生命保険を解約する前に注意しておきたいポイントとは?
生命保険の見直しを行うことで、現在加入している保険を解約し、新しい保険に加入するケースもあると思われます。何らかの契約を解約する時は生命保険に限らず、注意しておかなければならない点があります。生命保険でもいったん解約をしてしまうと後戻りできませんので、解約後に、前に加入していた保険の良さや、加入しようとしている保険のデメリットに気付いたのでは手遅れになってしまいます。そのようなことにならないためにも、今回は、生命保険を解約する前に確認しておきたい注意点についてお話しします。
解約前に確認を!?…新たに加入し直すのが有利とは限らない
死亡保険や医療保険などの生命保険は、時代の流れに合わせて商品(保障)内容も変化しています。
例えば、医療保険については、10年~20年前であれば1入院につき730日や1,000日といった長期入院に対応する医療保険が主流でした。しかし、平成20年頃から入院日数が短期化していることから、入院給付金の支払われる日数は、1入院につき最長60日や120日と短くなっていますが、退院後の通院も給付の対象となる医療保険が主流となっています。さらに、先進医療特約については、10年前と比べると医療の進歩とともに先進医療の対象となる範囲も広がっています。
ただし、これが電化製品であれば新商品に買い替えることで、メリットのみがあることがほとんどですが、生命保険の場合は新しい保険に加入し直すことにより、メリットとともにデメリットが生じることもあります。
例えば、新たに生命保険に加入し直す場合、加入し直す時点での年齢で保険料が計算されます。一般的に生命保険は年齢を重ねるほど保険料が高くなりますので、加入し直すことで保険料が高くなるケースもあります。
また、「予定利率」が高ければ高いほど、その分だけ保険料は安くなります。
予定利率とは、保険会社が、支払われた保険料を基に資産運用によって得ることができる収益を事前に見込んだ上で、その分を保険料から割り引きするときの割引率のことをいいます。
ちなみに、平成10年頃までに加入した生命保険については予定利率が高く、特に昭和60年4月2日から平成5年4月1日までに加入した保険の予定利率は5.5%となっています。現在の予定利率は1.0%となっていますので、その分だけ保険料が高くなってしまいます。
したがって、現在加入されている生命保険を解約される前に、新たに加入しようとしている保険の保障は、保険料が高くなっても必要な保障かどうかを見極めてから、現在加入している生命保険を解約するようにしましょう。
特に、貯蓄性のある終身保険などについては、解約返戻金にも影響がありますので、注意が必要です。
解約するタイミングには注意が必要!?
次に、現在加入している生命保険を解約し、新たに加入し直す場合は、次の2点に注意する必要があります。
- (1)次の新しい生命保険に加入できるとは限らない
- (2)加入できる場合でも、解約するタイミングによっては保障の空白期間が生じる可能性がある
現在加入している生命保険では、加入中に病気になった場合でも保険に加入し続けることができます。また、更新型の生命保険の場合でも、加入中に病歴が発生しても更新を行うことができますが、新たに生命保険に加入するとなると、過去の病歴の告知や医師の診査などが必要になります。
過去に病気になられたことがある場合は、新たに生命保険に加入することができない可能性があります。
現在加入している生命保険を先に解約してしまうと、万一、次の新しい保険に加入できない場合は、保障がない状況になってしまう可能性もあるのです。
そして、次の新しい保険の保障の開始日(責任開始日)ですが、単に申込書を提出した時点ではなく、「申し込み」「告知・診査」「第1回保険料の払い込み」のすべてが完了した時点になります。ただし、この時点では、保険会社の承諾が下りていない(保険が成立していない)場合があるので注意が必要です。
また、「申し込み」「告知・診査」「第一回保険料の払い込み」の3つが完了する前に、現在加入している生命保険を解約してしまうと、次の新しい保険の保障はまだ開始されていませんので、保障の空白期間が生じてしまいます。
したがって、現在加入している生命保険を解約するのは、次の新しい生命保険の申込書を提出した時期ではなく、責任開始日が確定(保険が成立)後のタイミングで解約するようにしてください。
特に、がん保険については、「申し込み」「告知・診査」「第一回保険料の払い込み」のすべてが完了後、さらに90日後に責任開始日が設定されているケースが多くなっていますので、がん保険を切り替えられる場合は、解約のタイミングはさらに遅くなることになります。
※がん保険の場合、保障の開始まで3カ月の待ち期間(保障されない期間)があります。
保険を切り替える時の、現在加入している保険の解約のタイミング
資料:執筆者作成
最後に、生命保険を解約するにあたっては、ここまでお話ししてきたように保障がない状態、または空白期間を作らないことが重要です。したがって、慌てることなく、次の新しい保険の保障が開始された日以降に解約するようにしましょう。
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コラム執筆者プロフィール
岡田 佳久 (オカダ ヨシヒサ) マイアドバイザー.jp®登録 - 大学卒業後、商社勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして開業。
現在は、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、キャリアカウンセラー(CDA)として高校生と大学生向けの金銭教育やキャリア教育、社会人を対象とした“お金”と“働く”に関する講演業務、雑誌などへの一般向けマネーコラムなどで活躍中。
ファイナンシャルプランナー 岡田 佳久
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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