保険の転換とは?トラブルを避けるために知っておくべき4つの注意点
生命保険の「転換」とは、現在契約している保険の積立部分や積立配当金を下取り(転換)価格として、新しい契約の保険料にあてる方法です。
保険会社から「保険料が安くなりお得です」と提案されることが多い転換ですが、転換には注意すべき点が多くあります。場合によっては、転換よりも現在の保険を更新するか、解約して別の保険に加入する方が良いこともあります。
このコラムでは、転換とはどのようなものなのか、どのような点に注意すべきなのかを解説します。
このページの目次
1 転換とは?
「保険の更新時期がやってきて、今の保険から別の保険への転換をすすめられたけれど、仕組みがいまいち理解できない……」という方もいるのではないでしょうか。
まずは、転換とはどのようなものなのかを説明します。
図1 転換のイメージ図
転換とは、現在契約している保険の積立部分や積立配当金を下取り価格(転換価格)として、新しい契約の保険料にあてる方法です。
新規で契約するよりも保険料が軽減されます。
下取り価格(転換価格)を新しい契約のどの部分にあてるかによって、いくつかの方式があります。
- 主契約にのみ転換価格をあてる方式
- 主契約の保険料が軽減されます。定期保険特約の保険料は軽減されません。
- 主契約と定期保険特約の両方に転換価格をあてる方式
- 主契約と定期保険特約それぞれ保険料が軽減されます。定期保険特約が更新を迎えると、保険料が軽減されるのは主契約のみとなります。
- 定期保険特約にのみ転換価格をあてる方式
- 定期保険特約の保険料が軽減されます。主契約の保険料は軽減されません。定期保険特約が更新を迎えると、定期保険特約の保険料は軽減されなくなります。
どの方式を選ぶかによって払い込む保険料に差が生じます。保険会社により取り扱う方式が異なるため、契約している保険会社が取り扱う方式を確認した上で、十分に比較・検討しましょう。
2 転換する前に知っておきたい注意点
転換は注意点が多く、保険会社の説明が足りていなかったことからトラブルに発展したケースも少なくありません。
保険会社からすすめられたからといって安易に転換を選ぶのではなく、現在の保険の更新や、他の保険商品への乗り換えも視野に入れて検討すると良いでしょう。
更新を選んでも契約内容を現在のライフスタイルに合わせて変更することは可能ですし、現在の保険を解約して新たな保険に加入する乗り換えであれば、他社の保険商品も選択肢に入ります。
「こんなはずじゃなかった……」と後悔しないために、転換の注意点をみていきましょう。
注意点1 現在の契約は消滅する
転換は、現在契約している保険の積立部分や積立配当金を下取りに出し、新たな保険に加入します。そのため、現在の契約は消滅することになります。
新たに契約する保険によっては、保障内容や保険金額などが大きく変わってしまう場合があります。転換前と転換後で契約内容がどのように変わるのか、しっかりと確認することが必要です。
注意点2 現在の契約と同じ保険会社の商品のみが対象
転換は、現在の契約と同じ保険会社の商品のみが対象です。
別の保険会社の商品で今の自分に適していると感じるものがあったとしても、転換できません。その場合は現在の保険を解約し、新たにその保険に加入する必要があります。
転換は、幅広い保険商品のなかから自分に適したものを選べるというわけではない点に注意しましょう。
注意点3 保険料が上がることがある
保険会社から転換をすすめられる際、「保険料は変わらず保障が手厚くなります」「保険料が安くなりますよ」「お得です」などと言われることが少なくありません。
しかし、保険料は転換時の年齢や保険料率で再計算されるため、転換前と同額の保障であったとしても、保険料が上がることがあります。
また、下取り部分を契約の一部にあてるので保険料が安くなったように感じますが、更新型の保険の場合、次回更新時には下取り部分による補填がなくなるため、保険料が跳ね上がったように感じてしまうでしょう。
注意点4 予定利率が下がるケースが多い
保険には契約時に定められた「予定利率」というものがあり、保険料に深く関係しています。
予定利率は、金融庁が設定する「標準利率」をもとにして各保険会社が設定します。標準利率が引き下げられると、予定利率も引き下げられることが一般的です。
予定利率が低いと保険料は高くなり、予定利率が高いと保険料は安くなります。
そのため、予定利率が高い方が契約者にとってメリットがありますが、転換すると予定利率が下がるケースが多いです。
図2 予定利率の推移
- ※1995年度までの予定利率については、養老保険の一般的な水準です。
- ※1996年度以降の予定利率については、標準利率です。
資料:金融庁ホームページをもとに作成
予定利率は1980年代から1992年頃までの5~6%をピークに少しずつ引き下げられ、2017年度には0.25%にまで引き下げられています。
予定利率は転換時のものが適用されるため、転換前よりも予定利率が下がることがあります。
また、転換前よりも予定利率が下がる場合、保険種類によっては保険料が上がることがあります。
転換前よりも予定利率が下がることを知らずに転換してしまうケースはとても多いため、転換後の予定利率は必ず確認するようにしましょう。
3 転換が有効活用できるケースとは?
「転換って何のためにあるの?」「メリットはないの?」と困惑している方もいると思いますが、転換が有効活用できるケースも存在します。
特別配当がある場合
特別配当(長期継続の契約に対して支払われる配当金)を受給する権利がある場合は、転換を有効活用できる可能性があります。
転換前の契約の特別配当を受給する権利は、転換後の契約に引き継がれます。
現在の保険を解約して新たな保険に加入する乗り換えの場合、特別配当を受給する権利は新契約に引き継がれないため、この点においては、転換が有効活用できるといえるでしょう。
しかし、特別配当があるからといって転換に踏み切るのではなく、保障内容や保険料など総合的に考えて判断することをおすすめします。
4 転換でトラブルにならないために、チェックするポイント
「お得ですよ」「保険料が安くなりますよ」などとすすめられて転換を選んだものの、後々、保険会社の説明が不十分だったとトラブルに発展するケースも少なくありません。
図3は、生命保険に関する苦情内容を項目別に分類したものです。
図3 生命保険に関する苦情内容の上位項目
資料:(一社)生命保険協会「相談所リポートNo.95」をもとに作成
生命保険の「新契約関係」に関して寄せられた苦情では「説明不十分」が2位に入っており、そのうちの約2割が転換に関するものです。
なかには生命保険の転換後、契約取り消しを巡って紛争に発展したケースもあります。「転換により不利益を被った」という主張が主であり、やはり十分に説明がなされていないことが原因です。
保険会社が転換をすすめる際、転換以外にも方法があることや、転換した場合の転換前と転換後の契約内容の比較について、書面を用いて説明することが義務付けられています。
説明が義務付けられている内容
(1)転換前と転換後の保険契約に関して、次の重要事項について対比したもの
- ・基本となる保険金の名称と金額
- ・個別の特約名と特約保険金額
- ・保険期間および保険料払込期間
- ・保険料(主契約、特約)およびその払込方法
- ・配当方式
(2)転換時の予定利率が元の契約の予定利率よりも下がる場合、保険料が引き上げとなる可能性があること
(3)転換以外に、現在の契約を継続したまま保障内容を見直す方法がある事実およびその方法(追加契約、特約の中途付加など)
書面を受領した旨の確認を求められますので、転換前と転換後で契約内容がどのように変わるのかしっかりと確認し、納得したうえで署名しましょう。
5 転換に踏み切る前に専門家に相談しよう
転換はとても複雑な制度です。このコラムを見て、「自分は転換を視野に入れてもいい」と思った方も、まずは保険の専門家に相談することをおすすめします。
転換先として提案された保険がどのようなものか、本当に自分にとってメリットになり得るのか、きちんと理解することが大切です。
また、決断を急ぐことなく、転換した場合と更新や乗り換えをした場合などを比較・検討して判断するようにしましょう。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
- ※ 掲載日は2020年7月28日です。
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