学資保険を知るための6つの視点 第4回 学資保険、同額の保険料で返戻率を上げるには
はじめに
今回は、学資保険を選ぶにあたって、加入者の方が最も重視している「返戻率」についてみていきます。
前回のコラム「学資保険を知るための6つの視点 第3回 学資保険の加入率と選ぶときのポイント」でも紹介いたしました、「10歳未満の子ども(生まれていない子も含む)がいる20代~50代の男女を対象にした学資保険に関するアンケート調査」(実施:NTTコム リサーチ 期間:平成25年6月26日~平成25年7月1日)によりますと、約9割の方が学資保険を選ぶポイントの第1位に返戻率を挙げています。
返戻率とは
返戻率とは、支払った保険料に対して、受け取れる保険金総額の割合になります。
式で表しますと、
返戻率=保険金総額÷払込保険料総額×100(%)
になり、この割合が高いほど貯蓄性が高くなります。また、返戻率が100%未満の場合は「元本割れ」となります。
しかし、保険料の中には特則、特約(保険料払込免除、医療特約等)の保険料が含まれている場合もありますので、単純な貯蓄とは違ってきます。
同じ20歳満期の保険でも、払込期間の違いで返戻率は変わる
払込保険料総額を240万円として、「20歳払済」と「15歳払済」を比較してみましょう。
保険の満期は20歳とし、返戻率を計算してみます。保険契約は子どもが0歳の時、保険金は満期に全て受け取り、利率は年1%、支払方法は年払とします。
「20歳払済」の場合の返戻率は、
年間保険料:2,400,000円(払込保険料総額)÷20年(払込期間)=120,000円
保険金総額:120,000円(年間保険料)×22.0190(年金終価係数※1)=2,642,280円
返戻率:2,642,280円(保険金総額)÷2,400,000円(払込保険料総額)×100(%)=約110.1%
「15歳払済」の場合の返戻率は、
年間保険料:2,400,000円(払込保険料総額)÷15年(払込期間)=160,000円
保険金総額:
【15歳までの期間】160,000円(年間保険料)×16.0969(年金終価係数)=2,575,504円
【15歳から20歳までの期間】15歳時点の金額を元本に1%で複利運用
2,575,504円×1.0510(終価係数※2)=約2,706,855円
返戻率:2,706,855(保険金総額)÷2,400,000円(払込保険料総額)×100(%)=約112.8%
となり、払込期間の短い15歳払済の返戻率の方が高くなります。
※1 年金終価係数とは、一定期間に複利運用で一定金額を積み立て続けた場合に、将来いくらになるかを計算するために使う係数で、利率と期間によって決まります。毎年の積立額に年金終価係数をかけると、将来の総積立金額を求めることができます。
※2 終価係数とは、現在保有している元本を一定期間に一定の利率で複利運用した場合に、将来いくらになるかを計算するために使う係数で、利率と期間によって決まります。
保険金の受取回数を増やしたら
上記の「15歳払済」の条件で、15歳時に祝金などとして保険金30万円を受け取ったケースを考えてみます。
15歳時までの保険金原資は、
160,000円(年間保険料)×16.0969(年金終価係数)=2,575,504円
となります(上記と同じ)。
ここで、保険金30万円を受け取りますので、20歳までの保険金原資は、
2,575,504円-300,000円=2,275,504円
となり、
保険金総額:2,275,504円×1.0510(終価係数)=約2,391,555円
返戻率:(2,391,555円+300,000円)÷2,400,000円(払込保険料総額)×100(%)=約112.1%
となり、受取回数を増やすことにより返戻率が下がります。
万一の保障と返戻率の関係
上記2つの例では、返戻率の説明をシンプルにするため、保険料に含まれる保障部分の金額を考慮せずに、返戻率の比較を行いました。ここからは、保障部分の割合を設定して返戻率の変化をみていきます。
※保障部分の割合については、一例であり、実際の学資保険とは異なります。
保険料に占める保障部分の割合が20%の場合、他の条件は「15歳払済」と同じとすると、年間保険料160,000円のうち、保険金の原資は、
160,000×(1-0.2)=128,000円
となります。
これを、「15歳払済」の場合の返戻率の求め方と同様に計算しますと、
【15歳までの期間】128,000円×16.0969(年金終価係数)=約2,060,403円
【15歳から20歳までの期間】15歳時点の金額を元本に1%で複利運用
保険金総額:2,060,403円×1.0510(終価係数)=約2,165,484円
返戻率:2,165,484円÷2,400,000円(払込保険料総額)×100(%)=約90.2%
となり、保障をつけない場合の返戻率「約112.8%」と比較すると、万一の保障の保険料分(20%)だけ返戻率が下がります。
また、特約で育英年金等を付加した場合も、特約部分が保障にあたる保険料になりますので、同じように返戻率が下がります。
最後に
今回は、同額の保険料で返戻率を上げる方法として、
- 保険料の払込期間を短くする。
- 満期までに複数回に分けて保険金を受け取らない。
- 万一の保障を厚くしない。
の3つを紹介させていただきました。
多くの保険会社では、1.2.について、いくつかのタイプが用意されています。また、3.については特約をどうするか(付加するか、しないか)等の選択ができます。
以上、返戻率の仕組みを理解いただき、学資保険を選ぶ際の一助にしていただければ幸いです。
次回は、「学資保険を知るための6つの視点 第5回 学資保険の税金と控除」についてみていきます。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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