バイク保険の内容を知って必要な補償を備えよう!
昔、国道246号を颯爽と走り抜けていく大型バイクを見送ったしばらく後、道路のくぼみでその大型バイクが転倒しているのを見たときに、二輪の不安定性と事故率の高さを実感したことを思い出します。
このとき私が乗っていたのは中型バイクでしたが、先に私がそこを通り、道路のくぼみに気付くのが遅れていたら、転倒していたのは私だったかもしれません。
四輪の自動車はシートベルトやエアバッグなどの装備がありますが、二輪のバイクはヘルメットくらいしか身体を守るものがありません。
前述のような自損事故の場合も、身体とバイク車両にダメージを受けることになります。また、経済的な問題の他にも心身に後遺症が残った場合の心配もあります。
対人や対自動車の事故だけではなく、不安定性からくる自損事故も想定されるバイクなだけに、万一の備えとして任意保険がおすすめです。
バイクの任意保険の内容を知り、自分に必要な補償を備えましょう。
任意保険は自賠責保険で補いきれない損害をカバーするもの
自賠責保険は、自動車と原動機付自転車を含む全てのバイクに加入が義務付けられている強制保険です。バイクを購入したら必ず自賠責保険に加入することになります。
自賠責保険で補償されるのは、自分の運転するバイクで他人を死亡させたり、ケガを負わせたりした「人身事故」のみです。また、被害者1名ごとに支払限度額が定められています。
表 自賠責保険の支払限度額(被害者1名ごと)
※スクロールで表がスライドします。
傷害 | 120万円 | ||
---|---|---|---|
後遺障害 | 神経系統の機能障害や精神・胸腹部臓器への著しい障がい(要介護状態) | 常時介護を必要とする場合(第1級) | 4,000万円 |
随時介護を必要とする場合(第2級) | 3,000万円 | ||
上記以外 | 3,000万円(第1級)~75万円(第14級) | ||
死亡 | 3,000万円 |
資料:国土交通省「自賠責保険ポータルサイト」をもとに執筆者作成
損害賠償額が自賠責保険の支払限度額を超えた場合、超えた分については自己負担となります。
例えば、交通事故を起こして他人にケガを負わせ、被害者がケガの治療のために30日間入院した場合、損害賠償額はどのくらいになるのでしょうか。
(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、入院時の1日あたりの自己負担費用は平均20,700円(※)です。
(※)食事代、差額ベッド代、交通費(見舞いに来る家族の分も含む)、衣類、日用品など、治療費以外にかかる費用を含む。高額療養費制度を利用した場合は、利用後の金額。
この金額を参考に計算してみましょう。
図 損害賠償額の計算(一例)
交通事故の場合、入院費用を加害者側が全額自己負担することになります。
健康保険を3割負担として計算すると、1日あたりの入院費用は20,700円÷0.3で69,000円です。
69,000円×30日で、損害賠償額は207万円となります。
資料:執筆者作成
傷害による損害の支払限度額が120万円ですので、残りの87万円は自己負担しなければなりません。
しかし、任意保険を契約していれば、自賠責保険で補いきれない部分をカバーすることができます。
任意保険の種類
任意保険にはいくつかの種類があります。
一般的に数種類を組み合わせて販売されており、組み合わせは保険会社によって異なります。また、保険会社によっては、保険ではなく特約として扱われている場合もあります。
ここでは、いくつかの種類の中から3つご紹介します。
搭乗者傷害保険
契約対象のバイクに搭乗中の事故により運転手・同乗者が死亡またはケガをした場合に、契約時に定めた一定の保険金が支払われます。
ノーカウント事故として扱われるため、翌年の等級に影響がありません。
人身傷害補償保険(人身傷害保険)
契約対象のバイクに搭乗中の事故により運転手・同乗者が死亡またはケガをした場合に、過失割合にかかわらず実際の損害額が補償されます。
契約対象のバイクに搭乗中の事故だけでなく、他のバイク・自動車に搭乗中の事故や歩行中の事故なども補償されるタイプもあります。
搭乗者傷害保険と同じくノーカウント事故として扱われるため、翌年の等級に影響がありません。
対人賠償保険
契約対象のバイクを運転中に他人を死亡またはケガをさせ、法律上の損害賠償責任を負った場合に、自賠責保険の支払限度額を超える部分に対して保険金が支払われます。
他人に対する補償のため、運転手本人やその家族(父母・配偶者・子ども)は補償の対象外です。
自分に必要な補償を備えよう!
全ての補償が付けられればそれに越したことはありませんが、予算の都合で難しい方も多いと思います。基本的には、人身傷害補償保険と対人賠償保険をベースに他の補償を組み合わせるとよいでしょう。
保険料は補償範囲や補償額によって変わります。どこを重視するかで補償内容を考えましょう。
実際に起きた交通事故の億を超える賠償金の判例から見ても、できるだけ補償額は無制限にしておきたいところです。
「自分に必要な補償は何であるのか」「どの商品が自分に適しているのか」など、迷った場合は、保険会社や保険代理店など保険のプロに相談することをおすすめします。
執筆者プロフィール
矢澤 理惠ヤザワ リエ
CFP®
株式会社オフィスヤザワ 代表。ファイナンシャル・プランナーを目指したきっかけは「知っていると得をする」ことを自分で実感したため。祖父母が亡くなった時に発生した「争続」。その時に「前もって知っていることの大切さ」に気付き、知っていると幸せになることが世の中にたくさんあるとお知らせするべく、個人相談、執筆活動を行う。
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
- ※ 掲載日は2023年4月20日です。
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