公的な介護施設サービスについて
はじめに
前回のコラムでは「公的な介護保険制度」の概要をみてきました。今回のコラムでは、公的な介護施設を取り上げていきます。
公的介護保険制度の施設サービスに指定されている介護施設は、
- 1.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 2.介護老人保健施設
- 3.介護療養型医療施設
の3つになります。
以下、それぞれの概要について順番にみていきます。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人福祉施設は、老人福祉法に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が30名以上であるものに限る)で、かつ介護保険法による都道府県知事の指定を受けた施設になります。
サービスは生活介護が中心になり、入浴、排せつ、食事等の介護やその他日常生活の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話等が具体的な内容になります。
厚生労働省プレスリリースによりますと、平成26年3月集計で、52万4千人が特別養護老人ホームへの入所待ちの状況となっています。その内訳を要介護度と、在宅か在宅でないかによって分類しましたのが表になります。
表「特別養護老人ホームの入所申込者の概況」
資料:厚生労働省老健局「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」をもとに執筆者作成
※平成26年6月の介護保険制度の改正により、特別養護老人ホームへの新規入所者は、原則、要介護3以上の人に限定されることになりました(平成27年4月実施)ので、入所待ちの人数は減ることが予想されます。
特別養護老人ホームに入所した場合の利用者負担は、
「施設サービス費」+「居住費・食費」+「日常生活費等」
になります。
施設サービス費(利用者負担1割)は、施設の形態、居室の種類、職員の配置などにより異なります。居室の種類は、従来型個室、多床室(大部屋)、ユニット型個室、ユニット型準個室の4つに分類されます。ユニット型個室、同準個室の費用が同額で最も高く、従来型個室が最も安くなります。また、要介護度によっても異なり、要介護度が高くなるほど費用も高くなります。
従来型個室とユニット型個室の大きな違いは、食堂やリビングなど共同スペースの有無になります。従来型が共同スペース無し、ユニット型が有りです。
居住費については、居室の種類により負担する費用内容が異なります。
多床室以外のユニット型個室、ユニット型準個室、従来型個室は、「室料+光熱費相当」になりますが、多床室は光熱費相当のみの負担になります。
食費は、「食材料費+調理費」が利用者の負担になります。
日常生活費等については、歯ブラシ、タオル、シャンプー等が、例として挙がっていますが、その線引きは、入居する施設によりバラつきがあるようです。
居住費・食費、日常生活費は、原則、全額自己負担となります。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、介護保険法による都道府県知事の開設許可を受けた施設になります。
サービスは、看護、医学的管理下における介護および機能訓練や、その他必要な医療のほか、リハビリテーションが中心になります。位置付けとしては、在宅復帰を目指す施設ですが、退所後の行き先をみますと40.6%が医療機関、31.7%が家庭と、医療機関が最も多くなっています(厚生労働省「平成25年介護サービス施設・事業所調査の概況」による)。
また、要支援1・2の人は利用できません。
介護老人保健施設に入所した場合の利用者負担は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と同様に、
「施設サービス費」+「居住費・食費」+「日常生活費等」
になります。
施設サービス費は、従来型個室、多床室(大部屋)、ユニット型個室、ユニット型準個室の4つをそれぞれ従来型と在宅強化型の2つに分け、計8タイプを要介護度によって分類しています。ユニット型個室、同準個室が同額で最も高く、多床室、従来型個室の順で安くなっています。
※在宅強化型とは、在宅復帰率が50%超、ベッド回転率が10%以上、要介護度4または5の利用者が35%以上等の要件をクリアした、在宅復帰・在宅支援機能が高い施設になります。
居住費・食費の区分や日常生活費等の内容については、前記の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と同様で、居住費・食費、日常生活費は、原則全額自己負担になります。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、医療法に規定する医療施設で、かつ、介護保険法による都道府県知事の指定を受けた施設になります。入所者に、療養上の管理、看護、医学的管理下における介護その他の世話および機能訓練、その他必要な医療を行うことを目的とした施設です。
この施設も要支援1・2の人は利用できません。
介護療養型医療施設に入所した場合の利用者負担も、前記2つの施設と同様に、
「施設サービス費」+「居住費・食費」+「日常生活費等」
になります。
施設サービス費は、従来型個室、多床室(大部屋)、ユニット型個室、ユニット型準個室の計4つの居室の種類と要介護度により異なります。他の2施設と同じように、ユニット型個室、同準個室が同額で最も高く、多床室、従来型個室の順で安くなっています。
また、医療主体の公的な介護施設になりますので、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設に比べ、施設サービス費は高くなります。
居住費・食費の区分や日常生活費等の内容については、前記の2施設と同様で、居住費・食費、日常生活費は、原則全額自己負担になります。
まとめ
以上、3つの施設サービスの概要と提供されるサービスの違いについてみてきました。
なお、居住費・食費、日常生活費は、3つの施設サービスとも、原則、全額自己負担となっていますが、今回の介護保険制度の改正により、低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の見直しがなされ、住民税非課税世帯である入所者については、その申請に基づき、補足給付を支給して負担が軽減されることになりました。一方、補足給付の支給段階の判定に際して、遺族年金、障害年金等の非課税年金や預貯金等も考慮されるようになります。
最後に、公的な介護施設サービスを利用する際に活用したいサポート機関および厚生労働省のホームページについて紹介いたします。
高齢者の生活を支える機関として「地域包括支援センター」を各市町村が設置し、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなど専門のスタッフが所属しています。
厚生労働省のホームページの「介護事業所検索」では、個々の介護施設について事前に情報を得ることができます。
次回は、民間の介護保険を種類別にみていきます。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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