四輪車と二輪車の軽自動車増税へ

今年(2014年)の税制改正では、自動車を買う人や持っている人が支払う税金が大幅に見直されました。その中で、特に注目された改正の1つに、「軽自動車税の値上げ」があります。
既に、4月から適用されていますが、“どういう内容なのか?”その背景や今後について、改めて考えていきましょう。
そもそも、「軽自動車税」とは?
そもそも「軽自動車税」とは、どんな税金なのでしょうか?
「軽自動車税」とは、地方税法(昭和25年7月31日法律第226号)第5条および第442条~第463条に基づいて、市町村の主要な財源となっています。
軽自動車等が保管されているエリアの市町村が、4月1日(賦課期日)時点の所有者または使用者に対して課す税金(地方税・普通税)で、原則としてその年の5月中に支払うことになります。
対象となる“軽自動車等”というのは……
- 軽自動車=一般的には総排気量660cc以下の自動車
- 原動機付自転車=一般的には総排気量125cc以下の小型自動二輪車、原動機付自転車
- 二輪の軽自動車=一般的には総排気量125cc超250cc以下のオートバイ
- 二輪の小型自動車=一般的には総排気量250cc超のオートバイ
- 小型特殊自動車=一般的には小型のトラクターや農耕車、フォークリフト
になります。
注意したいのは、普通乗用車に課される自動車税とは違い、月割計算がないということです。つまり、1年間一括課税なので、例えば、4月2日以降に軽自動車を購入した場合は、その年1年分の軽自動車税は課税されません。逆に、4月2日以降に廃車や名義変更をした場合は、4月1日時点では所有者ですから、当然、1年分の課税がなされることになります。
どれくらい値上げになるのか?
では、どれくらい値上げになったのでしょうか?
2015年4月1日以降に購入した新車の自家用軽自動車(四輪車)から、今まで7,200円だった軽自動車税は1.5倍の10,800円に値上げになります。また、増税した軽自動車税を納める時期は賦課期日の関係から、2016年以降になります。
ただし、中古車(既存車)は現状のままですが、新車登録されてから13年を経過した車は約20%の増税になります。
軽自動車(三輪車・四輪車)の軽自動車税
軽自動車 車種区分 |
課税標準 | ||
---|---|---|---|
平成27年3月31日 までの登録車 |
平成27年4月1日 からの登録車 |
登録後13年超 (経年車重課) |
|
三輪 | 3,100円 | 3,900円 | 4,600円 |
四輪乗用 営業用 | 5,500円 | 6,900円 | 8,200円 |
四輪乗用 自家用 | 7,200円 | 10,800円 | 12,900円 |
四輪貨物 営業用 | 3,000円 | 3,800円 | 4,500円 |
四輪貨物 自家用 | 4,000円 | 5,000円 | 6,000円 |
資料:平成26年度 税制改正の解説(財務省)をもとに執筆者作成
また、二輪車の軽自動車税の場合は、以下のようになっていて、四輪車よりも上昇割合が大きくなっています。
二輪車の軽自動車税
区分 | 課税標準 | ||
---|---|---|---|
現行 | 改正後 | ||
原動機付自転車 | 総排気量0.05ℓ以下 又は定格出力0.6kW以下のもの |
1,000円 | 2,000円 |
二輪のもので、総排気量0.05ℓ超0.09ℓ以下 又は定格出力0.6kW超0.8kW以下のもの |
1,200円 | 2,000円 | |
二輪のもので、総排気量0.09ℓ超 又は定格出力0.8kW超のもの |
1,600円 | 2,400円 | |
ミニカー(注) | 2,500円 | 3,700円 | |
二輪の軽自動車(総排気量0.125ℓ超0.25ℓ以下) | 2,400円 | 3,600円 | |
二輪の小型自動車(総排気量0.25ℓ超) | 4,000円 | 6,000円 |
(注)総排気量が0.02ℓ超0.05ℓ以下又は定格出力が0.25kW超0.6kW以下の原動機を有する車で、(イ)輪距が0.5m超で三輪以上の車 (ロ)輪距が0.5m以下で車室を有する四輪以上の車 (ハ)輪距が0.5m以下で側面が解放されていない車室を有する三輪の車 のいずれかに該当するもの。
資料:平成26年度 税制改正の解説(財務省)をもとに執筆者作成
なぜ、値上げとなるのか??
「今さら、そんな話をしてもしょうがないじゃないか」……そういう声が聞こえてきそうですが、今後、国の財政状態が劇的に改善しない限り、増税傾向が続くと予想されます。
そう考えられるのであれば、「なぜ、どういう理由で値上げされるのか?」を検証しておくことは大切です。
では、値上げされた理由ですが、これはいろいろなことが考えられます。その理由の1つとして「軽自動車税は自動車税と比べ、割安である」ということが挙げられます。
事実、改正前の軽自動車税(自家用乗用車)は年間7,200円ですが、普通乗用車などにかかる自動車税の税額は、総排気量に応じて、年間29,500円~111,000円(東京都の場合)と軽自動車に比べてかなり高い状態です。
世界基準で考えれば、日本の自動車関連税は高いといわれています。そうであれば値下げすることで調整すべきだった様な気もしますが、現在の国の財政状況を考えると、やむを得なかったのだろうと感じています。
今後は……
既に日本は人口減少社会に入り、1世帯当たりの平均人数も減少しています。
また、都市圏と違い、交通機関が脆弱な地方では、自動車は一家に一台ではなく一人一台が当たり前の状況になっていると聞きます。都市部も高齢者の割合が増えつつあり、小回りの効く車の方が乗りやすいということもいえるのでしょう。
そういう話を聞くにつけ、軽自動車のニーズが高まるのも必然だと感じます。
また、近年の性能向上で燃費に関しては軽自動車と普通乗用車との差は縮まりつつありますが、購入価格が安く、維持費も比較的安い軽自動車に普通乗用車から乗り換えるご家庭も増え、軽自動車の人気は根強いものがあります。
今後もエネルギー価格の上昇が予想されていますし、ここ数年は値上げ続きの自動車保険を意識しても、維持コストについて、軽自動車と普通乗用車との差が縮まることがあっても、無くなることはないのだろうと感じています。
また、国の財政状況を考えても、今後も税制の増税傾向は変わらないような気がします。
ファイナンシャルプランナー 佐藤 益弘
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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