子どもにかかる教育費の目安3(高等学校)
高校の教育費も、公立に進むか私立に進むかで変わります。文部科学省の「平成28年度子供の学習費調査」によると、高校1年間の「学習費総額※」平均金額は、公立に通う場合は約45.1万円なのに対し、私立は約104.0万円です。さらに大学に進学する場合は、高校3年生のうちに大学の入学費用などがかかってきます。ここでは高校でかかる教育費についてご紹介します。
※学習費総額とは、子どもを公立または私立の学校に通学させている保護者が子どもの学校教育および学校外活動のために支出した経費の総額。
高校でかかる教育費のポイント
ポイントとして次の3点が挙げられます。
- (1)公立と私立の教育費の中身と違い
- (2)大学進学の場合は、学習塾の費用と入学費用に注意
- (3)国からの修学支援の変化
(1)公立と私立の教育費の中身と違い
1.高校の教育費は公立と私立とで約2.3倍の差があります。
図1 高校3年間総額での比較
資料:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成
※学校教育費とは、学校教育のために各家庭が支出した全経費。授業料など学校が一律に徴収する経費の他、必要に応じて各家庭が支出する経費(学用品費、クラブ活動費、通学費、通学用品費など)の合計。
※学校外活動費とは、補助学習費(家庭内学習費・家庭教師費・学習塾費など)とその他の学校外活動費(習い事や体験活動のための費用など)の合計。
高校でかかる費用は、1カ月あたりの負担額で考えると、公立が約3.8万円、私立は約8.7万円が平均額となります。3年間の平均額を合計すると公立では約135.1万円、私立は約311.0万円です。教育費において、私立は公立のおよそ2.3倍にもなります。
2.学年別でかかる費用
公立と私立、それぞれの学年別の教育費平均金額を見てみましょう。
図2 学年別教育費
資料:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成
高校では、公立も私立も1年生の教育費が一番多くなっています。入学時に必要な、教科書費・学用品費・教科外活動費・制服費などの費用が高くなっているためです。
また、学年が上がるにつれ、全体的に教育費の負担が少なくなっているように見えます。しかし、注意しなければならないのは、この教育費の額は大学進学をしない生徒も含めての平均ということ。文部科学省「平成29年度学校基本調査」では、大学・短大への進学率(現役)は54.8%となっています。進学しない生徒であれば、学習塾などの費用はあまりかからないと考えられます。大学進学を希望する場合は、平均より多く費用がかかる可能性が高いので注意しましょう。
(2)大学進学の場合は、学習塾の費用と入学費用に注意
1. 高校3年生のうちにかかる大学進学に必要なお金
大学進学を希望する場合、3年生のうちに大学受験用の学習塾の費用に始まり、受験費用、大学入学金や納付金など、多くの費用がかかります。これらの費用のうち学習塾以外の費用は、文部科学省の「子供の学習費調査」には含まれていないため、注意点も含めご紹介します。
2.受験に向けてかかる学習塾の費用
塾に通う場合でも、塾選びや教科数・授業数・夏期講習や冬期講習を受けるか・模試の受験回数などによって費用は異なります。平成28年度子供の学習費調査では、高校3年生の学校外活動費は、公立の場合は年間約20.1万円、私立の場合は年間約33.4万円となっています。この調査結果は大学進学しない生徒を含む平均のため、大学進学のために塾などに通うのであれば、これらの平均を上回ると考えられます。自宅から通うことのできる塾などの費用を目安に備えておきましょう。
3.入学費用
日本政策金融公庫「平成29年度教育費負担の実態調査結果」では、受験費用(受験したすべての学校・学部にかかる受験料、受験のための交通費・宿泊費)、学校納付金(入学金、寄付金など)、入学しなかった学校への納付金などをあわせ、入学費用として算出しています。この費用は図3のように、進学する大学が国立か私立かで異なり、私立では学部でも違いがあります。
図3 入学費用の違い
資料:日本政策金融公庫「平成29年度教育費負担の実態調査結果」をもとに執筆者作成
4.大学初年度授業料
高校3年生のうちに、大学初年度の授業料も全額ではないにしても納入しなければならないことがあります。
5.新生活の準備費用
親元から離れ自宅外通学を始める場合、一般的にアパートの敷金や家財道具の購入費などが必要になります。平成29年度教育費負担の実態調査結果によると、1人あたり平均37.5万円がかかっています。
日本学生支援機構の奨学金を利用するとしても、予約採用されても実際に奨学金が入金されるのは大学入学後となりますので、高校3年生の時点で現金を確保しておきましょう。大学進学費用の支払いを目的として、学資保険で用意をされているご家庭も多いかと思われますが、学資金(祝い金や満期保険金)の受取時期が支払いに間に合うかどうか確認しましょう。
(3)国からの修学支援の変化
高等学校等就学支援金制度とは
高校の授業料には、国の支援制度があります。正式には「高等学校等就学支援金」という名称です。所得制限がありますが、公立高校の生徒には、支援金が年額11万8,800円(月額9,900円)支給されます。私立高校にも補助があり、私立の方が全体に教育費が高くなるため、ご家庭の収入に応じて年額17万8,200円~29万7,000円の支給があります。
高校生への修学支援制度は、平成22年度からスタートした制度で、平成26年度からは、所得制限も導入されています。このように、高校生の修学支援制度は変化してきています。また、平成32年度(平成33年度入学者選抜)にはセンター試験が変わります。変化する情報もタイミングよく正しく収集しましょう。
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コラム執筆者プロフィール
加藤 葉子 (カトウ ヨウコ) - 女性とシングルマザーのお金の専門家
- 離婚を機にお金の勉強を始め、3年間で子どもの教育費を貯める。自身のブログ「女性とシングルマザーのお金の話」に全国の女性から切実なお金の相談が寄せられ、NHKのWEBコラム執筆を機に独立。3年間で1,500件以上の相談を受けている。現在は、女性ファイナンシャルプランナーのための実務講座やオンライン講座を配信中。
マイライフエフピー代表
ファイナンシャルプランナー 加藤 葉子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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