2020.12.11
「ねんきん定期便」の見方
「ねんきん定期便」をご覧になっていますか?
中も開けずにそのままにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自身の将来の年金に関する大切なお知らせです。とはいえ、数字が並んでいるばかりで、どこを見ればよいのか分かりにくいですね。
そこで、今回は、ねんきん定期便の見方と専業主婦や専業主夫の方が確認する上でのポイントについてお話しします。
ねんきん定期便とは?
ねんきん定期便とは、これまでの年金保険料の支払実績や、将来受給できる老齢年金の見込額などを分かりやすくまとめたもので、国民年金および厚生年金保険の被保険者に送られます。
毎年の誕生月(1日生まれの方は誕生月の3カ月前に作成し、誕生月の前月)に、基本的には「はがき」で届きますが、35歳・45歳・59歳の節目となる年齢には、より詳しい年金記録の情報が「封書」で届きます。
また、年金記録の情報は「ねんきんネット」からでも確認できます。ねんきんネットとは、いつでもどこでも、パソコンやスマートフォンから年金記録の情報を確認できるサービスです。
ねんきんネットに登録すれば、年金記録の情報をパソコンなどで確認したり、毎年の誕生月に郵送されてくるねんきん定期便を「電子版(PDFファイル)」で確認したりできます。
電子版はダウンロードできますが、個人情報になりますので、パソコンなどに保存される場合は取り扱いに注意しましょう。
なお、ねんきん定期便のはがきの郵送停止手続きは、ねんきんネットからできますが、停止手続きを行ったとしても封書については節目となる年齢に届きます。
表を参考に、ねんきん定期便の内容を見てみましょう。
表 ねんきん定期便の概要
※スクロールで表がスライドします。
区分 | 形式 | 内容(共通項目など) | ||
---|---|---|---|---|
毎年 | 50歳 以上 |
はがき | 老齢年金の種類と見込額(年額) | ・最近の月別状況 ・これまでの保険料納付額(累計額) ・これまでの年金加入期間 |
50歳 未満 |
これまでの加入実績に応じた年金額 | |||
節目の年 | 59歳 | 封書 | 老齢年金の種類と見込額(年額) | ・これまでの年金加入履歴 ・これまでの保険料納付額(累計額) ・これまでの年金加入期間 |
35歳 45歳 |
これまでの加入実績に応じた年金額 |
資料:日本年金機構「ねんきん定期便の様式(サンプル)と見方ガイド(2020年度送付分)」をもとに執筆者作成
(1)50歳以上の方の場合
50歳以上の方に届くねんきん定期便には、「老齢年金の種類と見込額(年額)」が記載されています。
また、「特別支給の老齢厚生年金」が受給できる方は、何歳から受給できるかが分かるでしょう。
老齢年金の見込額は、今加入している年金制度に継続して加入し、年金保険料を支払い続けた場合に、受給可能な年齢に達したら受給できるであろう見込みの金額になります。そのため、老後の収入の見通しが立てやすくなりますね。
ただし、老齢年金の見込額は、今後の制度改正やご自身の年金制度の加入状況などにより変わりますので、あくまでも目安ということを忘れないようにしましょう。
(2)50歳未満の方の場合
50歳未満の方に届くねんきん定期便には、老齢年金を受給するために必要な年金加入期間の有無にかかわらず、現時点での加入実績をもとに計算された「これまでの加入実績に応じた年金額」が分かります。
この先も年金保険料を支払うことで加入実績は増えるため、将来受給できる老齢年金額は変わります。このため、50歳以上の方の老齢年金の見込額とは異なります。
なお、ねんきんネットでは「将来の老齢年金の見込額の試算」ができますので、ご自身の老齢年金の見込額などを確認したい方は、ねんきんネットに登録して利用するとよいでしょう。
ねんきん定期便のチェックポイントは?
特に、第3号被保険者になる前に転勤・転職が多かった場合や姓が変わった場合などは、そのときの年金記録に漏れや誤りがないか確認しておきましょう。また、次のような場合も注意してください。
(1)老齢基礎年金を受給できないと思っていた場合
老齢基礎年金を受給するためには、原則として、年金保険料の支払済期間や年金保険料免除期間などの合計が一定以上必要です。
この老齢基礎年金を受給するために必要な加入期間を「受給資格期間」といい、以前は25年以上必要でしたが、2017年8月1日からは10年以上あれば老齢基礎年金を受給できるようになりました。
年金保険料の支払済期間が短く、老齢基礎年金を受給できないと思っていた方も受給資格期間の確認をしてください。
ただし、20歳~60歳までの40年間は国民年金に加入する義務があることに変わりはなく、10年だけ年金保険料を支払えばよいということではありません。
もし、年金保険料の免除期間や猶予期間、学生納付特例の承認を受けた期間があるなら、要件を満たした期間に限り、経過期間に応じた加算額が生じる場合もありますが、年金保険料を後から支払う「追納制度」を利用することができます。
追納制度を利用することで、老齢基礎年金の年金額を増やすことができたり、社会保険料控除により所得税や住民税が軽減されたりします。
老後のためにも年金保険料を支払い、老齢基礎年金の年金額を増やしていきましょう。
(2)配偶者が「退職・65歳に到達・死亡」などの場合
会社員や公務員の配偶者(第2号被保険者)に扶養されている方(第3号被保険者)は、ご自身の負担で年金保険料を支払う必要はありません。
しかし、例えば、会社員や公務員の夫が勤務先を退職し自営業になった場合、夫は第2号被保険者ではなくなります。
扶養されていた妻も第3号被保険者から第1号被保険者へ、切り替えの手続きを行い、年金保険料を支払わなければなりません。
図 夫が勤務先を退職し自営業になった場合
資料:日本年金機構「第3号被保険者(専業主婦・主夫)からの手続きが遅れた方へ」をもとに執筆者作成
また、夫が現在の勤務先を退職し再就職する場合、再就職するまでの間、タイミングによっては第2号被保険者でなくなる期間ができる可能性があります。夫が65歳に到達したときや死亡したときなども同様です。
このような場合に、ねんきん定期便の月別状況欄が「3号」と記載されたままになっていませんか?その際は早急に必要な手続きを行いましょう。
手続きが2年以上遅れた場合、2年より前の期間は年金保険料を支払うことができず未払期間となります。
ただし、2年より前の年金保険料は支払うことができませんが、「特定期間該当届」を提出すれば、年金の受給資格期間に未払期間を算入できます。
未払期間をそのままにしておくと、将来的に老齢基礎年金を受給できない場合があります。
また、障がいや死亡といった不慮の事態が発生した場合に、障害基礎年金・遺族基礎年金を受給できないことがありますので注意しましょう。
(3)ご自身(第3号被保険者)が第2号被保険者になった場合
パートタイマーで働いている主婦や主夫の方も、勤務要件によっては配偶者の被扶養者(第3号被保険者)ではなく、ご自身が第2号被保険者として厚生年金保険に加入している場合があります。
なぜなら、2016年10月以降、厚生年金保険の加入対象は広がっており、従業員数が501人以上の特定適用事業所、または従業員数500人以下の事業所で労使の合意がなされていれば、週の所定労働時間が20時間以上などの要件を満たす場合に、厚生年金保険に加入することができるからです。
そして厚生年金保険の加入対象は、2020年5月29日に成立した年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する「年金制度改正法」により、さらに広がると予想されています。
改正の概要では「短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げる(現行501人以上を101人以上に、その後101人以上を51人以上に引き下げる)」と記されています。
そのため、パートタイマーで働く主婦や主夫の方で、今は厚生年金保険の加入対象外であっても、勤務先によっては今後、厚生年金保険の加入対象となるかもしれませんので、該当するかもしれない場合には確認しておくとよいでしょう。
なお、第2号被保険者として厚生年金保険に加入すれば、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされるので、将来受給できる老齢年金額が増えます。
厚生年金保険に加入した際には、ねんきん定期便の「これまでの保険料納付額」「最近の月別状況の欄」などに年金記録が正しく反映されているか確認しておきましょう。
老後の計画を立てるには、まずは年金について知ることです。そのためにはぜひ、ねんきん定期便を確認してください。
ねんきん定期便にはご自身の将来のための情報が詰まっています。
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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