2020.12.04
個人事業主・自営業の方のための老後資金対策~国民年金基金・年金と一時金~
国民年金の第1号被保険者である個人事業主・自営業の方の老後資金対策の1つである国民年金基金について、前回まで加入や掛金についてご説明しました。今回は、国民年金基金の「年金」と「一時金」についてご紹介します。
国民年金基金の給付の種類
国民年金基金の給付には、老齢年金と遺族一時金があります。
(1)老齢年金
国民年金基金の老齢年金は、加入員が受給開始年齢(A型・B型・I型・II型は65歳、III型・IV型・V型は60歳)に達したとき、国民年金基金から届く年金請求書に必要事項を記入し提出することで、決定を経て受給が始まります。
受給する年金額は、加入時の年齢と性別、選択した給付の型と加入数によって決まります。例えば、男性の方が40歳の誕生月に、1口目としてA型、さらに加えてA型に3口加入した場合、65歳から月額30,000円の年金が国民年金基金から受給できます。
図1 (例)40歳男性が誕生月に加入した場合の年金受給額(2020年4月時点)
資料:国民年金基金ホームページをもとに執筆者作成
なお、年金額が12万円以上の場合は年6回(偶数月に2カ月分)、年金額が12万円未満の場合は年1回の受給となります。
また、国民年金基金の老齢年金は国民年金や厚生年金等の老齢年金と併せて公的年金等控除の対象になります。
(2)遺族一時金
国民年金基金の遺族一時金は、加入員に万一のことがあったときに、ご遺族が受給できる一時金です。
保証期間のあるA型・I型・II型・III型・IV型・V型に加入している方が以下のような場合に、ご遺族が遺族一時金を受給することができます。
図2 遺族一時金が受給できる場合
- 老齢年金受給前に死亡
- 加入時の年齢と死亡時の年齢および死亡時までの掛金納付期間に応じた額の遺族一時金が受給できます。
- 保証期間中に死亡
- 残りの保証期間に応じた額の遺族一時金が受給できます。
資料:国民年金基金ホームページをもとに執筆者作成
また、保証期間のないB型のみに加入している場合でも、加入員が老齢年金受給前に死亡した場合、ご遺族は10,000円の一時金を受給できます。
遺族一時金は、死亡時に加入員と生計をともにしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、ご遺族の方お1人が受給できます。
なお、受給する遺族一時金は非課税です。
加入員資格の喪失
以下のいずれかに当てはまる場合に加入員資格を喪失します。
図3 加入員資格を喪失する場合
- 60歳(国民年金に任意加入している場合は65歳)になったとき
- 国民年金の第1号被保険者でなくなったとき
- 国民年金に任意加入している場合は任意加入被保険者でなくなったとき
- 職能型国民年金基金に加入している場合は、該当する事業または業務に従事しなくなったとき
- 国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・納付猶予含む)されたとき
- 農業者年金の被保険者になったとき
- 加入員本人が死亡したとき
資料:国民年金基金ホームページをもとに執筆者作成
加入員資格を喪失した場合、すでに支払った掛金は、途中で引き出すことも返戻金などで返してもらうこともできませんが、将来、その時点まで支払った掛金を老齢年金として受給できます。
国民年金基金の特徴のまとめ
国民年金基金は、1口目が終身年金A型・B型いずれかを選択して加入することとなっており、生涯受給できる終身年金が基本なので、長い老後の生活に備えることができます。
また、加入員に万一のことがあったとき、保証期間のある給付の型に加入している場合は、ご遺族が遺族一時金を受給できるため掛け捨てになりません。受給する年金額が確定しているため、老後資金の計画も立てやすいのではないでしょうか。
さらに、掛金は全額社会保険料控除の対象となり、確定申告で税金が軽減されますし、受給する年金は公的年金等控除の対象となり、遺族一時金は全額非課税という税制上の優遇もあります。
ただし、国民年金基金への加入は任意ですが、いったん加入すると、ご自身の都合で任意に脱退または中途解約することができないので、注意が必要です。
個人事業主・自営業の方にとって、老後資金対策は国民年金基金だけではありません。
例えば、民間の「個人年金保険」や、国の機関である中小企業基盤整備機構が運営する「小規模企業共済」などがあります。
保険契約等では、まとまったお金が必要なときに、解約返戻金のなかから決まった範囲内でお金を借りることができる契約者貸付があったり、小規模企業共済では、掛金の納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で事業資金等を借り入れることができる、貸付制度があったりします。
現在の事業収入の状態、加入するタイミングや今後の事業計画などによって、どのようなバランスで対策を取る方が良いかは人それぞれでしょう。
老後に必要な資金を予想し、さまざまな制度の特徴を理解した上で、老後資金対策を検討されることをおすすめします。
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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