生命保険料の支払いと税金面のメリット
生命保険は、私たちにとって万一の時の備えになっています。万一の時の公的な備えとしては、老齢基礎年金を土台とする公的年金、協会けんぽや国民健康保険などの公的健康保険があります。それらを補完するものとして民間の生命保険があり、加入を促すために生命保険料控除が設けられています。
生命保険料控除の簡単な歴史
生命保険料控除は、明治時代から議論がなされ、創設されたのは大正12年といわれています。戦後の一時期中断しましたが、金額を変え今日まで続いています。個人年金保険料控除は昭和59年から創設され、平成24年からは新しく介護医療保険料が控除の対象となりました。
いずれの控除も、保険を活用した長期的な貯蓄による自助努力、万一の時などに経済的に困った時の相互扶助等、公的な保障の補完を促す意味合いが込められています。
生命保険料控除を受けられる契約
それぞれの保険料控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
保険会社から届く証明書で保険料控除の種類を確認することができます。
表1 生命保険料控除の体系
資料:国税庁のホームページをもとに執筆者作成
生命保険料控除の計算
生命保険料控除の計算は、会社員の方であれば勤務先で年末調整の時に生命保険料控除証明書を提出し、担当者が行います。確定申告が必要な場合でも、国税庁の確定申告書等作成コーナーなどで作成をすれば、必要な項目を入力すると自動的に計算されます。とはいうものの、ある程度の仕組みは知っておきたいですし、いくら保険料が控除されるかは気にかかるところです。
保険料控除の計算は、保険に加入した年によって大きく二つに分かれます。
(1)平成23年12月31日以前に契約した生命保険契約等
資料:国税庁のホームページをもとに執筆者作成
生命保険料控除と、個人年金保険料控除とを合わせた所得税控除額は10万円が上限となります。
毎月の保険料が8,334円以上であれば、年間の支払保険料は10万円を超えるので、所得税控除額は上限の5万円になります(100,000円÷12カ月=8,333.33…円)。
(2)平成24年1月1日以降に契約した生命保険契約等
資料:国税庁のホームページをもとに執筆者作成
生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除を合わせた所得税控除額は12万円が上限となります。
毎月の保険料が6,667円以上であれば、年間の支払保険料は8万円を超えるので、所得税控除額は上限の4万円になります(80,000円÷12カ月=6,666.66…円)。
(1)と(2)の制度を併用する場合、所得税控除額は12万円が上限となります。
公益社団法人生命保険文化センターが行った「平成24年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、個人年金保険料の世帯平均支払額は19.3万円となっています。また、生命保険料(個人年金保険料除く)の世帯平均支払額は22.3万円となっています。つまり、平均的な保険料を支払っている方であれば、生命保険料控除の上限額で控除を受けているものと思われます。
終わりに ~ワンポイントアドバイス~
すでに生命保険料控除と個人年金保険料控除とで10万円の生命保険料控除を受けておられる方の場合、介護医療保険料控除でさらに受けられる控除額の上限は2万円となります。この場合、新たに得られる控除効果は、仮に所得税の最高税率を掛け合わせても9,000円となり、月額に置き換えると750円となります。
よって、保険料控除の額を増やすためだけに新たに生命保険に加入するのは、あまり賢明ではないようです。保障も保険料も適切な金額に決めた上で、新しい保険に入ったり見直したりするのが効果的です。
ファイナンシャルプランナー 上津原 章
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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