学資保険を知るための6つの視点 第5回 学資保険の税金と控除
はじめに
今回は、学資保険の保険金を受け取ったときにかかる税金と、所得控除の1つである生命保険料控除についてみていきます。
なお、本文中の「育英年金」については、第6回でその内容や必要性について詳しくみていきます。では、最初に保険料の控除について解説します。
保険料の控除について
学資保険の保険料は、生命保険料控除の対象になります。学資保険以外に生命保険料控除の対象になる保険契約としては、生命保険、生命共済、医療保険、がん保険等があります。それらの保険の年間正味払込保険料を合算して、表1、表2により、所得税・住民税それぞれの控除額を計算します。
表1 所得税の生命保険料控除額(平成24年1月1日以後に締結された保険契約に適用)
年間正味払込保険料 | 控除される金額 |
---|---|
20,000円以下 | 年間正味払込保険料の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 年間正味払込保険料×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 年間正味払込保険料×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
資料:国税庁ホームページをもとに執筆者作成
表2 住民税の生命保険料控除額(平成25年度分以後)
年間正味払込保険料 | 控除される金額 |
---|---|
12,000円以下 | 年間正味払込保険料の全額 |
12,000円超32,000円以下 | 年間正味払込保険料×1/2+6,000円 |
32,000円超56,000円以下 | 年間正味払込保険料×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
資料:各自治体ホームページをもとに執筆者作成
ただし、平成22年度の税制改正にともない、生命保険料控除制度が改正されたため、この改正が適用される平成23年12月31日以前に締結した保険契約は、表1、表2の控除額の計算方法とは異なります。
平成23年12月31日以前の保険契約は、「生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2区分で控除されますが、平成24年1月1日以降の保険契約は、上記の2つに加え「介護医療保険料控除」が新設され、3区分になりました。
これにより、生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の3つの控除を合わせた最大控除額は、所得税が12万円、住民税が7万円になりました。控除対象となる保険契約の中に、平成23年12月31日以前の契約があったとしても、制度全体の最大控除額は変わりません。
学資保険の満期金に係る税金について
満期時に受け取る学資保険の保険金は、所得税の対象になります。また、保険金の受け取り方により税の区分が異なります。以下、契約者と保険金受取人が同一の場合でみていきます。
1.学資保険金を一括受取にした場合は、一時所得として、
「一時所得の金額=(学資保険金-支払った保険料-50万円(特別控除))×1/2」
で計算されます。他に一時所得がある場合は、合算して計算します。
2.学資保険金を学資年金という形で、大学入学時、大学2年、3年、4年と分けて受け取った場合等は、雑所得として、
「雑所得の金額=その年の年金受取額-必要経費(※)」
※必要経費=その年の年金受取額×(支払った保険料総額÷年金の受取総額見込額)
で計算されます。雑所得の場合も、他に雑所得があれば合算して計算します。
学資保険金は、1.の一時所得に該当するものがほとんどです。
一時所得の場合、特別控除50万円があり、さらに課税対象になるのは、一括受取をした保険金から、支払った保険料と特別控除50万円を差し引いた金額の1/2です。保険金の額をよほど高く設定しなければ、課税対象になることは無いかと思われます。
次に、契約者と受取人が異なる場合をみていきます。契約者が父、受取人が子という場合は、贈与税の対象になります。
課税金額は、
「贈与の課税価格=学資保険金(贈与金額)-110万円(基礎控除)」
となります。
こちらも他の贈与があれば、合算して計算します。一般的に、贈与税の対象にならないように、受取人を子どもにするのはやめた方がよいでしょう。
子どもの死亡保険金に係る税金ついて
契約者と保険金受取人が同一の場合、一時所得扱いになります。
多くの学資保険で、死亡保険金の額を払済保険料相当額としています。死亡保険金が課税対象になるケースは、ほとんど無いでしょう。
育英年金に係る税金について
育英年金特約を付加することにより、契約者が万一の場合に残された遺族に対して、満期まで「育英年金」が支払われます。育英年金の場合は、年金受給権に対して相続税がかかります。
満期まで毎年受け取る育英年金については、雑所得になります。
育英年金の受取人を子どもに設定した場合、その子どもの所得が育英年金と合わせて38万円を超えると、所得税の対象になります。その場合、子どもは母親の扶養親族から外れ、児童手当等の自治体からの給付が受けられなくなります。そのため、育英年金特約の付加については、慎重な検討が必要です。
最後に
以上、学資保険の税金と控除についてみてきました。今回のコラムでは、育英年金にかかる税金の扱いが難しいかと思います。
第2回、第3回のコラムでも触れましたが、学資保険を選ぶときのポイントとして返戻率を1位にあげる方が多く(返戻率については第4回コラムで解説しています)、貯蓄性を重視して学資保険を選ばれる傾向にあります。しかし、一般的に、貯蓄性に優れた学資保険は保障面が手薄であることが多いです。
保障を充実させるには、学資保険と併用して子どもの就学期間に合わせて、親(保護者)が定期保険に加入するのも一案です。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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