で返戻率を上げるには」
- 「第5回 学資保険の税金と控除」
- 「第6回 育英年金の特徴」
と、全6回に分けてみてきました。
学資保険を選ばれる際に、それぞれのコラムを参考にしていただければ幸いです。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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