相続税を軽減するにはどうしたらいいの?前編~預金等の現金を別の資産に変える
相続税が課税され納税しなければならなくなると、その分だけ相続する財産が減ってしまうことになります。家族や次世代のために遺す財産ですから、できれば相続税はなるべく少ない方がいいでしょう。では、相続税を軽減するにはどのような方法があるでしょうか。
相続税は「正味の遺産額」が基礎控除額を超えると課税される
相続税は、死亡(相続開始)の時点で①遺産総額(相続・遺贈で取得したおよび取得したとみなされる金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべての財産)に、②相続時精算課税の適用を受ける贈与財産を加えたものから、③非課税となる財産、④債務、⑤葬儀費用分を引き、⑥相続開始前3年以内の贈与財産を加えた、⑦「正味の遺産額」が基礎控除額を超えていると、超えた分に対して課税されます(図1参照)。なお、相続税の計算の仕組みは末尾の図3をご覧ください。
図1 課税遺産総額の計算方法
※基礎控除額については、「相続税はどれくらい増えるの?」をご参照ください。
資料:国税庁ホームページを基に執筆者作成
正味の遺産額を少なくすることができれば、相続税は減ることになります。正味の遺産額を少なくするには、図1の左側の財産(①②)を減らしたり、そこから差し引く分(③④⑤)を増やしたりといった方法があります。
生前にやっておきたい相続税軽減対策
遺産総額とは、死亡時(相続開始時)に被相続人(死亡した方)が遺している財産を指します。被相続人となる方が元気で判断能力もしっかりしているうちに、別の財産に変えておくことで、課税遺産総額を少なくすることができます。
現金を別の資産に変えて正味の遺産額を少なくする
預金等の現金は、その金額がそのまま相続税を計算する際の評価額になりますが、資産によっては、非課税になったり、評価額が低くなったりすることがあります。現金をそういった別の資産に変えることで、課税遺産総額の減少につなげることができます。
- ・非課税の財産に変える
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原則として、墓地や仏壇等には相続税がかかりません。いずれ必要なものであれば、ご自身で事前に墓地や仏壇を購入しておくと、課税対象となる現金を減らすことができます。
- ・生命保険に変える
<契約者・被保険者=被相続人、受取人=相続人>で契約した場合 -
被保険者である被相続人が死亡したことで受け取る死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、相続人が受け取る死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」で計算した金額まで非課税財産(③)になるので、正味の遺産額を減少させることができます。なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用はありませんので、誰を受取人にするのか注意しておきましょう。
図2 生命保険の活用例
(※)契約内容により、受取保険金額に対する支払保険料の額は異なります。
資料:執筆者作成
- ・不動産(土地・建物等)に変える
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宅地の相続税評価額は路線価をもとに(路線価が付されていない地域は、固定資産税評価額に国税局長が定めた倍率を乗じて)算出します。路線価は一般の土地取引の指標である地価公示価格水準の8割程度なので、地価公示価格1,000万円の宅地の相続税評価額は、概ね800万円位になると見込まれます。ただし、路線価は毎年評価替えされていますので、購入した価格よりも相続時の相続税評価額が高くなることもありえます。
宅地を人に貸したり、宅地の上にアパート等の貸家を建てて人に貸していたりすると、「貸宅地」や「貸家建付地」として自宅の敷地の場合よりも評価額が低くなります。貸付事業用の宅地でも要件を満たせば「小規模宅地等の評価減の特例」が適用できます。
建物の相続税評価額は固定資産税評価額(貸家であれば「固定資産税評価額×借家権割合(通常30%)×賃貸割合」分を差し引いた額)なので、通常は購入価格や建築費用よりも相続税評価額が低くなります。
今回は、預金等の現金を別の資産に変えて正味の遺産額を少なくすることで、相続税を軽減する方法を紹介しました。次回は贈与を活用した、相続税軽減方法をみていきます。
なお、実際に現金を別の資産に変える相続税の軽減対策を行う場合は、税理士等の専門家に相談の上、軽減効果等を十分に検討して行うようにしてください。
図3 相続税の仕組み
出典:財務省ホームページ「相続税の仕組み」
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コラム執筆者プロフィール
平川 すみこ (ヒラカワ スミコ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、相続アドバイザー協議会認定上級相続アドバイザー、相続診断士。
「お金の不安を解決して、みんなでHAPPYに!」とフリーのファイナンシャルプランナーとして、相続やライフプランに関することを中心に、個別相談、セミナー、執筆等を通じて幅広く活動中。
エンディングノートの普及にも力を入れている。
ファイナンシャルプランナー 平川 すみこ
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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