厳しい貯蓄状況1
子育て期のご家庭では、子どものための支出が何かと増えがちですが、子どもの進学費用などに備えて、うまく支出をコントロールして貯蓄を増やしていきたいところです。子育て期のご家庭の平均的な貯蓄状況をみていきましょう。
児童のいる世帯の貯蓄状況
厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」をみると、児童のいる世帯の1世帯あたりの平均所得金額は約708万円で、全世帯平均の約546万円を160万円以上も上回っています。ところが、1世帯あたりの平均貯蓄額をみると、児童のいる世帯が約680万円なのに対し、全世帯では約1,033万円と、児童のいる世帯の方が少なくなっています。
図1 児童のいる世帯の貯蓄額の分布
※熊本県を除いた数値
資料:厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」をもとに執筆者作成
また、児童のいる世帯は、平均貯蓄額が約680万円となっていても、貯蓄額の分布をみると非常にばらつきがあり、最も多いのは貯蓄がない層で14.6%、貯蓄がない~貯蓄400万円未満の層で合計50.0%になります。他方で、貯蓄額1,000万円以上の層も19.1%を占めています。
児童のいる世帯の貯蓄がマイナスになる理由
(1)前年より貯蓄が増えたのは2割弱
図2 児童のいる世帯の貯蓄の増減状況(前年比)
※熊本県を除いた数値
資料:厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」をもとに執筆者作成
平成28年国民生活基礎調査によると、児童のいる世帯では、前年と貯蓄額が変わらない層、貯蓄が減った層がそれぞれ4割弱を占めています。残りの2割弱のみが貯蓄が増えた層となっていて、なかなか思うように貯蓄を増やせていない状況を示しています。
(2)生活費の不足を補うため貯蓄を減らすことも
貯蓄が減ったと回答した児童のいる世帯のうち、約67.2%が「日常の生活費への支出」を貯蓄が減った理由として挙げています(複数回答)。日々の生活費が月々の収入で賄えず、貯蓄を切り崩して生活していることがわかります。日常の支出が把握できていない、多すぎると感じている場合は月々の収入の範囲内におさまるよう家計の見直しが必要です。
(3)マイナスの理由を把握することが大切
他に貯蓄が減った理由をみると、「入学金、結婚費用、旅行等の一時的な支出」が36.8%、「土地・住宅の購入費」が10.4%となっていますが、予定通りの支出であれば心配はないものと考えられます。例えば、子どもの私立中学入学に備えて積み立ててきた預貯金から入学金を支払ったという場合、条件に合う物件が見つかったので別に確保していた住宅購入資金から頭金を支払った場合ならば、支出の管理ができているといえます。
子育て期のご家庭であれば、ある年は上の子どもの進学費用で貯蓄を減らし、翌年は順調に貯蓄を増やせたとしても、その次の年は下の子どもの進学でまたその貯蓄を減らすというようなことの繰り返しになる場合があります。
時期をずらせない子どものイベントの時期や支出を想定し、貯蓄をしていくようにすれば、貯蓄の増減だけで一喜一憂することが少なくなります。
教育費の貯めどきを把握しよう!
子育て期は時間に追われがちで、子どもはいつの間にか成長しているものです。教育費は支出の時期が既にほぼ決まっていることをしっかり認識して、貯蓄を意識していきましょう。
図3 小学校から高校まで公立、大学は国公立に通った場合の教育費支出
資料:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」、日本政策金融公庫「平成29年度教育費負担の実態調査結果」をもとに執筆者作成
(1)大学進学時の費用を知っておこう
図3は、小学校から高校まで公立、大学は国公立に通った場合の教育費の1学年ごとの平均額をまとめたものです。大学進学しなければ大学関連の費用は必要ありませんから、教育費は大学進学をするかしないかで大きく違ってきます。一方、大学進学を希望する場合は、高校3年生の時点で受験費用・入学金など大学への納付金・入学しなかった学校への納付金など、入学関連費用の支払いが必要になります。また入学後卒業まで授業料・通学費など在学費用もかかります。日本政策金融公庫「平成29年度教育費負担の実態調査結果」によると、国公立大学へ進学した場合の入学関連費用は平均約69.2万円、在学費用は年間で平均約108.5万円となっています。
(2)貯めどきは子どもが中学2年生まで
教育費は、ご家庭の考え方、子どもの進路によって大きな差がでるところですが、一般的に子育て期のご家庭の貯めどきは子どもが小学生から高校受験を迎える前の中学2年生までの間になります。未就学児の間は保育料が世帯の収入によって差が大きいため一概にいえませんが、公立小学校・中学校は費用が抑えられています。大学進学を希望する高校生ならば、学習塾などの費用が1年生・2年生のうちからかかり、教育費が平均以上になる場合があります。このため、中学2年生までが効率的に貯蓄ができる時期ととらえ、少しでも早く準備を開始しましょう。
学資保険など貯蓄性がある保険を検討されるご家庭は、保険料を少しでも抑えて大学入学費用が必要になる高校3年生のときに保険金を受け取れるようにするために、子どもが小中学生のうちに保険料の払い込みが終えられるように設定されるのも1つの方法です。
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コラム執筆者プロフィール
宇野 さよ (ウノ サヨ) - 公認会計士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 大学資金ゼロの状態で大学進学を決め、複数の奨学金を利用するなど、自分で大学資金をやりくりしながら公認会計士試験に合格。出産を機にファイナンシャルプランナーの勉強を始め、ライフプランの重要性を認識。仕事と子育ての時間に追われる日々に疑問を感じ、独立。会計と税務に詳しいお金の専門家として、執筆や個別相談を中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 宇野 さよ
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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