保険料をどのくらい支払っていますか?
筆者が家計に関する相談を受けていると、保険に関する相談が多く出てくると感じます。納得して加入した保険でも保険料の支払いを家計の負担に感じておられる方、保険への加入をこれから検討したいと考えている方、どちらも「平均的な保険料はいくらぐらい?」なのかを気にされていると感じます。自分が保険に加入し過ぎていないか、あるいは、保障が足りていないのかを知るための目安にされたいと考えられているのではないでしょうか。今回は、1人あたりの年間払込保険料の平均金額についてみていきましょう。
年代によって支払保険料は大きく異なる
図 1人あたり年間払込保険料の年代別平均金額
資料:(公財)生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」をもとに執筆者作成
上図を見てみると、1人あたり年間払込保険料の平均金額は、全体で19.7万円となっています。年代別に比較すると、はっきりとした傾向があることが分かりますね。18~19歳は5.7万円と目立って少なく、20歳代で13.2万円にまで増加し、以降増加を続けます。50歳代でピークを迎えると、60歳代になって減少に転じています。
このような年代ごとの年間払込保険料の変化は、就職や結婚、子どもの誕生などといったライフステージによって変化する、生活上の不安が影響していると考えられます。
保険は万一の不安に応じて加入するもの
保険の加入や見直しを考えるとき、一般的に多くの人は日々抱えている万一の事態への不安に備えたいと思うのではないでしょうか。このため、保険への加入や、年間払込保険料の金額は、生活上の不安を反映するものといえます。年代別で感じている最も生活上で不安な項目の上位3位は以下の表のようになっています。
表 年代別、生活上の不安項目(上位3位まで)
第1位 | 第2位 | 第3位 | |
---|---|---|---|
18~19歳 | 家族の者が死亡するようなことが起こること(28.6%) | 家族の者が病気や事故にあうこと(20.0%) | 交通事故などの事故を起こしたり、相手にケガを負わせたりすること(15.7%) |
20歳代 | 家族の者が死亡するようなことが起こること(21.8%) | 家族の者が病気や事故にあうこと(19.3%) | 自分が病気や事故にあうこと/親の介護が必要となること(12.7%) |
30歳代 | 自分が病気や事故にあうこと(17.5%) | 自分の不慮の死により家族の者に負担をかけること(14.7%) | 家族の者が死亡するようなことが起こること(14.6%) |
40歳代 | 親の介護が必要となること(15.7%) | 自分が病気や事故にあうこと(14.3%) | 自分の不慮の死により家族の者に負担をかけること(13.9%) |
50歳代 | 自分の介護が必要となること(15.1%) | 老後の生活が経済的に苦しくなること(14.4%) | 自分が病気や事故にあうこと(13.5%) |
60歳代 | 自分の介護が必要となること(19.9%) | 年をとって体の自由がきかなくなり、病気がちになること(19.7%) | 自分が病気や事故にあうこと(16.4%) |
資料:(公財)生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」をもとに執筆者作成
(1)18~19歳・20歳代の不安は、家族の万一
18~19歳、20歳代では、就職して独身のうちは、自分が死亡しても親や兄弟など家族が生活に困ると心配する方は多くないといえるでしょう。むしろ、家族に万一のことが起こることを不安に感じています。一般的に、自身の万一に備えて死亡保障に加入しても大きな保障は必要ないと考えていることが多いからか、年間払込保険料も少額になっています。
(2)30歳代以降の不安は、自身の身に起こること
30歳代になると、自分の病気や万一を不安に感じる方が増えます。厚生労働省の「平成28年人口動態調査」によると、平均の婚姻年齢、第1子誕生時の平均年齢は、男女ともにどちらも30歳代です。自分の病気や万一が、配偶者や子どもの経済的な負担にならないよう死亡保障を増やしたり、医療保険に加入したりする方が多くなっているといえます。
(3)60歳代で死亡保障を縮小・医療保障は維持
子どもの大学学費など教育費のピークを越え、年金生活に入る60歳代では、死亡保険金額を減らし年間払込保険料を減らしています。死亡保険・医療保険ともに保険加入率は30歳代から60歳代まででは大幅な減少はありません。ところが、死亡保障額が減っているのに対し医療保険の入院給付金日額は維持の方向に分かれます。加齢とともに健康に対する不安が増しており、年金生活中のいざというときの医療費の負担を軽くするためと考えられます。
平均額より自分の適正額を知ること
(1)保険の必要保障額は人それぞれ
死亡保障は遺族の生活を配慮する必要があるうちは大きく、必要がなくなれば小さくなっていきます。これに対し、医療保障は老後の生活にこそ必要といえるでしょう。
また、保険で必要な保障額などは、個別に判断されるべきものといえます。実際には、結婚したり子どもが生まれたりする年齢は人それぞれ異なります。
「貯蓄があるから保険は不要」という方がいれば、「保障を得るのと同時に貯蓄も兼ねたい」という方もいることでしょう。貯蓄性のある保険を選択する場合、保険料は一般的に高くなります。
(2)全体の傾向を知り保険加入や見直しのきっかけに
例えば、30歳代で子どもが生まれたばかりの方なら、同年代の傾向が分かることで「今までの保険で保障額は十分かな?」と考えてみるなど、これからの家庭での貯蓄や保険を見直すきっかけになるのではないでしょうか。
医療保険については、老後の年金生活でも支払いを続けられる保険料にすること、医療事情の変化に対応できているか見極めることが大切でしょう。
そのため、「みんなはどうなのか?」を意識しすぎたり、1人あたりの年間払込保険料の平均額の数字だけで捉えたりしないようにしましょう。そして、保険料と必要な保障のバランスを知り、慎重にご自身やご家庭にあった保険を選択するよう心掛けることをおすすめします。
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コラム執筆者プロフィール
宇野 さよ (ウノ サヨ) - 公認会計士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 大学資金ゼロの状態で大学進学を決め、複数の奨学金を利用するなど、自分で大学資金をやりくりしながら公認会計士試験に合格。出産を機にファイナンシャルプランナーの勉強を始め、ライフプランの重要性を認識。仕事と子育ての時間に追われる日々に疑問を感じ、独立。会計と税務に詳しいお金の専門家として、執筆や個別相談を中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 宇野 さよ
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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