がんで働けなくなった場合の備えを考えよう その1

がんと診断された後の働き方の変化
医療の進歩により、がんは命を落とす病ではなくなったものの、共に生きていくにはお金を必要とする病になりつつあります。そのため、生きがいだけでなく経済的な問題からも、治療を続けながら働かなければならない患者さんが少なくありません。
しかし、これまで続けてきた仕事が困難になってしまうケース、働きたくても治療と仕事の両立を支える職場環境ではないケースなど、患者さんの就労の問題が国としても深刻な問題となっています。
図1は、2012年に厚生労働省がん臨床研究事業の研究班ががん患者さんに対して行った「治療と就労の両立に関するアンケート調査」の結果です。
全体の約4割の方が、がんと診断されて検査や治療が進む中で、働き方に変化があったと回答しています。また約1割の方が退職したものの再就職していないことが分かります。
異動や退職があった方にその経緯について尋ねたところ、約5割の方が自分から希望、約4割の方が会社からの指示によるものでした。
このアンケート結果からも、がん患者さんは体力的な問題にかかわらず、がんという診断を受けた後に就労状況が変わるケースが多くみられることが分かります。
就労状況が変わることは、当然収入にも影響があることが想像できますね。
実際、同アンケートでは、約45%の方ががん診断後よりも収入が減ったと回答しています(図2参照)。
世帯収入が減った方は個人収入が減った方の割合を少し上回っており、家族ががんを患い、そのサポートのために仕事量が減ったことで、収入減少を招いてしまうということもあると考えられます。
患者さんにとっても非常に辛い状況でしょうが、社会にとっても、がんによってこれほどまでに労働損失を生むことは打撃だといえるでしょう。
図1 がん患者さんの働き方の変化

図2 がん患者さんとその世帯の、がん罹患による収入の変化

出典:厚生労働省がん臨床研究事業「働くがん患者と家族に向けた包括的就業支援システムの構築に関する研究」班
治療と就労の両立に関するアンケート調査(2012年)
がん患者さんの就労問題に対する国としての対策
2007年に「がん対策基本法」を施行し、がん対策に注力をしている中で、2012年に「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」という目標を新たに掲げ、国をあげてがん患者さんの相談支援体制の強化に乗り出しました。
働く世代への支援の初めての具体策として、厚生労働省は2013年より、就労問題に詳しい専門家を全国のがん診療連携拠点病院に配置すべく、予算を出すことにしたのです。
その結果、社会保険労務士や産業カウンセラーが定期的に院内で相談会を開き、就労相談を受けることができる場が設けられるようになりました。
しかし、対応できる専門家が不足していたり、患者さんの中での認知度も低いようで、まだまだ働いていきたいと考えている患者さんにとって、非常に頼れる場ではあるにもかかわらず、まだほんの一部の病院で、ほんの一部の患者さんに限られているのが現状です。
また、専門家が就労支援を行ったとしても、受け入れる企業体制も整っていなければならず、がんと付き合いながら働ける社会になっていくことはこれからの課題です。
働けなくなることでの収入減少への備えが必要
このような現状を踏まえると、働いて収入を得ている方は、がんになった時の備えにはがんの治療費だけではなく、働けなくなった場合や収入が減った場合のことも考えておく必要があることが分かります。
実際、私がお受けするがん患者さんのご相談でも、思うように仕事が続けられなくて休職される、もしくは仕事を辞められたことで経済的に厳しい方の割合が高いです。
特に、住宅ローンが残っている、お子さんにこれから教育費もかかってくる、といった働き盛りの世代の大黒柱の方ががんになってしまったケースでは、何も備えがないとなると本当に切実です。
がんへの備えは、高額になると思われる治療費など支出へのフォローだけが取り上げられがちですが、これまで通りの収入が得られなくなる収入への備えもしておくと安心です。
その備えとなる保険について、次回「がんで働けなくなった場合の備えを考えよう その2」でお伝えします。

-
コラム執筆者プロフィール
川崎 由華 (カワサキ ユカ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、平成24年度日本FP協会「くらしとお金の相談室」相談員。
前職ではがん領域の薬を扱う製薬会社に勤務。
現在は2児の母をしながら、主婦向けのマネー講座や個人相談、執筆等ファイナンシャルプランナーとして活動中。
お金の数字だけの問題でなく、気持ちも汲み取れる身近で気さくな存在のファイナンシャルプランナーをモットーにしている。

-
コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 川崎 由華
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。