2020.11.20
個人事業主・自営業の方のための老後資金対策~国民年金基金・掛金編~
国民年金の第1号被保険者である個人事業主・自営業の方が、保険料の支払期間中にできる老後資金対策の一つとして、前回は国民年金基金の制度と加入についてご説明しました。今回は、国民年金基金の掛金について詳しくご説明します。
国民年金基金の掛金の特徴
国民年金基金の掛金の月額は、加入時の年齢と性別、選択した給付の型と加入口数によって決まります。
給付の型は、終身年金のA型、B型、受給期間が定まっている確定年金のI型、II型、III型、IV型、V型の7種類があります。
全員が加入する1口目は、終身年金のA型、B型いずれかを選択し、余裕に応じて加入する2口目以降は、終身年金のA型、B型のほか、受給期間が定まっている確定年金のI型、II型、III型、IV型、V型から選択します。
なお、確定年金の年金額は、終身年金の年金額を超える選択はできません。
表 掛金月額表(抜粋)
加入時年齢 | 29歳1月~ 30歳0月 |
39歳1月~ 40歳0月 |
49歳1月~ 50歳0月 |
|||
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1口目 | 年金月額 | 20,000円 | 15,000円 | 10,000円 | ||
終身年金 | A型 | 男性 | 10,300円 | 12,555円 | 18,150円 | |
女性 | 11,990円 | 14,610円 | 21,100円 | |||
B型 | 男性 | 9,250円 | 11,340円 | 16,510円 | ||
女性 | 11,510円 | 14,070円 | 20,380円 | |||
2口目以降 | 年金月額 | 10,000円 | 5,000円 | 5,000円 | ||
終身年金 | A型 | 男性 | 5,150円 | 4,185円 | 9,075円 | |
女性 | 5,995円 | 4,870円 | 10,550円 | |||
B型 | 男性 | 4,625円 | 3,780円 | 8,255円 | ||
女性 | 5,755円 | 4,690円 | 10,190円 | |||
確定年金 | I型 | 男女 | 3,635円 | 2,950円 | 6,375円 | |
II型 | 男女 | 2,510円 | 2,040円 | 4,405円 | ||
III型 | 男女 | 3,915円 | 3,180円 | 6,865円 | ||
IV型 | 男女 | 2,705円 | 2,195円 | 4,745円 | ||
V型 | 男女 | 1,405円 | 1,140円 | 2,460円 |
資料:国民年金基金連合会「掛金月額表」をもとに執筆者作成
例えば、男性の方が40歳の誕生月に、1口目としてA型(掛金月額12,555円)、さらに加えてA型(掛金月額1口4,185円)に3口加入した場合、この男性の掛金月額は25,110円になり、65歳から月額30,000円の年金額が国民年金基金から受給できます。
また、余裕に応じて、2口目以降を口数単位で掛金額を増口・減口することができますが、途中で口数を変更しない場合は、加入時の掛金額は払込期間終了まで変わりません。
国民年金基金の掛金は、4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納すると0.1カ月分の掛金が割り引かれます。掛金を前納した場合は、前納した期間に係る各月分の掛金を減口することができませんので注意が必要です。
なお、国民年金基金の掛金の上限は、月額68,000円となっており、上限金額以内で給付の型および加入口数を選択できます。ただし、個人型確定拠出年金にも加入している場合は、その掛金と合わせて68,000円以内となります。
掛金の支払方法
掛金は、加入員が指定した金融機関から毎月引き落とされます。残高が足りなかったなど引き落としが行われなかった場合は、次回引き落としの際に翌月分も合わせ2カ月分が引き落とされることになりますので注意しましょう。なお、掛金は2カ月遅れで引き落とされます。
また、国民年金自体の保険料も合わせて口座振替(納付委託)にすることができます。希望する場合は、国民年金基金へ申し出ましょう。
掛金は、60歳未満で加入した場合は、59歳11カ月が最終掛金月となり、60歳以上で加入した場合は、64歳11カ月または国民年金の任意加入被保険者資格の喪失予定年月の前月まで支払うことになります。
国民年金基金の掛金に関するメリット
国民年金基金の掛金は、全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。
例えば、課税所得金額が約400万円で国民年金基金の掛金が年額30万円の方の場合、所得税・住民税は合計で約90,000円軽減されます。
図1 国民年金基金加入による所得税・住民税軽減例
※合計税率は、所得税率を20%、住民税率を10%として合算。
資料:国民年金基金連合会「加入のメリット」をもとに執筆者作成
もし、生命保険料控除の対象となる一般の個人年金保険契約等に加入したとすると、所得税の所得控除は最大年額40,000円、住民税の所得控除は最大年額28,000円までで、所得税・住民税の軽減が最大で20,400円となります(2012年1月以降)。
図2 生命保険料控除による所得税・住民税軽減例
※合計税率は、所得税率を20%、住民税率を10%として合算。
資料:執筆者作成
生命保険料控除の所得税・住民税の軽減部分と比べてみると、お得な制度だと感じられるのではないでしょうか。
掛金に対する税制措置がメリットの一つである国民年金基金ですが、加入後はご自身の都合で任意に脱退および中途解約することはできません。
また、掛金を払い込み、65歳(選択する型によっては60歳)から年金として支給されるまで待つ必要がありますので、掛金額を決める際は年金額や税制措置ばかりに目を向けず、慎重に計画を立てることをおすすめします。
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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